製品レポートの前に、Vraisonの中心技術「Bit-Revolution」について確認しておこう。

Bit-Revolutionの中核となっているのは「高域補間」と「スムージング」だ。

「高域補間」は、MP3などの圧縮音声やCDでばっさりカットされてしまっている超高域(一般的なMP3なら16kHz以上、CDなら22kHz以上)を補間することで、より自然な音を実現しようというもの。だが前述のように、同じ発想を元にした音質向上技術はすでに多数存在している。Bit-Revolutionの高域補間は、先行するそれらと何が異なるのか。

高域補間のイメージ図。MP3の音声信号では16kHz以上は情報が無くなっているが、Bit-Revolutionによって補間する 実際に高域補間を行い、スペクトルアナライザーで表示したところ。補間された情報をリアルタイムで確認することができる

ひとつは補間できる帯域である。既存技術の大半は圧縮音源の音質をCDレベルにまで高める、つまり16kHzでカットされているものを22kHzまで高めるというところに止まっている。

対してBit-Revolutionは48kHzまでの補間に対応する。つまり圧縮音源/CD無圧縮音源の音質をSACDレベルにまで高めようというのだ(48kHzまでの補間に対応するのはハイエンドパッケージのみ)。

SACDやDVDオーディオからPCへの音楽取り込みは不可能なため、一部の高音質音楽配信などの例外を除いては、PCで扱う音楽ファイル自体の音質はCDレベルが上限だった。Bit-Revolutionは再生時の処理でその壁を破るというのである。

もうひとつは補間のアルゴリズム。Bit-Revolutionの補間アルゴリズムに関しては、「楽器の高調波発生メカニズムを応用し、基本波を復調して高域を作り出す」「原音の周波数解析から傾向補正することにより、より自然な高域再生とする」といったことが明かされている。

大雑把には、音源の倍音の周波数とその分布を解析し、カットされている16kHz/20kHz以上の音域にあるべき倍音の周波数とその分布を推測して補間する、といった理解でよいのだろう。音源に残された成分の詳細な解析を土台とすることで、ありもしない不自然な超高域を加えてしまうことを回避。自然な補間を実現しているわけだ。

一方「スムージング」は、サンプリングレートと量子化ビット数の拡張だ。CDのサンプリング周波数と量子化ビット数はそれぞれ44.1kHz/16bit。CDから取り込んだMP3も同様。Bit-Revolutionはそれを96kHz/24bitまで拡張して再生する。

「スムージング」」では、サンプリングレートと量子化ビット数を拡張することで、もとのアナログ音声に近いスムーズな波形を再現できる

その効果としては、サンプリングレート拡張によってより高域の情報までを含むことができるようになり補間した超高域が活かされ、ビット拡張でダイナミックレンジが向上して微細な音の解像感が向上するといったことになる。

以上が基礎的な部分での音質向上だが、Bit-Revoltionはもうひとつユニークで提案的な音質向上機能も持つ。「聴覚感度補正」だ。

人間の聴覚は年齢を重ねるごとに特に高域に対する聴覚が衰えてくる。元々の聴力にも衰え方にも個人差があるので、人間の聴覚特性は一人一人異なり、同じ再生音を聴いても聴こえ方は人それぞれとなってしまうわけだ。

そこでBit-Revoltionには、テストトーンを利用した聴覚測定・補正機能が用意されている。測定して高域の聴覚が衰えてきているようなら再生時に高域を強める補正を行うといった具合だ。

聴覚感度補正のイメージ図。聞こえにくい部分の帯域を持ち上げることで、誰でも本来の音を楽しめるよう工夫している VRAISONのドライバーで聴覚感度を測定しているところ。音を聴いて、聞こえたか聞こえなかったかを答えるだけでよい

いわゆるユニバーサルデザインのひとつなのだろうか。Bit-Revolutionは「人に優しい技術」を標榜しているが、とにかくいままでにないアプローチであるので注目しておきたい。