ドルビープロロジックの登場に先駆けること1年前の1986年、ヤマハは世界初のデジタル信号処理による音場創成技術を搭載したデジタルサウンドフィールドプロセッサー「DSP-1」を発売した。今年は、このシネマDSPの原点といえるDSP-1の登場から25周年目の年となる。
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ヤマハ「DSP-1」(1986年発売)。デジタル信号処理による世界初の音場創成技術を搭載したデジタルサウンドフィールドプロセッサー。 |
今でこそ各社がAVアンプに搭載しているDSP映像音響モードだが、それは1990年にヤマハが発売した世界初の一体型7ch・AVアンプ「AVX-2000DSP」から始まった。
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ヤマハ「AVX-2000DSP」(1990年発売)。世界初の一体型7ch・AVアンプ。 |
それ以前は「スポーツ」「ムービー」といった単純なソース別のマトリクスサラウンドだけだった。そのような中、ヤマハは先述のDSP-1などに代表される音楽DSPの経験とノウハウを映像音響に応用し、「アドベンチャー」「ジェネラル」といったモードに象徴される“映画サウンド”の核心に踏み込んだ音作りに挑戦。AVX-2000DSPは、1990年の第4回ビデオグランプリ(音元出版が主催する、現在の「ビジュアルグランプリ」の前身)の最高金賞に輝いた。
それ以前の同アワードにおける金賞は、全てビデオカメラとビデオデッキという映像機器ばかりだった。そう、ヤマハのシネマDSP(当時の名称は「シネDSP」)の出現によって、家庭用AVの映像と音響は一つになったのである。日本のホームシアターはこの時始まった。
以後、オーディオの形式がアナログからデジタルへ(1995年)、ロッシーからロスレスのHDオーディオへ(2005年)と変わっていっても、DSPの分野でヤマハのシネマDSPは常に他の追随を許さない。
また2006年には、生の響きにより近くなるよう音場データのサンプリングにおけるポリシーが総合的に見直された。それまで初期反射音の「時間軸」を基準としていたサンプリングを「音量レベル軸」へ変更し、音場プログラムの体系もシンプルに刷新。Blu-ray DiscのHD音声やデジタルテレビ放送のマルチチャンネル番組といった、新しいAVソースを意識してシネマDSPは進化した。
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シネマDSP「Hall in Vienna」モードの反射音図。改良前(左)と改良後(右)。 |
なお、この改良版は当時「シネマDSP-plus」の名称で従来のタイプと区別されていたが、以後の製品に搭載されるシネマDSPは全て同相当にグレードアップされたため、現在では「-plus」を外した「シネマDSP」の名称になりスタンダードとなった。その後も、シネマDSPは新製品が登場するたびに細部のブラッシュアップを重ね、進化を続けている。
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進化を続けるシネマDSPの立体音場。「高さ」「奥行」の再現力が最大の魅力である<3Dモード>。側方から後方にかけての音の移動感や距離感をよりリアルに感じられるシネマDSP3。創出する音場形状はDSP3と同様ながら、音のデータ密度と反射音数がより高いHD3。 |
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