ストリーミングで“攻め”の戦略
ソニーがSpotifyと組みMusic Unlimitedを捨てる理由とは?
■ダウンロードからストリーミングへ、そこにPSN/SEN再編というタイミング
ソニーが音楽ストリーミングサービスを展開するのは初めてのことではなく、2011年から「Music Unlimited」がワールドワイドに展開されている。PlayStation Musicの開始にあたっては、日本を含む19カ国でそのサービスを終了することを発表しているため、今後はPlayStation Musicに一本化して展開するという理解でよさそうだ。
自社で立ち上げたサービスを終了させてまで新サービスへ移行する理由は、コスト削減も一因だろうが、デジタル音楽の「ダウンロードからストリーミングへ」という流れがいよいよ顕著になったことを受けての決断と考えられる。かんたんにいえば、Spotifyと組んだほうが運営コストがかからずユーザにとってもメリットがある、と判断したのだろう。Music Unlimitedが扱う楽曲数は約2500万曲とSpotifyに大きく劣るものではないため、コストを下げつつもユーザビリティを向上させる、ユーザ数6400万人のPlayStation NetworkおよびSony Entertainment Networkの一元化にあわせた"軽装備だが攻め"の戦略と解釈したい。
■アップルに先んじてストリーミングサービスを強化
アップルの先を行こう、という思惑もあるに違いない。「iTunes Store」はダウンロード方式における成功事例の代表格だが、2014年度は全世界で十数パーセントも売上が減少したと報じられており、2013年に開始した「iTunes Radio」(基本は無償ストリーミングサービスだが、ダウンロード購入への導線が用意されているなどダウンロード型ビジネスモデルから脱しきれていない)も伸び悩みが伝えられている。
ソニーのMusic Unlimitedも、Spotifyと比較すればユーザ数は少ないはずだが(未公表)、PS4の発売以降は増加が伝えられている。ゲーム端末やスマートフォン/タブレットだけでなく、オーディオ機器やテレビにも強みを持つソニーだからこそ、他社と提携してでもこの市場におけるプレゼンス向上を狙ったのだろう。確かに、トレンドの変化を前に足踏みしている感があるアップルを出し抜くタイミングとしては悪くない。