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話題のモデルの比較視聴も!

テレビの音も強化、予算10万円台から始める「リビングオーディオ」のススメ

公開日 2021/10/02 07:00 生形三郎
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■プレーヤーやヘッドホンの導入でもっとオーディオを楽しむ

先程も少し触れたが、HDMI搭載アンプは多彩な入出力による拡張性を持っているので、ここにひとつ機材を加えることで、さらに充実したオーディオライフを実現することができる。たとえばCDをすでにたくさん所有しているならばCDプレーヤーを追加、レコードを聴きたいならばレコードプレーヤーを追加する、といったことだ。音を出しづらい夜間のためにヘッドホンを用意しておいても良い。


ハイレゾを再生するためには、「Soundgenic」などのミュージックサーバーがオススメだ。また、近年注目されるDAP(デジタル・オーディオプレーヤー)の多くはメディアサーバー機能を搭載しており、自宅のWi-Fiと接続することで、アンプのネットワーク機能を利用して再生することができる。外出先ではヘッドホンで、自宅ではスピーカーで、といった楽しみ方もできるのだ。モデルによって搭載する入出力端子は異なるので、アンプを導入する際は将来的な拡張も想定して選ぶと良いだろう。

アイ・オー・データ機器の「Soundgenic」は、実売3万円台でオーディオサーバーの必要な機能をすべて搭載する、まさに入門にうってつけの一台。HDD/SSD搭載モデルをラインアップする

ASTELL&KERNなど、Androidベースで構成されるDAPの多くはメディアサーバー機能を搭載しており、同一ネットワーク上のプレーヤーから参照して再生することができる。もちろんBluetooth再生も可能

■注目3ブランドのHDMI対応アンプをテスト

それでは、注目のHDMI搭載アンプを組み合わせて視聴したインプレッションと、用途や好みに合わせたオススメプランをご紹介しよう。

ここでは、3機種のAVアンプ/ステレオアンプを用いて、NETFLIXの映画コンテンツ、CD再生、レコード再生、ハイレゾ再生を比較試聴した。なお、NETFLIX再生には「Apple TV 4K」を、スピーカーにはモニターオーディオのエントリーモデル「Bronze 50-6G」を使用。CDプレーヤーはデノンの「DCD-600NE」、レコードプレーヤーにはオーディオテクニカの「AT-LPW50PB」、ハイレゾ再生にはアイ・オー・データ機器の「Soundgenic」を使用。いずれも実売5万円程度で入手できるエントリーモデルをチョイスしている。

テレビには、パナソニック・ビエラの4K対応55型テレビ「TH-55JX900」を使用。テレビを除くと、おおむね30-40万程度で本格的なリビングオーディオが実現できる

■マランツ  AVアンプ「NR1711」

NR1711は7.1chサラウンドまでに対応するAVアンプで、8K/60pや4K/120p映像信号のパススルーに対応するなど最新の機能が豊富だ。NETFLIXでの映画再生を「NR1711」とモニタオーディオのスピーカーで鑑賞してみると、当然だが、明らかにテレビの内蔵スピーカーとは桁違いの迫力が楽しめる。臨場感が圧倒的に高まるため、没入度が大幅に違う。まるで映画の世界に入り込んだようで、ついつい作品に惹き込まれてしまう。やはり音が持つ影響力は絶大だ。

マランツ「NR1711」はAVアンプとしては異例の「薄型」アンプとして大ヒットを飛ばしている(定価:103,400円/税込)。2ch再生を追求したい場合は同サイズの「NR1200」(定価:88,000円/税込)もおすすめ

CD再生は、ヴォーカルがセンターにクッキリ定位すると共に、演奏空間の見通しがよく、美しい余韻を楽しむことができる。レコード再生では、一般的なレコードのイメージにピッタリな、温かみのある優しい音質が心地よい。一転して、ネットワーク再生では、上品ながらも鮮度がよい音が飛び出した。この辺りはネットワークプレーヤーでも高い評価を得ているマランツならではだろう。

全体的に、メリハリがありつつも滑らかで上品な音で、マランツのサウンド傾向が良く出ている。音楽性溢れる上品で洗練された音質を楽しみたいなら、やはり本機をオススメしたい。とりわけ空間表現が得意なので、クラシックなどアコースティックソースを好む方は特にオススメだ。

■デノン AVアンプ「AVR-X1600H」

デノンの「AVR-X1600H」は、マランツと比べると定価ベースで3万円ほど安いが、アンプの出力はマランツよりも定格で30Wほど大きく、より大きな音を余裕を持って再生することも可能だ。また、音作りの傾向も大きく異なっている。こちらもNR1711と同じく7chまで対応のAVアンプとなる。

デノンのAVアンプのエントリーモデルとなる「AVR-X1600」(定価:65,450円)。エントリークラスながら7.2chのアンプを搭載、Dolby Atmos/DTS:Xといったサラウンド機能、eARCなども搭載されている

映画再生は、実に明瞭かつクールなサウンドだ。背景の静けさを感じさせると共に、低音が強力で効果音などがメリハリ良くダイナミックに再生され、緊張感や迫力が伝わってくる。まるで映画館で映画を見るかのように、グイグイとこちらを集中へと引き込む冴えた音なのだ。

CD再生では、全ての音が明瞭に前へ前へと出てくる印象だ。奥行き方向への空間表現は控えめだが、逆にすべての音が一律で前に出てくるので、音楽の内容が一聴して掴みやすい。そして、やはり低域も迫力がある。レコード再生は、明瞭でクリアなサウンドを楽しませながら、やはり音が積極的に前に出てくる印象だ。ネットワーク再生も、ワイルドにメリハリを効かせた音で、迫力あって音楽が実に楽しい。

総じて、デノンのアンプは迫力豊かなエンターテインメント性溢れるパワフルサウンドが好みの人にオススメだ。とりわけ、映画を再生したときのクールで緊張感ある表現は、まるで映画館で楽しむかのような非日常性を堪能することができる。音楽も、迫力豊かで実に積極的で、聴くだけで元気を貰うサウンドだ。

■オンキヨー ステレオアンプ 「TX-8390」

最後のオンキヨー「TX-8390」は、クラウドファンディングで販売展開しているモデル。今回の3機種の中では、唯一2ch専用モデルとなる。それだけに、ハイファイ・ステレオ再生に特化しており、最大で実用出力が200Wという大きなパワーを誇る。

オンキヨーの「TX-8390」はクラウドファンディングで販売しているモデル(販売スタート価格:89,800円〜)。オンキヨー独自のダイナミックオーディオアンプテクノロジーをベースに、200Wの出力を誇るステレオ専用アンプとなっている

映画再生では、全ての帯域が均質かつクリアに聴こえる印象で、誇張や強調がなく、演者のセリフの細かい表情までもがよく分かる。ある意味でもっとも冷静かつ客観的なサウンドだと言える。一聴して、ハイクオリティな音だ。

CD再生でも、やはり音域を問わず均質で、情報量が多い。クラシックソースでは、ステージの様子を隈無く見渡せる描写力が印象なのである。また、低域方向がしっかりと引き締まっていることも特徴。これは、着実なスピーカー駆動力の賜物だと言えるだろう。レコード再生では、やはりこれまでで最もディテール表現が巧みで、忠実性の高い音と言える。高域方向が幾分華やかな「Bronze 50-6G」スピーカーの特徴も良く引き出している。

ネットワーク再生では、楽器や空間の立体感など、音の解像力が高く、ハイレゾ音源の情報量がしっかりと出ている。バランスも良く、まさにオールラウンダーだ。加えて、ネットワーク再生時は、音楽ソースのブラウジングやジャケット表示など、GUIのデザインが最も見やすく、快適な操作感を持つ事も大きなポイントと感じた。

今回の3機種の中では、唯一2ch専用機ということもあり、それだけ性能はステレオに凝縮されていた印象で、音響性能としては頭一つ抜きん出ていた。とりわけ、スピーカーのグリップ力が秀逸だ。あらゆるソースを客観性豊かに、情報量豊かに再生したい人にオススメ。他の2機種に比べ音色の個性は抑えられているが、その分、接続機器のキャラクターをしっかりと描き出していた。



以上、HDMI搭載アンプ3機種を同一環境で様々なソースを楽しんでみたが、やはりそれぞれに傾向の違う音を楽しむことができた。映像系の細かい機能(マランツのみ8K/60pや4K/120p映像信号のパススルーに対応していたり、マランツとデノンはゲーム機などとの接続で有用な低遅延機能「ALLM」に対応していたりなど)や、アンプの搭載チャンネル数、対応するサブスクサービスなどに違いはある。機能面での差異もさることながら、オーディオ的に楽しむためには、やはり「音質」でも納得して選びたい。

HDMI搭載アンプとスピーカーを新たに導入するだけで、リビング空間のエンタメ・クオリティが飛躍的に向上することを、身を持って体感することができた。これを機にあなたも、テレビ周りにアンプとスピーカーを導入して、おうち時間の大幅な快適性アップにトライされては如何だろうか?

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