早くからこの問題に取り組んできたのがヤマハだ。昨年発売されたAVアンプ「RX-V567」では、スタンバイスルーON時の待機電力を一気に2.7W以下まで低減した。そして2011年の新製品「RX-V571」では、そこからさらに50%以上の省エネ化をはかり、なんと1.2W以下というきわめて低い待機電力を実現している。
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ヤマハ AVアンプ「RX-V571」。 |
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AVアンプにおける待機時(スタンバイスルーON)の消費電力推移。ヤマハは昨年発売の67シリーズで2.7W以下まで消費電力をカットしたが、今年発売の71シリーズでは、さらに1.2W以下を実現している |
待機電力の大幅な低減のため、RX-V571ではメイン回路とスタンバイ時の回路の電源部を分離し、それぞれに専用の電源トランスを配置する回路構成としている。高級機では、音質向上のため電源トランスや回路を分離する手法はしばしば見られるが、コストアップにつながるため、エントリークラスでの採用はたいへん画期的である。また、メイン回路用には音質面で有利なアナログ電源を、待機時用回路には省電力のデジタル電源を採用することで、省エネと同時に高音質化も実現している。
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従来AVアンプでは、メイン回路とスタンバイ用の電源は同一なので、スタンバイスルーON時は使っていないメイン回路にも通電している。しかしRX-V571は電源トランスまで含めて分離しているので、不使用時はメイン回路に通電せず、スタンバイ用の回路だけに通電する。 |
待機電力の低減効果がどのくらいなのか、HDMIリンク機能が登場した5年前と、最新機種「RX-V571」で、仮に1年間ずっと待機状態(スタンバイスルーON)だった場合の比較をシミュレーションしてみよう。
1年間の通電時間が8,760時間で、電気代を1kWh=22円として計算すると、5年前の待機電力が20Wのとき、1年間の消費電力量は約175kWh/年、電気代が3,854円となる。一方「RX-V571」は約10.5kWh/年、231円となる。その差は約165kWh/年となり、40〜50型の薄型テレビの年間消費電力量に匹敵し、10年間では36,000円以上の電気代の節約になるという大きな効果を得られることがわかる(なお、実際には電源ONにして使用する時間も含まれるうえ、現実の使用状態とは異なるため、あくまで参考値と考えてほしい)。
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仮に1年間ずっと待機状態(スタンバイスルーON)だった場合の消費電力と電気代のシミュレーション。その差は約165kWh/年にもなる。
(1年間の通電時間=8,760時間(24h×365日)、電気代=22円/kWhとして計算。) |
加えて本機は、AVアンプの電源OFF時(スタンバイスルーON)にHDMI入力を切り替えられる「スタンバイインプットセレクト」機能を搭載し、消費電力を低下しながら使い勝手の良さを確保している点も魅力である。
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RX-V571が対応する「スタンバイインプットセレクト」機能のイメージ。AVアンプの電源OFF時(スタンバイスルーON)も、HDMI接続している各機器の入力を切り替えられる。 |
さらに、長時間HDMI入力がないと自動的に電源をOFFにする「オートパワーダウン」機能も装備しており、“ついうっかり"の電源消し忘れを防いでくれるのが心強い。電源OFFまでの時間は4/8/12時間の3種類から選択が可能だ。また、30分単位で設定できる「スリープタイマー」機能も省エネスタイルに活用できる便利な機能だ。
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オートパワーダウン設定画面。電源OFFまでの時間は、4/8/12時間の3種類から選べる。 |
使うときには思い切り楽しみたいが、無駄な電力は消費したくない。かといって、省エネしたために便利機能を犠牲にして、使い勝手を悪くするのでは意味がない。ホームシアターにおいて使い勝手と省エネの両立は、エントリークラスにこそ求められるコンセプトであり、ヤマハのAVアンプ「RX-V571」はまさに今一番求められる製品といえるだろう。
また、本機の端子数を一部変更することによって価格を抑えたモデルが、同時発売の「RX-V471」だ。本機で6系統を備えるHDMI入力は4系統に省略されているが、機能・省エネ性能などテクノロジー面では本機と同一の仕様を備えており、こちらも見逃せない。
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同時発売の「RX-V471」。機能・省エネ性能などテクノロジー面は「RX-V571」と同一。 |
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