評論家は「曲のどんなポイント」を聴いている?
ヒゲダン、藤井風、レッチリ……オーディオ評論家が試聴に使った2022年の曲はこれだ!【Part.2】
秋山先生が執筆したレビュー記事はこちら
(Amazon Music, Apple Music/44.1kHz/16bit)
アニソンといっても定義はいろいろだが、ここで言うのはキャラソンやアニソン歌手が歌う楽曲のこと。私はこれまで機器のレビューやシステムの調整にアニソンを使ったことが無かった。使える音質のアニソンに出会えなかったからだ。
『明日ちゃんのセーラー服』は原作のファンだったことから観始めた作品だが、オープニングでこの曲が流れた刹那、これならいけると確信した。ただし、この曲は単品ではCD化されておらず、ロスレスで聴くには現状Amazon MusicとApple Musicしかない。
おかげで、今年はサブスク再生環境の強化に大枚をはたいてしまったが、やればやるほど、爽やかな疾走感と裏拍のバンドサウンドにグイグイと惹き込まれてしまうのだから仕方がない。アニソンとサブスク。これからオーディオ業界が真摯に向き合わねばならないテーマのベンチマークとなる1曲だ。
(flac/96kHz/24bit)
筆者が最も聴くジャンルはJ-POPだ。高音質J-POPの探求は私のオーディオ・ライフワークと言っても過言ではないが、やはり宇多田ヒカルの出現は衝撃的だった。特にゴウ・ホトダとテッド・ジェンセンのスタジオワークが冴え渡る初期のアルバム3部作は、オーディオマニア御用達の優秀録音として20年以上愛聴されている。ただ、その後は音楽性が深化する一方で、音質面では暗中模索が続いていたと思う。
その長いトンネルからようやく脱したのが、最新アルバム『BADモード』だ。なかでも「キレイな人 (Find Love)」はクオリティチェックにうってつけ。ボーカルとリズムトラック主体のシンプルな構成ゆえに、機器の性能だけでなく、セッティングの精度まで顕にしてしまう。音の視覚的解像度をどこまで上げられるか。じつに挑戦しがいのある楽曲だ。
(flac/48kHz/24bit)
1人3曲までとのことだが、この2曲はいつもニコイチで使用していることからご勘弁いただきたい。才能溢れるアーティストなのはわかっていたものの、なかなか好きになれなかった藤井風だが、テレビCMで「きらり」を聴いて全面降伏。
使い方としては、まずは「きらり」でシステム全体の鳴り方を確認。リズムがもたつき、グルーヴ感が出ない場合はどこかに問題があるので、それを「まつり」で検証する。J-POPには珍しく、巨大な音のキャンバスを使ってローエンドからハイエンドまでフラットに収録された楽曲なので、原因が特定しやすい。
いわゆる海苔波形だが、昨今はプラグインの進化により聴感上のダイナミックレンジが確保できるようになってきた。今回挙げた楽曲はその成功例だ。フラットトランスファー信者には、世の中にはワカメよりも美味しい海苔があることを知ってほしい。