【特別企画】編集部記者がイベントへ突撃
“音のDAIKEN”が「音のいい部屋」作りをレクチャー −「いい音・いい部屋体感ツアー」参加レポート
どのレベルまで遮音すればよいのか? |
また、「近隣から、また自宅内から苦情を言われにくいレベルにまで遮音するには、外部への音漏れを何dBまで抑えればいいのか?」など具体的なポイントについて、実際の数値を挙げながら説明。パチンコ店の音が80dB、衣ずれの音が30dBなど実例を挙げながら騒音レベルについて解説する。
そして、同社の「スタンダード★★防音(A防音)」を木造建築で行った際には約40dB、「プレミアム★★★防音(S防音)」では約50dBの遮音性能があることなどを紹介。目標の遮音性能を得るためにどの程度のレベルの防音システムを採用すればいいのかについて述べた。このあたりは「音と部屋に対するものさし」作りのために活用できる具体的なポイントとも言える。
また、同じ部屋で使用する機器やエアコンのノイズにも配慮すべきだとも指摘。世界最小モーターを採用し空気をスムーズに通すことで従来よりもノイズを低減させた同社の防音換気扇も紹介したほか、弱運転でも十分な暖かさ/涼しさを得られるように、エアコンは一回り能力の高い製品を選ぶことで静かな環境にできることなど、快適さということでちょっとしたポイントも紹介。
加えて、理想的だとされる残響時間と部屋の広さとの関係をグラフで紹介するなど、より具体的な内容にも言及。音のエネルギーを吸音材で熱エネルギーに変えて消耗させるのが「吸音」であり、その吸音を使って室内の響きを調整することが「調音」であることなど、「遮音」「吸音」「調音」がそれぞれ独立したものであること、それら3点が密接に絡み合ったバランスの上に「音の良い部屋」が成り立つことを説明する。
そして、部屋作りにはまず最初に遮音、次に吸音、その上で最後に調音で部屋の響きを調えるというプロセスを改めて紹介。このプロセスを遂行するためにインストーラーや建築士、デジタルホームシアター取り扱い技術者資格認定者などのプロがいることを改めて紹介し、新築やリフォーム、リノベーションでのホームシアター導入においては、「なるべくご希望に沿う部屋作りができるよう、できれば計画段階から相談していただければと思います」と述べた。
さらに井上氏は、縦/横/高さという部屋の寸法比も音環境にとって重要だとコメント。部屋の寸法比によっては定在波やブーミングが発生しやすくなることもあると紹介し、新築/改築での設計時に気をつけるべきポイントについて語った。部屋の特性という物理的な制約にどう向き合うのか、また「自分だけでも対処できる問題なのか、それともプロに相談するべきなのか」といった判断基準を養うという点は、まさに部屋作りにおける「音と部屋に対するものさし」が関係してくる部分だろう。
部屋の設計という点については、フラッターエコーにも留意した設計を行うべきだと言及。エコーにより音響障害が起こりやすい部屋の形や、フラッターエコーを防止するための方法も紹介するなど、様々な障害等の体感を交えた解説が行われた。
このように、音の良い部屋をつくるためのポイントを、実体験を通しながら学べる本イベント。ホームシアターやオーディオを楽しむ上で、土台となる部屋の環境が非常に重要であることを記者は改めて認識させられた。
特に我々AVファンは「音質」という言葉をスピーカーやアンプといったハード類に対して使い慣れており、「音を良くする」というと機器の買い替えやチューニングを連想しがちだ。しかし機器の性能を十分に引き出すためには、音を鳴らす部屋自体の響きが整っていなければならない。繰り返しになるが、部屋という存在はホームシアターやオーディオを楽しむ上での「前提条件」なのだ。
そして、その前提条件を整理する方法が遮音、吸音、調音という一連のプロセスなわけだが、これまで見てきた通り、その全てをユーザー自身だけで行うことは難しい。協力を仰ぐプロに対して自分の希望をキチンと伝えるために「音に対するものさし・部屋作りに対するものさし」が必要だということを最後にもう一度紹介しておきたい。
その「音と部屋に対するものさし」を、様々な実験や説明を通して体感できる「いい音・いい部屋体感ツアー」。いい音、満足する音を追求するAVファンにこそ必要で、有用な部屋作りのポイントが満載されている。新築やリフォーム、リノベーションを検討する際にはAVファンにぜひ活用してもらいたいイベントだと感じた取材だった。