「窓辺にスクリーンを設置」… 大開口の窓が多いリビングで散見するスタイルだ。しかし、窓ガラスは低音から高音まで均一に音を反射するため、定在波を引き起こす原因になりかねない。そんな窓辺をケアし、音環境をよくする画期的なブラインドがこのたび発売された。ここでは、実際の試聴を通じ、その効果を試してみたい。
■響きに埋もれていた音が揃って聴こえてくる!
上2枚のようにフェルトにカーテン生地をカバーさせることも可能。長さもオーダーメイドで調節できる

最初からホームシアター目的で設計した部屋は別として、リビング兼用か既存の部屋をリフォームした場合、映像以上に音質上の問題が起きることが多い。また、日本の住居の場合、リビングを南側に作り採光のためガラスサッシを使用することも多い。

ホームシアターでもオーディオ再生でも、大面積のガラスサッシは音を反射し位相を乱し、定位の劣化を生み出す要因になる。特にフロントセクション(L、R、センター)の背後にガラスサッシを背負っている場合は、そこへの反射で前方音場に奥行き感が失われたり、定位感が劣化したりする場合が多い。

さらに対向面(リアセクション)にガラスサッシがあった場合、フロントセクションからの音を反射して特定の帯域、多くは低域のピーク&ディップを生み出し、落ち込みや膨満を生みバランスが失われることにつながる。

しかし、生活空間である以上、ガラスサッシを取り去って壁にしてしまうこともできない。こうした日本のリビングシアターの抱える問題を大きく改善するアイテムが現れた。東京ブラインド工業の「フェルトーン」である。高密度のフェルト成型の吸音スラット(羽根)を使用した開閉自在のブラインドで、室内反響音を吸音し、1kHzで入射音の80%を吸収すると同時に外部からの侵入音を6dB低減するという。

早速フェルトーンを取り付け、音質と音場の変化を確認してみよう。まず、スピーカーの背後にフェルトーンを展開して、ブルーレイの音楽ソフト『幻想交響曲』を再生すると、音の立ち上がりのスピードが歴然と違うことに気付く。反響に埋もれて聴き取れなかった音が現れ、各楽器セクションの音量が揃ってくる。音の反射がいかに悪さをしていたか如実にわかる。

対向面にフェルトーンを展開すると、低音のピーク&ディップが減り、全体のバランスが整いオーケストラの全体像が現れる。左右の壁にフェルトーンを展開すると反射が吸収されるので、逆相波の影響が抑えられ、音場定位が改善され映像と音が一致し、大画面にふさわしい広がりのある見通しのいい音場に変わる。

改善効果の大きさ、開閉自在の実用性を考えると、フェルトーンはリビングシアターを変える大きな可能性を持っている。

 
■大橋伸太郎氏の試聴セッティング

【まずはフロント部のみで試す】

実験場所は密閉空間で、反響が過剰すぎる難所。まずは効果が期待できるスピーカー周りから試した。なお、フェルトーンはバーチカルブラインドなので、未使用時は端に寄せて試聴した。

 
試聴者の対面のみに製品を使用。側面と背面の製品はスラットを端に寄せている。状況に応じた使い分けが可能なのもバーチカル式ならではの利点だろう
培ってきた技術によりノーマルな布カーテンなどよりも重量があるフェルト成型の吸音スラットの荷重にも耐えられるバーチカルブラインドを実現

【前後左右囲むように設置】

前後設置した以外に、スピーカーの一次反射音を減衰させるため左右にスラット10枚程度を設置し試聴した。また、スラットと壁面の間は、吸音効果が期待できる6cm程度空気層を設けた。

 
前後に加えて側面の一次反射音の減衰が期待できる部分に製品を設置
スラットと壁面の間には6cmほどの空気層を設けた
 
【購入に関する問い合わせ先】
東京ブラインド工業(株)
TEL/0120-47-8145
http://www.tokyo-blinds.co.jp/
 
大橋伸太郎 Shintaro Ohashi

1956年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数。テレビ朝日系列『トゥナイトII』などテレビ出演も多い。2006年に評論家に転身。西洋美術、クラシックからロック、ジャズにいたる音楽、近・現代文学、高校時代からの趣味であるオーディオといった多分野にわたる知識を生かした評論に、大きな期待が集まっている。