【特別企画】オーディオルーム防音のポイントを実地で体感
『オーディオと防音』を深堀りでレクチャー&体感 − 「第19回 Acoustic Audio Forum」開催レポート
例えば屋外への音漏れ防止という観点では、特別な遮音対策をしない一般的な戸建住宅では「D-25〜35」程度の遮音性能。これに対しアコースティックデザインシステムでは通常、壁で「D-55」、窓であれば「D-45」程度の性能で遮音設計を行うとのこと。だが、スフォルツァートの試聴室はそれを上回る「D-65」という性能を持たせている。
ただし、やみくもに遮音すればいいわけではないのはこれまでも度々述べてきた通り。オーディオを楽しむことを考慮した上で防音工事を設計しなければならない。
しかしその一方で、今回のスフォルツァートの試聴室は製品開発に利用するものであるから、「どんな音も気持ちよく聴ける」といったような部屋では製品の実力を把握できなくなってしまう。同社の小俣氏は「コンサートホールのリハ室みたいに、『ミスタッチがわかるけど音は全部吸音します』であったりとか、逆にどんな音も気持ちよく聴ける部屋でもいけない。そうした条件を満たしてくれる設計会社がここだった」と述べ、アコースティックデザインシステムに部屋づくりを依頼した経緯を説明した。
■オーディオも部屋づくりも「小手先のテクニックは効かない」
そして、初日と同様に『浮き二重構造』による部屋づくりの重要性を紹介。アコースティックデザインシステムの鈴木氏は「(二重構造にせず)単純に防音壁材などを使っても効果はそれほど出ない。音楽を聴くなら実用的な解決方法としてやはり二重構造にしたほうがいいだろう」とアドバイスする。
また、マイケル・ジャクソン「Beat It」での音出しデモに際し「今は機械が進化して大音量でも歪み感が出ないため、ついつい音量を上げたくなる。しかし、部屋の作り方次第では音が部屋で飽和してしまい、イマイチなこともある」ともコメント。「だが、この部屋ではそうした飽和感は感じないだろう」と続け、防音と音の飽和感が関係していることにも触れた。
そのほか、壁に比べて窓は性質上どうしても音が漏れやすいことにも言及。例えば庭など音が抜けていっても大丈夫な方向に窓を設けたり、隣家の窓のある方向には自宅の窓を設けないなどの工夫もすべきなど、戸建住宅ならではの遮音対策も紹介した。
そして両日とも、こうしたレクチャーに続いては、スフォルツァートの小俣氏が講師となって同社製品のデモパートに移行。完成したばかりの最新ネットワークプレーヤー「DSP-01」を開発者自らが解説しながらの試聴が行われた。
この「DSP-01」について小俣氏は「新技術や独自技術といったものは何もない。『配線は短く太く長さを揃える』といったような、実行すれば音がよくなると言われていることを全部やっただけ」だとコメント。忠実、かつ、徹底的に基本をやりぬいた製品であると説明する。
これに対しアコースティックデザインシステムの鈴木氏も「我々の部屋づくりも、教科書にかいてあるようなことを忠実にやっている」と語り、オーディオ機器開発も防音/遮音もベースには共通した理念があるとする。「その場限りの小手先のテクニックではない。ごまかしは一切効かない」と言葉を続け、オーディオでも防音でも本質を追求することの重要性を説いた。