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「5G WiFi」「WiGig」のメリット/デメリット

【海上忍のAV注目キーワード辞典】第15回:次世代無線LAN − 4K映像のWi-Fi伝送は実現するか?

公開日 2012/12/06 15:52 海上 忍
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【第15回:次世代無線LAN】

■高速化される無線LAN

当初はパソコンを中心に利用され始めた「無線LAN」。2.4GHzなど無線免許不要の帯域を使用したワイヤレス通信規格であり、デスクトップ機からノート機へというトレンドの変化に沿って普及し始めた。その後はゲーム機やスマートフォン/タブレット、そしてネットワーク対応が必須となったテレビやビデオレコーダーなどのAV機器までもが無線LAN対応を開始し、いまや無線LAN環境を整えている家庭は珍しくない。

無線LANと一口に言うが、通信規格にはいくつもの種類がある。いずれもIEEE(米国電気電子学会)802委員会のワーキンググループ11が規格を策定することから、「802.11」に続けてタスクグループを意味するアルファベット数文字を置く命名スタイルが採用されている。国際標準規格であり、その仕様に準拠した製品であれば互換性があると判断できる。

ちなみに、無線LANを「Wi-Fi」と呼ぶことがあるが、これは通信規格を指す言葉ではなく、業界団体のWi-Fi Allianceが実施する互換性テストにパスした製品に「Wi-Fi Certified」という認定を与えることに由来する。

無線LAN対応モバイル情報端末出荷台数(総務省が配布する資料より転載/出典:ICT総研 公衆無線LANサービス市場に関する需要予測 2011年9月8日発表)

無線LANの歴史は、近距離ワイヤレス通信高速化の歴史でもある。1997年にIEEEで最初に規格化された「IEEE 802.11」は、1999年には伝送速度を2Mbpsから最大11Mbpsに拡張した規格「IEEE 802.11b」となり、その上位互換規格として最大54Mビット/秒の「IEEE 802.11g」が策定され……と、高速化が推進されてきた。

規格名使用される周波数帯公称通信速度
IEEE 802.11a5GHz54Mビット/秒
IEEE 802.11b2.4GHz11Mビット/秒
IEEE 802.11g2.4GHz54Mビット/秒
IEEE 802.11n2.4GHz/5GHz600Mビット/秒
IEEE 802.11ac5GHz6.9Gビット/秒
IEEE 802.11ad60GHz7Gビット/秒

【表1】IEEEが定めるワイヤレス規格


そして次に来る規格が「IEEE 802.11ac」と「IEEE 802.11ad」だ。家庭における無線LAN対応製品の増加と、高解像度の映像などさらなる高速性の要求に応える次世代無線LAN規格として、来年あたりには正式な規格となる見込みだ(本稿執筆時点ではドラフト段階)。メーカーも対応製品の量産体制をにらみ、規格の一部仕様に対応した製品も登場している。

国産では初、IEEE 802.11acの技術を一部使用した無線LANルーター「バッファロー WZR-D1100H」

■「802.11ac」と「802.11ad」

「5G WiFi」という別称が設けられたIEEE 802.11acは、5GHz帯の数十メートルという広い通信範囲に、最大6.9Gビット/秒という圧倒的なデータ転送速度をもたらす。ただし、この速度は理論値であり、製品化に向けて解決されるべき技術的課題が多いうえ、生産コストもかさむ。そこで多くのメーカーは、データ転送速度を最大1Gbps程度に抑えたものを第1世代として製品化する見込みだ。

もうひとつのIEEE 802.11adは、「WiGig」(Wireless Gigabit)の別称で知られる最大7Gビット/秒の高速通信規格。60GHzという高い周波数帯を利用することで、7〜9GHzという広い帯域を確保、IEEE 802.11acに比べ高速化が容易なことが長所とされる。ただし通信範囲は最大10m程度と狭く、その点ではIEEE 802.11acに見劣りする。

強化ポイントは通信速度だけではない。IEEE 802.11acを例にすれば、現行規格のIEEE 802.11nと比較して通信可能範囲は約1.3倍に拡大、消費電力効率も約6倍にまで向上するという。特にバッテリー消費の節減が重要課題のスマートフォンにとって、次世代無線LANへ移行するメリットは大きいといえる。

AV機器にとっても、次世代無線LANは重要になる。4K品質の映像データを転送するには、圧縮効率に優れるH.264を利用しても150Mbps程度のビットレートを必要とするため、ワイヤレス出力を実現するにはIEEE 802.11nを超える速度が不可欠だからだ。

■来年は「ギガビットWi-Fi元年」?

市場調査会社のレポートによれば、通信速度と消費電力効率に優れるIEEE 802.11acは、Wi-Fi機能を搭載した携帯端末の70%以上で採用される見込みだという。しかし、規格が正式段階ではない現在、一部機能を利用した製品があることを除けば、対応製品も存在しない。

日本国内での導入には電波法を所管する総務省の認可が必要になるが、それも遠い未来ではないだろう。IEEE 802.11acについては、かねてから情報通信審議会内の委員会で技術的条件について審議を重ねており、総務省が11月28日に技術的条件について一部答申を受けたことを発表している。このまま順調に進めば、来年は「ギガビットWi-Fi元年」と呼ばれることになるかもしれない。

導入はパソコンやスマートフォン/タブレットから先に進む可能性は高いが、映像では4K、オーディオではDSDという大容量データのトレンドを迎えたAV機器においても、いずれギガビットWi-Fi対応機が登場する可能性は高い。

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