やがては訪れるであろう、4Kあるいは8Kの超高画質映像の時代を見据えて、いまここに東芝<レグザ>が超解像技術を搭載するテレビを実現したことの意義は計り知れないほど大きい。今回は貝山氏、松山氏が見た<レグザ>の超解像技術がコンテンツ界にもたらすインパクトと未来像について語り合った。
 


− ハイビジョンパッケージのリリース数は現状十分とは言えません。読者の方でも、DVDを視聴する機会はまだまだ多いはずです。一方、放送の中でも解像度の違う地上デジタルとBSデジタルの両方が存在します。雑多なソースを一台で全て映し出す必要性がテレビに求められています。

貝山 一台のディスプレイでソースの全てを、映像そのものが持つ自然さを壊さないようにバランス良く映し出せることが理想ですね。

− 東芝は、「超解像技術」を用いてその課題に取り組みました。

貝山 未だハイビジョンパッケージ化されていないDVD『つぐない』を、REGZAで今度じっくりと観てみたいと思います。この作品は、光を積極的に取り入れた白方向の表現が非常に多い作品です。素材のクオリティ高いのでDVDでも満足できますが、これをハイビジョンクオリティで楽しむことができれば非常に嬉しいですね。

松山 超解像技術の効用に関しては、効果が大きいソフトとそれほどではないソフトの両方があるようです。作品のタイプを見極めて使い分けるのが良いと思います。

− 地デジクオリティ映像をフルHDに作り替えた場合の効果はいかがですか?

松山 その場合は、概ね全てのソースで無理なく自然に作り込めていると感じました。地デジで録画したソースに関しては、私はREGZAの超解像技術を積極的に活用したいと思います。垂直解像度は1080のまま、水平解像度を1440から1920まで作りかえるという東芝の技術は、非常に的を得ていると思います。

貝山 そうですね。

松山 垂直方向を作り込む場合でも、ハイビジョンマスターを使用したSDソースであれば、超解像処理の効果はてきめんに現れます。

− 特に効果が大きいコンテンツはどのようなものでしょうか?

松山 例えば、ハリウッドで制作されている直近の映画のほとんどは多大な効果が見込まれます。秀でた解像感で映像の魅力を表現しようとしている作品と、今回のREGZAのマッチングは非常に良好です。そのようなソースであれば、アップコンバートする際のノイズ増幅も心配ありません。

− 階調を重視した、コントラストのメリハリが薄い作品についてはいかがですか?

松山 マスターにもよりますが、ヨーロッパの作家の場合はノイズも必要な情報として考える人が多いですから、ハリウッド映画ほどには効果が現れづらいかもしれません。

貝山 逆に、そういったソースの再生をREGZAがどのように今後克服するかが楽しみですね。

松山 ええ。期待したいですね。ノイズのあるソースや、解像感の落ちが見受けられる作品を、東芝の技術によってどのように救えるかを確かめたいと思います。フィルムラチチュードを幅広く使った南米の映像をどのように映し出せるかが楽しみですね。


最新の<レグザ>が実現した超解像処理の説明図。はじめに「入力画像」からアップスケーリングにより最大1920×1080画素の「仮の高解像度画像」を設定。次段で仮の高解像度画像に滑らかな点広がり関数(撮像モデル関数)をかけて、いったん「低解像度画像」にダウンコンバート処理を行った後、これと「入力画像」との差分を検出し、間の誤差を最小にするように高解像度画像を「復元」することで理想状態の高解像度画像を導き出すというものだ。これにより、従来のアップスケーリング処理では実現できなかった高精細な映像を表示する(図はクリックで拡大)
 


− 4Kあるいは8Kのスペックを持った製品が、現形態のまま世に出るかどうかは分かりませんが、次世代を見据えた技術的要素を現行の製品に落とし込んでいく必要性は確かにあるはずですね。今回の東芝の超解像技術は、映像世界の「ネクスト」を睨んだ試みと捉えたいところですね。

松山 そう思います。それから、超解像に対する取り組みに関してはNHKも大変積極的だと聞いています。それにはやはり膨大なSDアーカイブスを上手に使いたいという狙いがあると思います。従来のコンテンツをそのまま今のフルHDテレビに映すと、画質の落ちが歴然と分かってしまいます。東芝の取り組みはコンテンツ側の事情を汲んだハードメーカーとしての挑戦だと捉えても良いかもしれません。これらは、視聴者にとっても大事ですが、映像制作者にとっても非常に大事な技術だと思います。


最新の映像処理エンジン「メタブレイン・プレミアム」には、新開発の超解像処理LSIを搭載。入力された映像信号はフォーマットを判別し、フィルム検出/ノイズ検出/ヒストグラム検出/周波数ヒストグラム検出処理を通過後に、エッジ部/テクスチャ部/平坦部の3種類に分類され、主に細密な映像のテクスチャー部について超解像処理が行われる(写真はクリックで拡大)

貝山 4Kディスプレイ、8Kディスプレイが実際にコンシューマー機器として出現したときには、今あるハイビジョンディスクをいかに美しく見せるかという課題も新たに出てくることになるでしょうね。

− 未来につながる道筋を作っている東芝の功績に対して、メタブレイン等の高画質回路を始めとする技術面への評価と将来へのエールをお二人から頂きたいですね。

松山 メタブレインの技術で一番大事なことは、現状の1枚の映像をどのように最適に画像認識するかということに尽きます。この回路は、映像を的確に認識して最適な画を出すという大変高度な技術ですが、それだけではなく、回路をコントロールする人間のノウハウ数に依拠する技術だと思います。

貝山 その通りですね。

松山 結局は、数多く映像を視聴してサンプル数を集める以外に画質向上の方策はないわけですから。

− 要するに、回路が全てを自動的に判断するわけではない、ということですね。

松山 最終的には回路を作る人間の眼です。画像認識の回路に、技術者が溜め込んだノウハウを注ぎ込むことが大事なのです。また、「これで大丈夫。もう終わり」ということも決してありません。解像度の進化もそうですが、それだけでなく色々な種類の意図的な映像のデータを取り込んでいく必要があります。REGZAの映像回路は、常に発展途上であり続けるべきと言っても良いはずです。

− 発展途上ではあるかもしれませんが、今回の新製品、ZH7000シリーズの完成度に関してはどのようにご評価されますか?

松山 明るさや色温度をセンシングして、いわゆるおまかせ映像を映し出すという手法が、実際の映像に大変良い効果を挙げていると思います。ZH7000シリーズは、現状東芝が手に入れることが出来る液晶パネルに対して、非常にバランスの良いコントラストを作り上げた製品だと思います。高い輝度を維持したままコントラストを出そうとしている点を、私は評価しています。

貝山 今回の製品では、自然さを決して失うことなく、画が良くまとまっていると思います。つまり、観ていて非常に違和感が少ない画なのです。


ZH7000、FH7000の両シリーズは本体に交換可能な300GBのハードディスクを内蔵し、テレビ単体での録画が楽しめる(写真はクリックで拡大)

“録画テレビ”のジャンルを切り拓いてきた東芝<レグザ>ならではの充実した録画機能は最新モデルにも継承されている。簡単連ドラ予約など、デジタルレコーダー顔負けの豊富な録画機能が揃う(写真はクリックで拡大)

ZH7000、Z7000は東芝のデジタルレコーダー<ヴァルディア>最新モデルとの連携機能も充実。テレビで内蔵・外付HDDに録画したデジタルコンテンツをDTCP-IPで保護して<ヴァルディア>のHDDにダビングできる「レグザリンク・ダビング」の機能を実現している(図はクリックで拡大)


ZH7000シリーズの側面・背面に設けられた接続端子部。HDMI入力はx.v.ColorやDeepColor、1080/24pの映像信号入力に対応するVer.1.3a対応の端子を4系統備える(写真はクリックで拡大)

「ドルビーボリューム」「AUDYSSEY EQ」など、高品位なサウンドを実現するための機能はZH7000、Z7000、FH7000の全モデルがカバーする(写真はクリックで拡大)

FH7000はデザインにも徹底的にこだわり抜いたモデル。ヴァンガード・アンカーと呼ばれるデザインを採りいれたスタンドのデザインも本シリーズの魅力を引き立たせている(写真はクリックで拡大)