シャープ裸眼3D液晶の画質をレビュー − 「ニンテンドー3DS」だけではない大きな可能性
続いて、今回発表された開発品の3D映像の画質について感想を述べてみよう。
まず驚いたのが、スイートスポットで視聴した際のクロストークの少なさ。非常に鮮明な3D映像が体験できた。
スイートスポットの幅は±3cmとかなり狭いので、少し頭を左右に動かすと不自然な映像になってしまうのは残念だが、これは視差バリア方式の宿命とも言える。ただし視差バリアは原理上、上下方向の視点の動きには強いので、上下に頭を動かすぶんには問題ない。
なお、視距離については30cmがスイートスポットとのことだったが、これはもう少し“遊び”があるようで、頭を前後に動かしてみてもそれほど立体感は損なわれなかった。なお、3D映像を撮影した動画はこちらで紹介している。
デモは動画と静止画の2種類を見ることができたが、3D動画の立体感の高さは特筆できる。遠景から近景までの距離感がしっかりと認識できるし、クロストークも(頭を動かさなければ)ほとんど感じられない。
なお視差バリア方式の3D表示は横方向の解像度が半分になるので、デモ機では480×427×2chで表示されていたことになるが、画面が3.4型と小さく、インチあたりのピクセル数が多いので、精細感が低いという印象はなかった。また画面輝度が500cd/m2と明るいので、明所でも快適な動画視聴が行えることを確認できた。
これまで、FPD Internationalなど様々な展示会で多くの裸眼3Dディスプレイを見てきたが、かつてこれほど鮮明な立体視が行えるものは存在しなかった。スイートスポットの狭さや画面の小ささを別にすれば、フレームシーケンシャルとそれほど遜色ない3D体験を実現できていると言っていいだろう。
一方、静止画でのデモでは、奥行き感や飛び出し感をそれほど強く感じられなかった。これはコンテンツによって変わってくるだろうし、今後さらに改善される可能性もある。
これだけの性能を備えたディスプレイだけに、ニンテンドー3DSなどのゲーム機だけでなく、様々な機器に応用が期待される。ソニーやパナソニックは、今後3D対応デジカメやビデオカメラを投入することをすでに公表している。これらのデバイスに内蔵するディスプレイとしても最適だろう。また3Dの盛りあがりに合わせて、シャープが期待するように携帯電話やスマートフォンも3D対応機器が増える公算は大きい。シャープにとっては非常に大きなビジネスチャンスが拡がることになる。
フレームシーケンシャル方式を採用している3Dテレビは、メガネは必要となるものの、スイートスポットは視差バリア方式に比べて圧倒的に広い。これに対して視差バリアは、フレームシーケンシャルとはまったく逆で、裸眼で視聴できるという気軽さは大きな武器となるが、スイートスポットは狭い。この2つの方式は補完関係にあり、搭載される機器によって使い分けが進むだろう。いずれにしても、今回の技術が3D映像の可能性を大きく広げたことは間違いない。