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山之内正×石原俊 特別対談 − 2010年のピュアオーディオ展望<前編>

公開日 2009/12/28 11:11 山之内 正/石原 俊
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iPodや携帯オーディオと旧来からのオーディオファンが息づくミドル〜ハイエンド市場の間に大きな乖離のあるオーディオ市場。コンテンツ配信という新たな動きをピュアオーディオに融合させるPCという存在、根強いファンが存在するアナログという存在が渾然となり、大きな転機を迎えているオーディオの2010年の行方は…。

“ハイファイ×デジタル音源”拡がりを見せるオーディオの未来


石原 昨今のオーディオで、僕は非常にポジティブな展望をもっています。ここ10年でアンプとスピーカーが大変高性能になり、一昔前に1000万円級だった音が、今や100万円以内で手に入る時代になりました。デジタルアンプの優れた製品が国内外にあり、負けじと国産の老舗メーカーが非常に高品位な伝統的プリメインアンプを出しています。音像リアリズムから音場リアリズムへの変換があり、小型スピーカーが高性能化して音量を上げなくとも楽しめるようになりました。CDプレーヤーは完成の域に入り、CD中心のオーディオが集大成の時期を迎え、そこにiPodやPCによるオーディオが加わった。


山之内 iPodが圧縮オーディオを広げた元凶と言われていたけれど、いまでもそう思い続けている人は少ないと思います。つなぎ方次第でいい音が鳴る、ハイファイのソース機器としても使える。ユーザーはiPodで、かえって音楽を聴く価値を見いだしたのではないでしょうか。「Wadia 170iTransport」が出て、オンキヨーの「ND-S1」も追随し、iPodから信号のデジタル出力ができるようになりました。USBで挿すだけでデジタル信号を取り出せるというCDプレーヤーやAVアンプも出ています。今やコンポーネントもUSB端子の装備は当たり前になって、2010年はそれが必須になりそうですよ。

石原 僕はこのほど、PCオーディオに目覚めました。仕事以外では触るのも嫌なPCですが、これでオーディオを始めたらこんなに音のいい便利なものがあったのかと開眼した次第です。

ベルリン・フィルがホームページ上でコンサートをやっているという情報を得て、アクセスしたのがきっかけです。「デジタル・コンサート・ホール」といって、現地に行かないと聴けないような指揮者とオーケストラでの演目があります。ダウンロードでなくストリーミングで、1曲単位で3ユーロとか5ユーロといった金額を視聴するたびに支払ってPCでコンテンツを入手します。

PCのミニジャックからアナログ接続で手持ちのオーディオ機器につないだら、結構いい音です。さらにリンデマンの「USB-DDC」というコンバーターを使ってデジタル接続したところ、世界観が全く変わってしまいましたね。

おそらく僕と同世代以上の方は、PCに対してアレルギーをお持ちだと思うのですが、ここはぜひ、何が何でも乗り越えていただきたいと思います。

山之内 コンテンツ配信はどんどん広がっていますね。コンテンツをもっている人間が利用者に直接発信できますから、オーケストラの数だけ自主レーベルが生まれそうな勢いです。オーケストラ自体がエンジニアを抱えて録音も行う場合もありますし、録音エンジニアが独立して新たに会社をおこすこともあります。メジャーレーベルと同程度またはそれ以上の高水準の録音で、配信や自主レーベルのディスクがどんどん出てきています。

―― ネット上の音源は、今のところPCを介して入手することになりますから、それを再生しようとするとオーディオシステムの中にPCが入ってくることになります。ピュアオーディオファンにとって抵抗はないでしょうか。


石原 いずれは配信が主流になると思います。ディスクをもたなくていいし、流通もいらなくなるわけです。ネット上だけに存在する音源が増えていって、それをどう楽しむかはユーザーにゆだねられるのです。その音源はすでにCDより高音質になっており、無限に広がる時代が今まさに来ようとしています。その素晴らしい音楽を、iPodだけで聴くというのはもったいないと思います。

山之内 どうしてもPCを触りたくないという人でも、ネットワークオーディオを体験できる製品も出て来ました。

たとえばPSオーディオのトランスポートとDAコンバーターの組み合わせ。トランスポートでCDのデータをリッピングできるのです。まずCDを入れるところから始めますので、従来のCDプレーヤーと同じ動作で違和感なく使えます。そうしてリッピングしたものを聴くというところから、徐々に慣れて来たらDAコンバーターの方にネットワークブリッジというオプションを入れれば、リンのDSのようなネットワークオーディオの世界も楽しめます。PCを触ることなく、ネットワークをオーディオシステムの中に取り込めるという面白い製品です。

リンのDSというデジタル・ストリーム・プレーヤーも、まずはPCでCDからリッピングするか、配信の音楽データをダウンロードすることが不可欠かと思われますが、ドライブとリッピングの機能、保存するためのハードディスクを全て一体にした「RIP NAS」という製品を使えばPCが不要です。これらはネットワークオーディオが広がるための、重要なステップだと思います。

2010年のピュアオーディオ展望<中編>へ続く

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