今回はPureAVシリーズが2006年夏に初めての日本上陸を果たした際に、各モデルを詳しくレポートした評論家の林正儀氏に登場していただいた。PureAVの性能を高く評価する林氏は、自宅試聴室のリファレンスケーブルの一つとして活用するユーザーでもある。 |
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林氏が今から約20年前に完成させた自宅試聴室を訪ねると、2階建ての建家の1階部分にほぼ15畳の広さのオーディオ兼ホームシアタールームがある。林氏が自ら設計を行ったという試聴室は、ブロックの建物の中にもうひとつ部屋を作った2重構造を採っており、室内に最適な音響特性を得るため、天井を波型にし、向き合う壁はすべて不平行に作ってあるという。ピュアオーディオ系からマルチチャンネルサラウンド、次世代ハイビジョンディスクプレーヤー、3管式プロジェクターまで様々なリファレンス機器が揃う。
PureAVシリーズは、プレーヤーとAVアンプ、さらにリンを中心としたリファレンス・スピーカーをつなぐケーブルとして用いられている。他にもHDMI端子を搭載するプロジェクター、テレビ等を評価する際に、PureAVのHDMIケーブルが活躍する機会も多いのだという。
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「マルチチャンネル再生では、とことんサブウーファーにこだわるべきである」というのが林氏の持論である。サブウーファーが再生する低域の質によって、ホームシアターサウンドの“空気感”がすべて決まるからであるという。そのため、上質なホームシアター環境を目指すのであれば、できる限りサブウーファーそのものと、アンプとつなぐケーブルにはこだわるべきであると林氏は語る。林の場合は、これまではサブウーファー用のケーブルには、通常のオーディオピンケーブルで長めのものを使っていたそうだが、PureAVが「サブウーファー用オーディオケーブル」として発売している「PAV-50500」シリーズに出会ってからは、こちらをレファレンスとして活用しているそうだ。
PureAVのサブウーファー用オーディオケーブルは、PCOCC素材による単線のソリッドコア導体を採用している点が最大の特長だ。通常のオーディオピンケーブルでは導体に撚線を用いることが多く、PureAVのように単線を用い、かつ“サブウーファー専用”を掲げる製品は他にあまり例がないという林氏。ソリッドコア導体がもたらす最大の効果は、力強く芯の太い低域のサウンドが得られることだ。低域が力強くなることで、マルチチャンネルサウンドの全体に豊かな表現力が加わると林氏は語る。導体素材に用いられるPCOCCには、エネルギー感や色彩感、表現力の豊かさといった独特の魅力に加え、PureAVならではのチューニングにより、固さをおさえた滑らかなサウンドが獲得されていると林氏は評価する。 林氏は以前、PureAVのサブウーファー用オーディオケーブルのレポートを行った際には、パイオニアのAVアンプをリファレンスとし、同社独自の低域補正技術である「フェーズコントロール機能」の効果と合わせて、優れた低域再生能力を確認した。PureAVのケーブルとアンプとの最適な組み合わせ方について林氏にうかがってみたところ、「フェーズコントロール機能のように低音を豊かに再生ための独自機能が搭載されているものとの組み合わせれられればベストだが、ケーブル自体の再生能力が高いので、あらゆるAVアンプとの組み合わせにも理想的な低域再生環境がつくれるだろう。ベーシックなシステムや、付属のもの以外のサブウーファーケーブルが接続できる一体型ホームシアターシステムで使えば、低域再生能力のアップにも効果を発揮するだろう」とコメントする。自宅ホームシアターの低域強化を狙うユーザーは、ぜひ挑戦してみたいアイテムだ。 |
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サブウーファーケーブルの他には、プレーヤーとAVアンプをつなぐ同軸デジタルケーブル、さらには5.1chぶんのスピーカーケーブルも頻繁にリファレンスとして使う機会があるという林氏だ。PureAVケーブルシリーズの魅力としては「クオリティが高いのに、コストパフォーマンスも高いところ。あと、これは個々のユーザーの立場としてはなかなか気が付かないことだが、私は様々な場面でPureAVの異なる製品を聴く度に、ブランドの生産能力の高さも気づかされる。エンジニアが狙った音のレベルが、何本量産しても製品に反映されている点は見事だ。優れた製品とは、本来とがった技術と製造の安定性とのバランスを重視するブランドからつくられるものである」と林氏は語る。 PureAVのケーブルを手がけるベルキン社は、創立当初からPC関連のデジタル周辺機器に強いブランドと聞いてたので、当然ながらデジタル系の音づくりが上手である一方、これまで何度か聴く機会のあったアナログケーブルの音もハイクオリティなことも特筆できる。PureAVの音は素直で余計な味付けのない、ナチュラルな特性が魅力なのだと思う。耳の良いエンジニアが、まじめに突き詰めていった音が、余すところなく製品に活かされているといった印象だ。今度はぜひ、PureAVの電源ケーブルの登場にも期待したいと語る林氏だ。 |
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PureAVのHDMIケーブルについては「安定性の高い15mまでの長尺ケーブルを揃え、我が家のホームシアターの様々な位置にプロジェクターを配置してテストを行う際にとても役立っている。プラグ部分の安定感が高い点も重宝している」という林氏だ。
現在は高品位な映像用ケーブルとして普及が進んでいるHDMIだが、実は一本でオーディオ信号やコントロール信号も伝送することができる。今後、次世代のサラウンドフォーマットとして注目される「ドルビーTrueHD」「DTS-HD」などの、ビットストリーム信号の伝送に対応するHDMI Ver1.3対応機器が増えれば、「HDMIケーブルの音質」にも議論が及ぶはずだと林氏は考える。自宅試聴室では、プロジェクターの他にもプラズマテレビを常設する林氏だが、プラズマテレビでの画質評価を行う際には、アンプを介さずにプレーヤーとHDMIでつなぐことで簡易な音声再生も行える点が便利であると語る。 なお、PureAVの国内販売を行うパイオニアマーケティング(株)からは、今後映像色差ケーブルも国内へ導入する予定があるという情報も寄せられている。今でも色差ケーブルの映像を好むユーザーや、ホームシアター機器の端子環境により必要としているユーザーも多いだろう。ぜひ新しいラインナップの拡大にも期待したいところだ。 PureAVのHDMIケーブルの楽しみ方を広げるアクセサリーとして、ぜひ押さえておきたいアイテムがHDMIケーブル用アダプターのRazorVisionだ。林氏が日頃、どのようにRazorVisionを使いこなしているかについては、林氏自身のコメントにより紹介していただくことにしよう。 |
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画質調整機能ならプレーヤーやテレビ側にもある。「RazorVision」がそうした処理と違うのは、最大30mまで無劣化伝送を実現した、HDMI延長機としての優秀な機能とともに、HDMI−HDMIの接合部分にて独自の画質アップがはかれることだ。
内蔵のビデオエンハンスメントチップは、時々刻々の情報を検出して、映像自体をクリーンにするものだ。私はこれを720p対応のプラズマテレビやDLPプロジェクターで使うことが多い。少々ナマったソースであっても、STATUSを「ON」にするとディテールが復活し、見事にコントラスト感が増すのだ。色にハリが出ると同時に陰影描写がより自然になり、立体感が高まる。ハイビジョンコンテンツを視聴する際に情報量不足を感じたら、早速RazorVisionのお世話になる私である。 左右のスプリット機能で効果の違いは歴然。ロー/ミッド/ハイの3段階に加減ができるのも重宝する。部屋を真っ暗にできない状態でのプロジェクター視聴にも優れた効果を発揮してくれることだろう。 |
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