どうしてMP3の音に不満を抱く人が多いのだろう?
「MP3の音ってこんなもの?」
いつもCDやMDを聴いている音楽ファンがパソコンでMP3の音を聴いたとき、最初に感じる疑問がこれだ。ボーカルがいまいち伸びないし、ドラムスやベースが刻むリズムもやや甘く感じる。聴く気にならないというほどではないが、もう少しいい音で鳴って欲しい。パソコンに原因があるのかと疑ってみるが、CDの音にはそれほど不満を感じないから、やはりMP3に原因がありそうだ。
MP3の音がいまひとつと感じるのは、圧縮の仕組みと関係がある。音楽信号は低い音から高い音まで幅広く分布しているが、MP3など圧縮オーディオの多くは、人間の耳の感度が低い超低域や超高域の音をバッサリと切ってしまうのだ。特に超高域をカットすると、ボーカルやアコースティック楽器の音は確実に影響を受ける。
高域成分をカットすれば、圧縮後の音楽ファイルを小さくできる。これが高域をカットする大きな理由だが、圧縮時の計算量が少なくて済むという理由もある。CDからMP3に変換(エンコード)するときのスピードが速ければたしかに便利だが、高速なソフトほど、実は複雑な計算を省略している可能性が高い。その結果、音質が劣化するというわけだ。
MP3エンコーダーによる差はあるが、ほぼ16kHz前後より高い音が、圧縮によって失われてしまう。人間の耳が聞き取れる限界は少なくとも20kHz程度とされている。CDやMDはこの上限までカバーしているが、地上波のテレビ放送やFM放送、そして圧縮オーディオの多くは、そこまで高域が伸びていない。MP3の音を良くするためには、この失われた高域をなんとかしなければならないのだ。
|