本格的なデジタルハイビジョン時代が到来しつつある。来年にはハイビジョンのパッケージソフトの登場も予定されている。ハイビジョンの放送環境・録画環境の整備に加えて、コンテンツ環境も整備されつつあるのだ。時代はいま、ハイビジョンへと舵を切っている。
FUJITSU GENERAL
フルHDプロジェクター
LPF-D711WW
\2,415,000(税込)
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そうした中、大画面ファンから待たれていたのが、1920×1080という驚異的な画素数にフルに対応するプロジェクターである。現状主流となっているのは、1280×720画素のパネルを搭載したプロジェクターであり、ハイビジョンを見る上で多少の物足りなさは否めない。ハイビジョンの艶、色、輝き、階調を堪能するには、やはりフルハイビジョン画素を備えたプロジェクターがほしい。

こうした声を受けて、待望のフルハイビジョンプロジェクターが登場した。富士通ゼネラルの「LPF-D711WW」。1920×1080画素の透過型液晶パネルを搭載している。透過型液晶タイプのプロジェクターとしては、初のフルハイビジョンプロジェクターである。

ここでは、このプロジェクターのプロフィールをお伝えしていく。しかし、その前に富士通ゼネラルの映像技術について、若干触れていきたい。少々遠回りとなるが、同社の映像技術を知ることがより理解を深めることになるだろう。


富士通ゼネラルは、1993年に世界初の21型フルカラープラズマディスプレイを製品化したことで知られている。その後、1996年には世界初の42型プラズマディスプレイを発売した。こうした実績があるため、プラズマディスプレイのリーディングメーカーという評価が世界的になされている。

同社がこうした高評価を定着させた理由として、プラズマの放電制御から、スケーリングやガンマ補正等の映像信号処理までを1チップですべてつかさどるフルデジタルビデオプロセッサー「AVM」が優秀であることがあげられるだろう。他社に先駆けてデジタルビデオプロセッサーを1チップ化したことで、同社の映像技術は名声を得た。その後他社も1チップ化に進んでいくが、「AVM」の優位は揺るがない。


今回登場したフルハイビジョンプロジェクター「LPF-D711WW」には、「AVM」を進化させた「AVM-II」が搭載されている。「AVM-II」は、2004年に登場したばかり。「AVM」の性能をさらに向上させ、映像の新しい時代に対応している。

687億色という色再現力もさることながら、特筆したいのは「低輝度多段階化処理」という機能を搭載したことだ。この機能は、液晶やプラズマなどのデジタル表示デバイスの弱点であった、暗部階調表現が滑らかではないという点を克服するために、暗部ほど表現力を増やして滑らかな階調のつながりを作り出している。最暗部ではなんと一千京(10の19乗)もの多階調表現を実現しているのだ。

暗い部分の表現が秀逸ということは、即ち暗い部分を多用する映像表現=映画に最適である。極端にいってしまえば、映画の半分以上は暗いシーンである。SFしかりアクションしかり、ファンタジーも恋愛モノももちろんアート系も。暗いシーンをしっかり映せるか否かが映画に浸れるか否かの分かれ道だといっても過言ではない。このプロジェクターは映画画質を獲得している。

もちろんフルハイビジョンという艶やかな映像表現も特筆したい。圧倒的に緻密な画素数をフルスペックで映し出しているのだが、「AVM-U」との相乗効果で、ハイコントラストに寄らず、滑らかに黒を描き、純度の高い色を再現する。ハイビジョン映像の優れた部分を忠実に、そして丁寧に表現するのだ。


ハイビジョンと並ぶ「LPF-D711WW」の最大の特長であるデザインの詳細に関しては別頁の対談に譲る。ここでは多少の紹介に留めたい。

デザインは世界的なデザイナー内田繁氏の手による。これまでプロジェクターというと、機械というコンテクストの中でデザインされてきていた。しかし、実際の使用環境を見てみると、室内と融合した形で用いられる。つまり、インテリアの一部としてデザインされるべきものなのだ。そこで、内田氏は存在感を消し去ることを念頭に置き、デザインをしていった。内部機構にそって最小限のサイズにされ、存在感が消し去られている。このあたりは内田氏が70年代以降に拓いた「消える家具」の手法―例えばメトロポリタン美術館の永久コレクション「セプテンバー」などに見られる―を想い起こされる。また垂直水平の面で構成される室内空間にあわせて、二次元カーブのみが用いられている。プロジェクターのコンテクストで使われていた三次元カーブは、ここでは一切排除されているのだ。

特筆すべきは天吊り金具も同時にデザインされた点である。プロジェクターは天吊りにされるケースが多いが、天吊り金具も一体化してデザインすることにより、存在感を消している。

要するに、デザインが映像のクオリティに並んだ金字塔的なプロジェクターなのである。プロジェクターにおいてもデザインが語られるようになったのだ。

映像が新しい時代に入りつつあるいま、このプロジェクターはそのメルクマールといっても間違いない。新時代の映像表現を堪能したい方にお薦めしたいプロジェクターである。

プロジェクター本体とともに内田繁氏によりデザインされた専用の天吊り金具
AVセレクター。映像信号処理部を分離し、専用デジタルインターフェースケーブル(DVI)による先進のセパレートデザインを採用
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【LPF-D711WW・Specification】
●パネル:1.3インチ高温ポリシリコンTFT液晶パネル ●画素数:1920×1080×3枚 ●コントラスト比:3300対1 ●ファンノイズ:25dB ●入力端子:DVI(プロジェクター部)音声6系統、コンポジットビデオ4系統、Sビデオ4系統、コンポーネントビデオ5系統、HDMI1系統、DVI‐D1系統、ミニD-sub2系統、RS-232C1系統(セレクター部) ●消費電力:350W ●外形寸法:498W×160H×426Dmm(プロジェクター部)430W×95H×350Dmm(セレクター部) ●質量:12kg(プロジェクター部)5kg(セレクター部) ●問い合わせ先:(株)富士通ゼネラル TEL/044-861-9873