【特別企画】1947年製のヴィンテージ300Bで試聴
「300B」の真空管でロックの魂にどこまで迫れる!? エアータイトのアンプでロック名盤を聴きまくり!
■『胸いっぱいの愛を』のギターリフで大興奮
編集部 お話していたらアンプも温まってきたみたいですし、色々聴いてみましょうか。
河合 最初はロック名盤の定番中の定番ということで、レッド・ツェッペリンの2ndアルバム『レッド・ツェッペリン II』(1969年)から「Whote Lotta Love」行きましょう。ここにUS盤、UK盤、国内盤のオリジナルがそれぞれあるので聴き比べましょう。
河合 これはギターのリフのザラつきからして違いますね。
田中 僕はUS盤が一番好きかな。芯の太さとかガッと来る感じとかね。ツェッペリンはイギリスのバンドだけど、でもレコード会社のアトランティックはアメリカの会社なんだよね。ロックバンドとしてこうあって欲しい、というのがUS盤の生きの良さに出ている気がする。国内盤は残念ながらちょっと薄い感じがしますね。
河合 僕はあえていうとUK盤が好きかな。ちょっとウェットな感じとかね。
田中 ロックは細かいの聴かなくていい、っていう人もいるけど、音楽の作り手はめちゃこだわって作っているんですよね。たとえばギタリストならば、その音を出すためにギターを選んだりアンプの球を変えたりしている。だから、聴く側だってそのこだわりをちゃんと聴いてあげないといけないと思うんです。
河合 エアータイトのアンプは、ここまでしっかり描き分けるってのはすごいよね。
田中 あとボンゾのキックドラム。これもツェッペリンでは大事で、このドクドクって部分が出てこないと面白くない。ドライブ能力っていうんですかね。
三浦 300Bのアンプは、Negative Feedback(負帰還)をかけないとダンピングファクターが弱いんです。かけないほうがいいっていう意見もあるんですけど、でもうまくやると、300Bの良さと、制動の効いた低域のパワー感も味わえる。そんな思いでこのアンプも設計しています。
■フェイバリット盤を引っ張り出しての聴き比べ大会に…
河合 ちょっと俺本気になっちゃいそうだな(笑)。待ってねいま探すから…今度はスティーリー・ダンの『Aja』(1977年)から「PEG」、聴いてみましょうか。
河合 !!!! もうこれ超楽しい。なんだろうな、ちょっと失礼かもしれないけど、圧迫感がなくて楽しく聴ける感じ。
田中 いかにもザ・オーディオっていう感じじゃなくて、音楽に自然に入れる感じはありますよね。
三浦 一応我々ハイエンド・オーディオメーカーと言っておりますが、あくまで製品づくりとしては、音楽を楽しく聴けるものを目指しています。それは創業以来のコンセプトです。
河合 アップテンポの弾む感じとか、すごく揺さぶられますね。
三浦 でもまったりはしていなくて、切れ味はものすごくあります。これ最近、私が九州のオーディオショウに行った帰りに買ったザ・ナックです。これも改めて聴き返したら、新人バンドのフレッシュさも新鮮だし、ちゃんとしたオーディオで聴くと新しい発見があったんです。
田中 「My Sharone」(1979年)ね、これ大ヒットしちゃったのでバカにされがちなんだけど、音もいいんですよね。
三浦 これもオーディオショウではかけづらいんだけど。でも聴くとめちゃくちゃ楽しくなりますよね。
河合 じゃあ次は俺のセレクトでコレ。グレッグ・マティソンのライブ盤から「Bomp me」(1982年)。コレは何故かわからないのだけれど、日本盤しかないんだよ。ジェフ・ポーカロがドラム叩いてるんだよね。
田中 ポーカロのライブ盤ってあんまりなくて貴重だよね。ポーカロがビシバシ叩いているのがいいねー! 叩いてる姿が見える感じ。
河合 機材の力なのかなこれ。めちゃくちゃ楽しいね。次は邦楽で、山下達郎の30周年記念「クリスマス・イヴ」(2013年)。
田中 これもすごいねー。
編集部 達郎さんの声の感じもいいし、バックミュージシャンたちがひとつひとつなにやってるか全部分かるってのもすごい。
田中 さっきもアンプはワット数じゃないって話出たけど、ホントにそうだね。これもB&Wのノーチラス802で、決して鳴らしやすいスピーカーではない。だけど、良いアンプだとスピーカーもちゃんと答えてくれる、潜在能力が引き出される感じはありますよね。
河合 全体的にバランスがいい感じもしますね。
三浦 実は今回のプリアンプ「ATC-5」もすごく効いていると思います。エアータイトでは、プリとステレオパワーという、コンパクトでシンプルな構成でも良い音で鳴らせることが大切だと思っています。
編集部 私からもひとつ…多分90年代に私が一番聴いたアルバムでレッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)の『Californication』(オリジナル:1999年)です。これのピクチャーヴァイナルをこないだ見つけて買ってしまいまして(笑)。ここから「Scar Tissue」行きましょう。
河合 あ、それもオリジナル盤あるから聴き比べようか。
田中 この時代って一番レコードが不遇の時代で、ほとんど出てなかったんだよね。
編集部 これは…オリジナル盤に完敗ですね…。
三浦 躍動感とか生々しさが全然違いますね。
編集部 新しい盤は、整いすぎてしまっているというか、ギターのザラつき感とか、パワー感とか、フリーのベースの沈み込みとか、やっぱりもっと欲しいですね。
三浦 レコードはタイムカプセルみたいな感じがありますね。その当時の自分の空気とか思い出とかもまとめてパッケージされているというか。その時代に一気に連れて行かれる感じもします。
■真空管アンプはデザインもカッコよくなくちゃいけない
田中 オーディオってそもそもが好きな音楽を聴くための道具であるわけで。繰り返しになるけど、僕はロック世代にもっとオーディオを楽しんでほしいなって思っているの。いつまでもジャズとクラシックばかりでは、せっかくの世代が離れてしまいますよね。
三浦 今回の聴き比べはめちゃくちゃ面白かったです。エアータイトのアンプがロックだけしか聴けない、と思われてしまうとそれもまた違うのですが、こういう音楽もうちのアンプは全然イケる、という思いがまた強くなりました。
田中 エアータイトはデザインもいいですよね。この艶感も出すの大変でしょう。
三浦 真空管アンプはデザインもかっこよくないとだめだと思っています。古典的なルックスですけど、ちゃんと信号の流れに沿って外装の設計をしています。これも先代からの言い伝えというか、設計はちゃんと理にかなってないと行けない。合理的に設計されたものがすなわち美しい、と。
田中 たしかに、配線を見れば音が見えてくるところありますよね。
三浦 裏蓋を開けたときに中がきれいだったら嬉しいじゃないですか。それと、我々のポリシーとして、いまだに創業以来すべてのアンプもメンテナンスが可能です。基板もほとんど使っていないので、パーツを交換するだけでずっと使い続けられる、文字通り一生モノだと思っています。
田中 河合さん、どう一台?
河合 どうしよう…オレ…マジで欲しいかも…。
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