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特別座談会:ビジュアルグランプリ「批評家賞」選出議事録 − 2011年優秀モデルはコレだ

公開日 2011/12/27 15:09 AVレビュー編集部
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●「ソニー対JVC」マッチアップ
「スーパーハイビジョン」の片鱗がうかがえたソニー

−− 以上の議論の前提をふまえ、コンシューマーレベルで製品化された4Kプロジェクター製品、ソニー、ビクターの各機種を論評していただくことにしましょうか。

ポストフルHDとしていち早く登場した4Kプロジェクター、ソニーのVPL-VW1000

例年、ソニーと激しい競争を繰り広げるのがJVC。審査員にも同社製品の所有者は多い

 両機の優劣はさておき、パネルそのもののスペックが違うと、2D画質でも質感、肌の質感とか、細部もそうですが、雰囲気が全く変わってくることがまず分かります。映像の深さや遠近感が全く違うものに見えてきます。

岩井 ビクターの4K機能は中継ぎ的な印象しか持たれないかも知れませんが、エッジの立った解像感の良い雰囲気はさすがだと思いました。ただ、DLA-X9、X7の完成度が高すぎましたし、新旧切替スパンが短かったせいもあって昨年感じたほどの衝撃はありませんでした。逆に言うと、昨年の場合はソニー前モデルの完成度はビクターほどのインパクトがなかった分、前モデルとの進化度合いが激しかったような気がします。

 2010年のビクター機における衝撃度の大きさも相当なものでしたが、本年のソニー機もそれに匹敵すると思います。

ただ、4K対応をうたう両者では狙いやコンセプトが全く違うので、ある意味で優劣を単純に付けがたい部分もあります。あくまで4Kネイティブを目指すソニーと、それに比してより手が届きやすいラインで4K対応機を実現したビクターの違いは考慮に入れる必要性があるでしょうね。

どちらを買うかは読者の判断に委ねるとして、実際に商品化した2社の取り組みはそれぞれ評価したいと思います。

鴻池 ビクターの今期モデルは決して前年モデルとの進化が足りないということはありません。例えばX7とX70Rを観比べると、昨年モデルは私にはピンボケに見えます。例えば、瞳の輝きや光沢に映り込む風景などに顕著な違いを見る事ができます。画素ずらし技術を用いて4Kスペックを実現した効果は実際の画に現れていると思います。

値段もソニーに比べるとこなれていますし、2世代、3世代前のモデルをお使いの方であれば、私が今回感じた以上の差が認識できるはずですし、買う価値は十二分にあると思います。

大橋 ビクターDLA-X90Rはe-shiftで階調表現力が大幅に向上し、被写体に細かな立体感が生まれました。前世代機との差はかなり大きいのです。休みなく進歩しているということです。


折原一也氏(左)、岩井喬氏(右)
折原 私はソニーに軍配を挙げます。VPL-VW1000ESの画は、4Kプロジェクターとしての完成度が文句ありません。HDコンテンツをアップコンバートした映像を観ても4Kらしい映像が出せます。密度感のある映像がとにかく魅力的だと感じました。3、4年前に観たシネコン用のSXRD4Kプロジェクターの映像に似ているという印象を持ちました。当時のモデルは1600万円程度だったと記憶していますが、それに匹敵するだけのクオリティを10分の1の価格でほぼ実現していることは賞賛に値します。

貝山 ビクター機は事前に私が想定していたよりも良い画は出せていると思います。そこまでの努力は買いたい。でもやはり、4Kを名乗る場合にははっきりした「More」が必要です。ソニー機はその「More」が実際の画に現れていました。デバイスの特性だけでなく、輝度信号に含まれた情報から復元するという考え方が非常にうまくまとまっています。蓄積した映像に関するデータが最適に組み入れられており、ある意味での賢さを感じました。

大橋 レンズの性能も圧倒的ですからね。

貝山 ええ。4Kの場合はフルHDと比して光学系の作り込みが非常に大事です。あれだけの画を出すためには絶対的なレンズ性能を有する必要性があることが良く分かりす。

村瀬 ただ、ソニーの場合はビクターと違って8Kのパネルは持っていない。一方、ビクターの場合は業務用の世界では4Kと8Kの両方のパネルは持っています。パネル技術に関してはビクターはソニーを上回っています。セット製品への投資はソニーに及ばなかったかもしれませんが、逆にソニーにない武器を持つビクターならではの製品投入が来年は期待できます。

−− なるほど。


村瀬 ソニーの4Kネイティブの映像は文句はありませんでしたが、アップコンバート映像に関してはソニー、ビクターともに私はそれほど評価していません。方式の違いが印象として現れているだけのような気がします。パネル以後の信号処理の部分ではソニーの方に蓄積がありますのでもっと良い画が出せる筈ですが、期待したほどの感動は得られませんでした。期待しすぎだったのかもしれませんが…。

山之内 私は全く印象が異なります。ソニーのアップコンバート映像は、同社技術陣が4Kにチャレンジした成果が出ていると思います。ユーザーとして、実際に家で観たいと思わせるだけの説得力があると思います。

村瀬 そうですか。

山之内 ソニーの画は、奥行きの凹凸や質感に一日の長があります。オリジナルのBD2Kでは得られない秀逸な映像が4Kアプコンの画で感じることができます。単純に輝度だけで緻密さを出すのではなく、階調で立体感を出せていることにも感心しました。

貝山 その通りですね。ソニー機で観る4Kカメラで撮られたアプコン映像は、ディスクに収める際のダウンコンバートプロセスが存在することも忘れさせるほどの力強さがあります。

大橋 今回VPL-VW1000ESを観る前に、私にはある種の危惧がありました。QUALIA004の時の、フルハイビジョンは美しいが480の信号を入れたときの映像破綻が今回繰り返されるのではないかと…。しかしそれは杞憂でした。DRCやX-Reality PROといった様々な近年の画像分析・活用技術が全部生きています。VW1000ESは業務と民生の合作です。テレビチームとプロジェクターチームとの結晶と言っても良いかもしれません。

 搭載したレンズの性能を、映像処理技術との合わせ技で活かした成果が出ていることは事実でしょう。3Dでも解像度が落ちない、空気感溢れる映像が魅力だと思います。

>>第2部:「失われた10年」を取り戻せ! に続く

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