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AV機器にも押し寄せるクラウド化の波

【海上忍のAV注目キーワード辞典】第5回:クラウド音楽配信サービス − ソニー/Google/Apple/Amazonの違いは?

公開日 2012/07/24 14:19 海上 忍
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【第5回:クラウド音楽配信サービス】

■クラウド型と非クラウド型を整理する

PCの世界から始まった「クラウド化の波」は、AV機器の分野にも到達している。今後さまざまなサービスが登場するものと予想されるが、先頭に立つのはまちがいなく「音楽配信サービス」だ。その説明へ進む前に、クラウド型と非クラウド型の音楽配信サービスの違いについて明確にしておこう。

クラウド型の音楽配信サービスは、音楽データの実体をクラウド(インターネット上のサーバー)に置いたままで聴くことが前提となる。音楽は要求され次第提供されるが、基本的にはオーディオ機器に保存できない「ストリーミング」(ダウンロードしながら再生)の形だ。そのためインターネットへの接続が欠かせないが、オーディオ機器には大容量の記憶装置を搭載せずに済む。ビデオ・オン・デマンド(VOD)の大半もクラウド型であり、仕組みの上で音楽配信サービスとの共通項は多い。

ついに国内でサービスインしたクラウド型音楽配信サービス「Music Unlimited」はクラウド型音楽配信サービスの代表例

非クラウド型の音楽配信サービスは、いわば「売り切り型」だ。ユーザは音楽データを曲/アルバム単位で購入し、それを聴くことの永続的な権利を手に入れる。ファイルとして独立した形でダウンロードされるため、購入時以外はインターネットに接続する必要がなく、オーディオ機器の記憶装置にコピーすれば好きな場所で聴くことができる。ただし、音楽データには違法コピー防止情報(DRM、Digital Rights Management)が埋め込まれ、コピー先の機器やコピー回数を制限されることが多い。音楽ダウンロードサイトと同じ意味合いで用いられることもあるようだ。

クラウド型の代表例には、先日国内向けにサービスが開始されたソニーの「Music Unlimited」(関連ニュース)が挙げられる。非クラウド型は、Appleの「iTunes Store」、レコチョクの「レコチョクplus+」、ソニーグループのレーベルゲートが運営する「mora」などがある。国外のサービスで日本未提供のものを加えれば、その数はかなり増える。

日本未実施の「iTunes Match」。同じクラウド型に分類されるが、Music Unlimitedとは聴ける曲の範囲が大幅に異なる

■おもなクラウド型音楽配信サービスを比較する

音楽配信サービスは、運営会社の考えや楽曲を提供するレコード会社の思惑、国や地域で異なる著作権に対する考え方など、さまざまな要因でサービス内容が決定される。さらにクラウド型はストリーミング配信を前提とすることが多いため、携帯電話回線でも聴けるよう圧縮率の高いオーディオコーデックを採用するなど、必要とされるネットワーク帯域(データ転送幅の太さ)とのバランスを考慮しながら細かい仕様が決められている。当然、音質もその仕様が固められる過程で決まる。

では、実際のクラウド型音楽配信サービスでは、どのような配信条件が用いられているのだろうか。日本未導入のものも含め、PCやスマートフォンなど幅広い機器に対応した4つのサービス(Music Unlimited、Google Music、iTunes Match、Amazon Cloud Player)を比較し、その実像に迫ってみよう。

・音楽データの出所

この4つのサービスでは、Music Unlimitedだけが「配信事業者が用意した音楽データをストリーミングで聴く」方式を採用している。残りの3つは、音楽CDから取り込んだ楽曲など「手元にある(自分が用意した)音楽データをクラウドに転送して聴く」方式で、あるときはクラウドからストリーミングによる配信を受け、あるときはクラウドからダウンロードして(オフラインで)聴くスタイルとなっている。

Appleが北米でのみサービス提供している「iTunes Match」は、手元にある音楽データをクラウドへアップロードし、iTunes Storeで取り扱いのある曲と判定されれば、いつでもその曲をiTunes Storeの品質で聴けるようになる。たとえば、アップロードしたMP3 128kbpsと同じ曲がiTunes Storeにあると判定されれば、iTunes Plus(AAC 256kbps/DRMなし)の曲をダウンロードできる。

・オーディオコーデックの種類

Music Unlimitedでは、他と比べ低めのビットレート(HE-AAC 48kbps)が採用されている。これは主にストリーミング方式を中心としたサービス(※ダウンロードした楽曲も定期的にオンライン認証が必要)であることや、定額聴き放題であること、曲を提供するレコード会社の考え方などを考慮し、総合的な見地にもとづき決定されたとのこと。ただし、3G回線で途切れることなく受信できるというメリットもある。

他の3サービスは、音楽CDから取り込んだかダウンロード購入したデータを使う前提のため、MP3やAACといった複数のオーディオコーデックに対応している。

・料金の違い

音楽CDを持っていたり、ダウンロード購入した履歴を持たなくても、定額で1,000万曲が聴き放題というMusic Unlimitedは、1,480円/30日という価格設定が行われている。それに対し、iTunes MatchとAmazon Cloud Playerは20ドル台/年という安さだ。

自由に聴くことができる曲数がまったく異なるため、そもそも比較にはならないものの、ユーザの音楽に対する考え方や楽しみ方により評価が分かれそうだ。

<主要なクラウド型音楽配信サービスの比較>
Music UnlimitedGoogle MusiciTunes MatchAmazon Cloud Player
料金1480円/30日無料より24.99ドル/年20ドル/年
オーディオコーデックHE-AAC 48kbpsMP3、AACなどAAC 256kbpsMP3、AAC
配信方式ストリーミングストリーミングダウンロードストリーミング
オフライン再生○(※30日に一度オンライン認証が必要)
対応曲数1000万曲自分が権利を持つ曲のみ自分が権利を持つ曲のみ
定額聴き放題
対応機器Windows
Mac
Android
iPhone
タブレットSONY Tablet、iPadAndroid、iPadiPad
ゲーム機PS3、PS vita
DAPウォークマンiPod
曲のアップロード提供曲と一致するもののみ受け入れ2万曲まで無料2万5千曲まで有料プランは容量無制限

※Google Music/iTunes Match/Amazon Cloud Playerの料金等は米国でのもの

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