シグロと第一書林が立ち上げたネット時代の動画撮影教室「シネマテーク動画教室」開講
「映画 日本国憲法」「ぐるりのこと。」「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」など、多数の映画の製作、配給をおこなっている映画製作・配給会社シグロが、株式会社第一書林との共同事業として、映画のプロが教える動画の教室“シネマテーク動画教室”を7月から開講した。
“シネマテーク動画教室”は、動画の撮影・編集・ネット配信の初心者を対象とした初級コースから上級コースまでの3コースに、映画製作の実際の知識や技術、現場のプロの話が聞ける映画コースを加えたカリキュラムを用意。現在すでに開講中だが、途中からの受講や、コースによっては1〜数回のスポット受講も可能だ。
事務局の山上庄子さんは、「この教室は、これまで撮りためた動画・これから撮る動画に、“編集”という作業を加えて作品にする楽しさを知っていただくことを狙いにしています。プロを目指す方が行く映画学校と、趣味や興味を広げたいと考える方のためのカルチャーセンター的な場の中間と考えていただければと思います。「映像」という共通のテーマを通して、年代を問わず幅広い方に来ていただきたいので、土日と平日、来ていただきやすい時間帯を選んで教室を開講しています。映像の内容は受講者によって様々ですが、皆が楽しみ、集える教室になってくれたら嬉しいです。第2期の講座は10月より開講予定です。8月には、特別公開講座もございますので、ぜひ、お気軽にご参加ください」と話す。
筆者は、関口祐加監督講師の動画初級コース第2回を見学した。
この日は、「蝉しぐれ」「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」等の撮影監督をつとめたカメラマンの釘宮慎治さんが特別スポット講師となった撮影講座。教室内のカメラで撮影している映像をスクリーンで確認しながら、望遠と広角レンズ撮影の特性やズームの使い方の注意、カメラ角度による見え方等、画面をその場で確認しながら、初心者にもわかりやすく授業がすすめられた。
関口監督からは「撮影する時には、後の編集のことを考えて最初に5秒程度静止画も入れる」「何をどう撮りたいか、引き算して考えて」など、実際の映像制作体験を活かしたコメントが随時入れられる。
受講生の一人、プロのスチールカメラマンとしての経験を持つ男性の感想をうかがいった。「私はネイチャーフォトを仕事にしてきたのですが、スチールで撮影している時に、被写体の周辺を撮りたい、風が吹いたとき、その風の様子や音を入れたいと思うことがあるんですよ。被写体の周辺も記録したいということですね。それには動画がいいと考え、今回の受講を決めました。わかりやすいし、楽しんでいます。基本は静止画と同じところもありますし、また、今回知って良かったこともありますよ」という。他には、学生の方々や、編集者としての仕事に動画撮影も活かしたい女性など、様々な年代の方が受講している。映画界気鋭のプロが講師だが、初心者でも安心して参加できる教室だ。
◯ インターネット動画配信という新しい場
動画初級コース講師の関口祐加監督インタビュー
今、情報を受けとる新しい場としてインターネットという場所ができました。これは計り知れない世界で、情報を受けるだけでなく、発信することもできます。例えばツィッターで、ソフトバンクの孫社長に、一般の人がいきなり意見を言うことができてしまうことがありますね。映画の業界では業界内だけに固まってしまうところがどうしてもあるんですが、インターネットの動画の世界も、ツィッターのように、映画の世界の人間であろうが普通の人であろうが、フラットな世界です。そこがおもしろい。ネットでは、いろいろな方が発信して多くの人に見てもらえる可能性があるんです。
◯ どんな人も表現をしたいもの
どんな人でも何かしらのストーリーを持っていて、またみんな、表現をしたいものだと私は思います。そういう人のニーズに応えて、個人が自分の表現したい動画をアップするお手伝いをしていきたい。インターネットの動画配信という世界で、みなさんが表現したいものを表現することによって、きっと何かが変わっていくと思っています。
自分から映像表現をしてみることで、受け身の姿勢から能動的にものを見ることができるようになるという一面もありますよね。動画は、映像のもつ力を普通の人でも使えますし、多くの人のフィードバックが得られる。そういう体験は、個人の人間を成長させてくれるという、今までになかった面があると思うんです。
わたし自身は今、アルツハイマー病の母を介護しているんですが、介護って孤独になりがちですね。この体験をオープンにし、皆とつながっていきたいという思いから、母を撮影して動画でアップしています。それが今、9万5,000回も見られている。ドキュメンタリー映画の世界では10万人の観客というのは大変なことです。また、介護の垣根が壊れていき、色々な方と交流ができていると実感しています
◯ 気持ちいいという自分の直感を磨く
新しいことが現れる場合は、危険と裏腹で、インターネットでの動画配信にも良い面ばかりではありません。例えば、私の作品が知らない間に、勝手に編集を加えられてアップされてしまっていた、というような問題も生じています。こういうことも起こりえるのですが、そういう問題点も認識しつつ、個人が初めてもったこの力を大切にしたいと思っています。
動画を作ることは、自分の直感と気持が磨かれる作業かも知れません。技術も必要ですが、直感を使って、自分が、これだと思ったものをパッと撮影し、それを編集する。こんな風に自分の気持いいということを磨けるって、なかなかできない体験だと思います。動画は、そこにいける。長くする必要は全くありません。動画作品は5分、10分でも、人をひきつけるのに十分です。
( 2011年7月23日 市ヶ谷のシネマテーク動画教室にて)
シネマテーク動画教室は、現在、市ヶ谷で開講中。8月11日(木)、18日(木)、25日(木)には、一回受講可能の特別公開講座も開講する。
詳細については、以下のHPを参照のこと。
シネマテーク動画教室
http://cinematheque.jp/
(取材/文 山之内優子)
“シネマテーク動画教室”は、動画の撮影・編集・ネット配信の初心者を対象とした初級コースから上級コースまでの3コースに、映画製作の実際の知識や技術、現場のプロの話が聞ける映画コースを加えたカリキュラムを用意。現在すでに開講中だが、途中からの受講や、コースによっては1〜数回のスポット受講も可能だ。
主な講師紹介 | ||
東陽一監督:1934年生まれ。「もう頬づえはつかない」「絵の中のぼくの村」(ベルリン国際映画祭・銀熊賞受賞)「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」など多数の映画を監督し、受賞歴多数。シネマテーク映画教室では、映画コースでは映画コースで映画の企画、演出を指導。 | 関口祐加監督:1957年生まれ。オーストラリアで映画監督となる。「THE ダイエット」など、ユーモラスなドキュメンタリーを制作し、海外で多数の映画賞を受賞。高い評価を得ている。シネマテーク映画教室では動画・初級コースと中級コースを担当する。 | 今井剛氏:1969年生まれ。映画編集者。編集室「Luna-parc」代表。「フラガール」「悪人」などを担当。日本を代表する編集技師の一人。今回、同じく日本を代表するの映画編集者の大重裕二氏と、動画・上級コースの講師を務める。 |
事務局の山上庄子さんは、「この教室は、これまで撮りためた動画・これから撮る動画に、“編集”という作業を加えて作品にする楽しさを知っていただくことを狙いにしています。プロを目指す方が行く映画学校と、趣味や興味を広げたいと考える方のためのカルチャーセンター的な場の中間と考えていただければと思います。「映像」という共通のテーマを通して、年代を問わず幅広い方に来ていただきたいので、土日と平日、来ていただきやすい時間帯を選んで教室を開講しています。映像の内容は受講者によって様々ですが、皆が楽しみ、集える教室になってくれたら嬉しいです。第2期の講座は10月より開講予定です。8月には、特別公開講座もございますので、ぜひ、お気軽にご参加ください」と話す。
筆者は、関口祐加監督講師の動画初級コース第2回を見学した。
この日は、「蝉しぐれ」「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」等の撮影監督をつとめたカメラマンの釘宮慎治さんが特別スポット講師となった撮影講座。教室内のカメラで撮影している映像をスクリーンで確認しながら、望遠と広角レンズ撮影の特性やズームの使い方の注意、カメラ角度による見え方等、画面をその場で確認しながら、初心者にもわかりやすく授業がすすめられた。
関口監督からは「撮影する時には、後の編集のことを考えて最初に5秒程度静止画も入れる」「何をどう撮りたいか、引き算して考えて」など、実際の映像制作体験を活かしたコメントが随時入れられる。
受講生の一人、プロのスチールカメラマンとしての経験を持つ男性の感想をうかがいった。「私はネイチャーフォトを仕事にしてきたのですが、スチールで撮影している時に、被写体の周辺を撮りたい、風が吹いたとき、その風の様子や音を入れたいと思うことがあるんですよ。被写体の周辺も記録したいということですね。それには動画がいいと考え、今回の受講を決めました。わかりやすいし、楽しんでいます。基本は静止画と同じところもありますし、また、今回知って良かったこともありますよ」という。他には、学生の方々や、編集者としての仕事に動画撮影も活かしたい女性など、様々な年代の方が受講している。映画界気鋭のプロが講師だが、初心者でも安心して参加できる教室だ。
◯ インターネット動画配信という新しい場
動画初級コース講師の関口祐加監督インタビュー
今、情報を受けとる新しい場としてインターネットという場所ができました。これは計り知れない世界で、情報を受けるだけでなく、発信することもできます。例えばツィッターで、ソフトバンクの孫社長に、一般の人がいきなり意見を言うことができてしまうことがありますね。映画の業界では業界内だけに固まってしまうところがどうしてもあるんですが、インターネットの動画の世界も、ツィッターのように、映画の世界の人間であろうが普通の人であろうが、フラットな世界です。そこがおもしろい。ネットでは、いろいろな方が発信して多くの人に見てもらえる可能性があるんです。
◯ どんな人も表現をしたいもの
どんな人でも何かしらのストーリーを持っていて、またみんな、表現をしたいものだと私は思います。そういう人のニーズに応えて、個人が自分の表現したい動画をアップするお手伝いをしていきたい。インターネットの動画配信という世界で、みなさんが表現したいものを表現することによって、きっと何かが変わっていくと思っています。
自分から映像表現をしてみることで、受け身の姿勢から能動的にものを見ることができるようになるという一面もありますよね。動画は、映像のもつ力を普通の人でも使えますし、多くの人のフィードバックが得られる。そういう体験は、個人の人間を成長させてくれるという、今までになかった面があると思うんです。
わたし自身は今、アルツハイマー病の母を介護しているんですが、介護って孤独になりがちですね。この体験をオープンにし、皆とつながっていきたいという思いから、母を撮影して動画でアップしています。それが今、9万5,000回も見られている。ドキュメンタリー映画の世界では10万人の観客というのは大変なことです。また、介護の垣根が壊れていき、色々な方と交流ができていると実感しています
◯ 気持ちいいという自分の直感を磨く
新しいことが現れる場合は、危険と裏腹で、インターネットでの動画配信にも良い面ばかりではありません。例えば、私の作品が知らない間に、勝手に編集を加えられてアップされてしまっていた、というような問題も生じています。こういうことも起こりえるのですが、そういう問題点も認識しつつ、個人が初めてもったこの力を大切にしたいと思っています。
動画を作ることは、自分の直感と気持が磨かれる作業かも知れません。技術も必要ですが、直感を使って、自分が、これだと思ったものをパッと撮影し、それを編集する。こんな風に自分の気持いいということを磨けるって、なかなかできない体験だと思います。動画は、そこにいける。長くする必要は全くありません。動画作品は5分、10分でも、人をひきつけるのに十分です。
( 2011年7月23日 市ヶ谷のシネマテーク動画教室にて)
シネマテーク動画教室は、現在、市ヶ谷で開講中。8月11日(木)、18日(木)、25日(木)には、一回受講可能の特別公開講座も開講する。
詳細については、以下のHPを参照のこと。
シネマテーク動画教室
http://cinematheque.jp/
(取材/文 山之内優子)