新製品批評
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文/井上千岳
振動板以外からの位相のずれた音波を一掃し正確な再生を実現

スピーカーの音は振動板から放射されるが、実はそれだけではない。キャビネットの共振やバッフルその他の部分による反射など、振動板以外の部分からも音が出ている。それらはおおむね振動板からの音波とは位相がずれているから、実際に耳に届くときには位相の微妙に異なるいくつかの音波が重なっていることになる。それが正確な定位を濁らせ音の存在感を曇らせる原因となる。タイムドメイン理論はこうした振動板以外からの位相のずれた音波を一掃することによって耳に届く音波を正確な単一の振動に絞り、明確な再現を得ようとする理論である。

 
ECLIPSE TDの上級機「512」の内部構造図。不要反射を排除するよう、特殊な構造となっていることがわかる
このためキャビネットは不要反射を起こさない卵型とし、ユニットの取り付けやキャビネット内部に入念な補強を施すことで共振を排除している。これによって位相の異なる複数の音波が重なることがなく、極めて精度の高い再生が可能となる。音像の明瞭さ、距離や定位の確実さなど、フォーカスの合った再現性が特徴である。