【特別企画】「オーディオルームの響きについて」をテーマに開催された試聴会に潜入
オーディオに適した“部屋の残響時間”とは?「アコースティックオーディオフォーラム」潜入レポート
続けて、現在は残響時間の計算の精度がかなり高くなっているが「残響時間を精密に計算して部屋を設計したからといって『それがどうした』という話で、それがリスニングルームの良さに直接結びつくわけではない」とコメント。「残響時間は絶対値ではない」とし、どれくらいの割合で吸音すればいいのかを考える目安として活用すべきものだと語る。
そして、井筒香奈江のハイレゾ音源「かもめはかもめ」を再生。「おそらくデッドな部屋で録音したであろうという楽曲」だと、残響時間というテーマに沿った観点から曲を紹介した。
一方、「例えば6帖の部屋と20帖の部屋があったとして、それらが同じ残響時間だったとしたら、6帖の部屋の方が響きが長く感じる。残響時間は部屋の容積とセットで評価しなければならない。もっと簡単に部屋の響きの程度を評価するには、部屋の平均吸音率で評価するのがいい」と解説。壁や床の素材、家具などがどれくらいの吸音率を持っていて、部屋の響きにどのように影響するのかを参考に部屋づくりを行っていくべきだとアドバイスする。
部屋による吸音については、一般的にトータルで20〜30%ほど吸音されるくらいが過ごしやすいとされているとのことで、「部屋全体としての吸音率が0.3を超えると少しデッドだと言われる」と説明。「比較的新しい家で、家具などをあまり設置していない状態だと0.2くらい。本棚やカーテンなど家具をたくさん入れると0.3に近いくらいになる」と続け、「吸音率0.2と0.3だとかなり感じ方に差がでる」と解説した。
そして「オーディオ機器での音楽再生や、楽器演奏という用途においては、我々としては通常より若干響き気味で部屋を作ったほうがよいのではないかと思っている」とコメント。実際に、会場となった同社ショールームも平均吸音率は人が1人のときで0.18、10人入ると0.23と、比較的響きは長めに設計してある。
それに続いては、「カンターテ・ドミノ」のDSD音源や、マイケル・ジャクソン「BAD」のハイレゾ音源なども再生。様々なジャンルの楽曲を用いて部屋の響きを体験できるようにしていた。
また、鈴木氏は「吸音が大きくなると音も吸われて音量も必要になる」と、部屋の響きと音量の関係性にも言及。「ライブな部屋だったら小音量でも満足感が得られたりもする」と述べ、響きを意識した部屋づくりはこうした点でもメリットがあることも紹介した。
加えて、イベントでは吸音時間の測り方も実演。「昔はピストルを鳴らしたり風船をいっぱい割ってその残響を測っていたのだが、ばらつきがあって計測しづらかった。今は機械とパソコンで簡単に計測できるようになった」と、技術の進歩によって簡単に、かつ、より正確に計測できるようになったことを紹介した。
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