【特別企画】アコースティックラボ主催イベント
防音のプロが実例をもとに“高音のきつさ”対策を徹底解説! 「Acoustic Audio Forum」密着レポート
■「アラカルト」「注目機材紹介」「実例紹介」の3パートで“音がいい部屋”を解説
イベントの会場となったのは、同社がオーディオに適した音の響きに配慮してつくったモデルルーム「蔵前ヴィレッジ」。オーディオファン向け物件だけでなく、プロのエンジニアも使う音楽スタジオの設計も多数手がける同社が培ってきたノウハウが投入された“音のいい部屋”でオーディオを楽しもうというイベントだ。
月に1回のペースで定期的に開催されている本イベントだが、今回からその構成を少々変更。前回までにアンケートなどで寄せられた参加者からの質問や意見をもとに部屋づくりのポイントを考える、「オーディオルームの音響アラカルト」と題したパートが加えられたほか、「アコースティックラボが注目する機材紹介」、そして過去の防音工事の実例紹介という3つのパートから成る構成となった。
そして、そんな「アラカルト」パートで取り扱われた今回のテーマが「高音がきつい!部屋の吸音とスピーカーの関係について」というもの。「高音がきつく感じ、トゥイーターが原因かと考えてスピーカーを買い替えたが問題は改善されなかった」という悩みを相談されたのだという。
相談者からの依頼を受け、アコースティックラボは相談者の部屋の測定を実施。すると、500Hzの平均吸音率は0.4以上と、業務用のスタジオ並みに残響が短く、非常に響きが短い部屋であることがわかったのだという。
コンサートやオーディオ再生など音楽聴取における充実感の背景には、壁や天井からの反射音や残響音といった間接音が大きく関係している。しかし、この相談者の部屋では吸音によってその間接音の割合が減り、結果として直接音ばかりを聴く状態になっていたわけだ。
そのほかにも、この部屋は高音域の響きが低音域に比べて長く、その低音域の響きの少なさ、つまりは周波数帯域ごとのバランスの悪さが目立っていた。低域の物足りなさを補おうとアンプの出力を上げると、それに伴い高音域がきつく感じる、という悪循環に陥っていたと思われる。
音がいい部屋をつくるためには「中音域に比べて低音域の響きが長い」一方で、「中音域に比べて高音域の響きが短い」ことが良いとされている。だが相談者の部屋は真逆の特性になってしまっていた。
こうした問題に対し同社は、「まずは響きの周波数バランスの適正化、それから吸音材を減らして全体的にライブ(音が響く)にしましょう」とアドバイス。このアドバイスに沿って工事を行ったところ、見事に問題が解決されたのだという。
同社の鈴木代表は「吸音対策をすることが音響設計だと言われることもあるが、そうではない」とコメント。「吸音材は音響設計においては薬のような存在。薬は飲みすぎるとかえって毒になる。吸音も最小限にとどめるべきだ」と解説した。なお、こうした改善の過程は、アコースティックラボの公式レポートでも詳しく解説されている。そちらも参照してほしい。
■注目の平面スピーカー「FAL」ブランドの魅力にもフォーカス
上記「アラカルト」パートに続いては、「アコースティックラボが注目する機材紹介」と題するパートを実施。今回はFALブランドの平面振動板スピーカーのデモが行われた。
FALの平面スピーカーは、内部に空気を均等に含んだ特別製振動板や、角型のボイスコイルなどを採用したというもの。FALの代表取締役で開発者の古山氏も登場し、現在一般的なコーン型スピーカーと比べて位相ズレの問題が起きず音の再現性に優れるとされる平面振動板スピーカーの魅力を紹介した。
古山氏は、上記の特別な振動板を始めとする様々な工夫により、一枚の振動板でも低音域・中音域・高音域がきちんと分離するスピーカーを実現したと説明。同社の平面スピーカーでなら生演奏を聴いているかのような体験を味わえるとアピールした。
なお、参加者からの相談をもとにした「アラカルト」、同社の注目機材紹介、そして後述する実例紹介という3パート構成は今後のイベントでも続けていく予定。注目機材紹介パートでは、自身も大のオーディオファンである同社鈴木代表や、数多くのオーディオファン向け物件を手がけた同社スタッフが注目する様々なブランドのオーディオ機器を試していくという。
■実例を挙げてマンションでの“音がいい部屋”構築術を解説
イベントの最後には、同社が過去に手がけた防音工事の実例を紹介。今回はマンションの間取りを変えてオーディオルームを構築した例が取り上げられた。
一般的にマンションは戸建てに比べ天井高が低く、オーディオにとっては不利な条件。しかし、部屋の縦・横・高さの比率や剛性に配慮しながら工事を行い、オーナーもしっかり満足できる部屋を完成させられたことを紹介した。
なお、この部屋では壁の仕上げに杉板を使用。ベースとなる部分の剛性が高い壁であるため、表面に杉板を使っても振動したりしてしまわず、音がポンつく感じにならないという。
同社スタッフの草階氏は「柔らかくて角が立たない、非常にまろやかな音の響きの部屋になった」と紹介。「我々の蔵前ヴィレッジでは漆喰壁にしている影響か、この物件と比べると若干硬質な響きになっている。壁の表面材の違いで音の印象も変わってくると感じた」と言葉を続けた。
この物件のように、マンションを改装してオーディオルームをつくる例は多いとのこと。「子供が独立して部屋が空いたので間取りを変えてオーディオルームにしたり、全体的にリフォームするタイミングで一緒にオーディオルームつくろうというケースもある。こうしたケースでも、リフォーム業者とコラボして防音工事を行うなど、様々な状況にあわせてオーディオルームをつくれるのが我々の強みだ。何かあればぜひ相談してほしい」とアピールした。
なお、次回のAcoustic Audio Forumは7月27日(金)・28日(土)に開催。テーマは『「SPが生き生き鳴らない???」と「部屋の響きのバランス」』。「アラカルト」パートではスピーカーの音と部屋の響きのバランスの関係性についてレクチャーする。
また、同社が注目する機器紹介のパートでは、スフォルツァートのデジタルネットワークプレーヤー新モデル「DSP-Pavo」をピックアップ。スフォルツァート社長の小俣氏の解説とともに製品を体験することができる。
そして実例紹介パートでは、木造2×4の新築住宅で、16帖の部屋を12.5帖の完全防音仕様にした防音工事について紹介する。そのほか詳細は公式サイトで確認可能。公式サイトのメールフォームおよび下記問い合わせ先から参加申し込みを受け付けている。
【問い合わせ先】
アコースティックラボ
担当:草階(くさかい)氏
TEL/03-5829-6035
E-mail/kusakai@acoustic-designsys.com