「Vraison(ヴレソン)」という言葉が耳慣れない響きなのは当然で、はフランス語の単語を組み合わせた造語とのことだ。「Vrai(本物の)+Son(音)」で「Vraison(本物の音)」。日立マクセルが音響機器分野に参入するにあたって、その製品シリーズ名に用意した名前だ。「本物の音」である。生半可な製品では名前負け必至という名を冠したところに自信のほどが伺える。

自信の土台となっているのは、Vraisonシリーズに搭載されるデジタル音声高音質化技術「Bit-Revolution」だ。高域補間・スムージング・聴覚感度補正により、MP3などで圧縮された音声をCD並の音質に、圧縮音声もしくは無圧縮のCDクオリティ音声をSACD並の音質にまで高められる性能を持つという。

これだけの説明では「圧縮音源の高音質化なんていまどき珍しくもない」と思われるかもしれない。しかしマクセルはあえてその機能で勝負してきたのだ。Bit-Revolutionが既存の同種機能とは明らかに一線を画す、との自信があるに違いない。

そのVraisonの第一弾製品として登場したのがヘッドホン/イヤホンシステム。以下の4種類が用意されており、予算や用途に応じて選択できる。なお、ハイエンドとスタンダードの細かな機能の違いについては、こちらを参照して欲しい。

グレード タイプ 型番 価格
ハイエンド オーバーヘッド HP-U48.OH ¥OPEN(予想実売価格30,000円前後)
インサイドイヤー HP-U48.IE ¥OPEN(予想実売価格30,000円前後)
スタンダード オーバーヘッド HP-U24.OH ¥OPEN(予想実売価格20,000円前後)
カナル

HP-U24.CN

¥OPEN(予想実売価格10,000円前後)

各モデルのヘッドホン/イヤホン部
ハイエンド
スタンダード
オーバーヘッド インサイドイヤー オーバーヘッド
(写真はブラック。ほかにシルバーとホワイトも用意)
カナル

実は、「システム」「パッケージ」という言い方をしたことにポイントがある。今回発売されたVraisonシリーズはヘッドホン/イヤホン単体で成立するアイテムではなく、PCを中心とした音楽再生環境を高音質化するためのシステムのパッケージ製品なのである。

各パッケージは、ヘッドホン/イヤホン・コントローラ・ドライバソフトウェアの3点から構成される。ヘッドホン/イヤホンは説明不要だろうが、他の2つはどのような役割を果たすのか?

ドライバは、これをPCにインストールすることで、PCで再生される音声のBit-Revolutionによる高音質化およびBit-Revolutionの各種設定が可能となる。システムの心臓部だ。

そしてPCのUSB端子の接続するコントローラは、ドライバで高音質されたデジタル音声データをD/A変換してヘッドホン/ライン出力する役割だ。「コントローラ」の名前からも想像がつくだろうが、音量や各種設定のオン/オフを手元で操作する機能も持つ。

スタンダードタイプのコントローラ。ボリューム調整とヘッドホン端子のみのシンプルな構成 ハイエンドタイプのコントローラー。LINE端子が追加されているほか、Bit-Revolutionやサラウンドモード、イコライザーなどの切り替えも可能

VRAISONの基本的な接続図。PCとコントローラーをUSBで接続し、PHONE端子から同梱のヘッドホンへつなぐ

PCベースのシステムとなった理由は、Bit-Revolutionの演算に必要な処理能力を低コストで得られ手頃な価格で提供できる、補間の必要性が高い圧縮音源は主にPCで管理されている、といったところだろうか。ただし、ハイエンドのHP-U48は、コントローラーのLINEOUT端子からアンプを通じスピーカーに出力することもできるので、Vraisonを単なるPC用ヘッドホンと考えるのは間違いだ。むしろ、PCそのものを高品位なオーディオ再生機器に変えてしまうものだと考えた方が良いだろう。

しかしDAPユーザーはイコール、音楽ファイルをPCで管理しているユーザーのはずだ。そういった意味では、Vraison第一弾製品のターゲットユーザーとして大きなウェイトを占めるのは、やはりDAPユーザーである。そこには、圧縮音源の音に慣れてたDAPユーザーに「本物の音」を知ってほしいとの願いが込められているはずだ。