連続企画:日本コロムビアのハイレゾ音源レビュー
GIGA MUSIC独占先行配信!個性的な歌声が詰まった「平山三紀ベスト・ヒット・アルバム」を聴く
音楽配信サイト「GIGA MUSIC」にて、名門・日本コロムビアが擁する選りすぐりの未ハイレゾ化音源が、続々とハイレゾで登場することとなった。しかも独占先行配信。既に様々なアーティストの音源が配信中で、今後も多彩なラインナップが予定されているという。
Phile-webではこのハイレゾ音源を連続レビューする企画をスタート。リリース当時のエピソードや、ハイレゾになったからこそ注目したい聴きどころをたっぷりとご紹介したい。
平山三紀ベスト・ヒット・アルバム / 平山みき
96kHz/24bit FLAC
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一度聞いたら忘れられない「天性の歌い手」
生来の歌手というべき人がいる。歌手になるために生まれてきた人たちだ。その条件について考えてみよう。まず、歌う本能があること。教育や継承から生まれたのでなく、歌うことが喜びの天然音楽家だ。第二に、天与の才能に誠実であること。自惚れるのは決して悪いことでないが、奢ったり怠けたりしない。音楽につねに前向きで、不振の時期があってもバージョンアップして必ず復活を遂げる。生きている限り歌を止めず進化し続ける。第三に、他の人が決して真似出来ないオリジナリティと個性を持っていることだ。
全てが小粒になった現代、例えば美空ひばりのような国宝級の人はいないが、「ああ、この人は天性の歌い手だな」と思わせる人がいる。平山みき(三紀から改名)はその一人だ。
平山みきの歌を一度聞いたら忘れられない。正直言ってヘンテコな声だ。クラシック声楽だったら「悪声」。声域が低くファルセットを使わず地声だけで歌うので音域が狭い。
しかし、平山みきには一般の日本人のレベルから隔絶した、とんでもないリズム感がある。小股の切れ上がった、と形容したくなる融通無碍のフレージング力がある。天衣無縫の歌い口がそこから生まれる。声帯が強い。どんな曲調でも音量が豊かでヘタレないタフな歌声だ。しかも響きが明るく陽性。日本人初のファンキー歌手、かもしれない。そのおかげで「悪声」のはずが、ワンアンドオンリーな強烈な個性へ変わった。
リズム感に加えてディクション(口跡)の切れがいいから歌詞の言葉が引き立ち、歌の世界が豊かに息づく。錚々たるクリエイター(作詞、作曲家、ミュ―ジシャン)が平山みきをプロデュースしたくなるのも頷ける。クリエイターに「恋」させる歌手といってもいい。最初に世に送り出したのが筒美京平、橋本淳コンビ、1980年代にアルバム「鬼が島」で脱皮をもたらしたのが近田春夫。1990年代には秋元康が歌詞を提供し2000年代へ飛躍した。
近田春夫が昔、深夜放送で語った言葉が今思い出され、思わず苦笑した。「郷ひろみと平山三紀の声は共通点がある。『頭の悪そうな声』ということだ」……これを聞いた時は失礼なことをいうものだと思ったが、その後近田が平山みきをプロデュース中だったと知り納得した。つまり一種のリスペクト。そう、最初に書いた「生来の歌手」であることの条件の四つめに、クリエイターが自然に集まるオーラと魅力があること、を加えておく。
いかに優れた素材であってもプロデューサーの元を離れたら無力な歌手、ミュージシャンは多い。平山みきは違う。出会いの度にオリジナリティと輝きを増していく。「ワタシのラッキーカラー」(本人談)の黄色い衣装を纏って今年も全国でコンサートを開催するなど、現役バリバリだ。しかし、何をおいても残念なのは、「真夏の出来事」「ビューティフル・ヨコハマ」しか知らない人が圧倒的に多いことだ。スケールの大きなバラード「絆」、ファンキーな魅力炸裂の「冗談じゃない朝」といい曲が沢山あるのに…。
平山みきの日本コロムビア時代の代表曲を網羅したアルバムの96kHz/16bitハイレゾダウンロード配信が始まった。配信元は日本コロムビアの歌謡曲を手掛けるGIGA MUSIC。天性の歌手平山みきは今が聞くチャンスだ。彼女の素晴らしい歌の数々に出会っておかないと必ず後悔するぞ!
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