試聴に用いたリファレンス音源はTD508IIと同様なので、音源の特徴についてはそちらを参照してもらうとして、さっそく音の印象を述べさせてもらおう。
まず、基本的な傾向はTD508IIと同質だ。タイムドメイン理論という明確な設計思想が始めにあり、それに基づく共通の設計を持つのだから当然である。音像・音場の明瞭さ、優れた定位が生み出す空間性が特筆点だ(このあたりは試聴盤の確認と合わせてTD508IIのレポートを参照してほしい)。だが、その共通のラインの上で、エントリー機とミドルレンジ機に差があるのも当然。
TD508IIとTD510の場合は、ユニット径の違い、それに伴う全体のサイズの違いが素直に現れていると想像してもらえればまず間違いないだろう。つまり、特に中低域の再現性や描写力、それに伴う音場全体のスケールアップだ。
部分部分を聴くと、例えばウッドベースは、輪郭の明瞭さに加えて実態感や重みといったものが備わり、バラードには深みが出るし、テンポのよい曲ではドライブ感が増す。弦楽器の音色は、単独で聴いても重なったハーモニーを聴いても、ふくよかさが出たという印象だ。
全体の音場の感触もやや異なる。低音が豊かになることで厚みや骨太さが生まれている。さらに、中低域の力感が増して「押し」が強くなったことで「引き」の部分とのコントラストが強まり、奥行きはさらに深くなっている。
TD508IIを「高解像度の航空写真を見るような楽しさ」と喩えたが、その喩えで言えば、その航空写真のプリントをそのまま引き伸ばしたのがTD510といったところである。大きくなっただけ迫力は増し、拡大されたので細部もよく見えるというわけだ。