評論家は「曲のどんなポイント」を聴いている?
ヒゲダン、藤井風、レッチリ……オーディオ評論家が試聴に使った2022年の曲はこれだ!【Part.2】
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リファレンスとしてよく使った2022年の新譜を紹介せよとのリクエストだが、自分の基準でこれはありえない。いろいろなシステムでしつこく聴いて、聴いて、飽きるのを通り越した曲でなければリファレンスとして使わないからだ。一概には言えないが、通常は初めて聴いてから2年、どれほど気に入った曲でも1年以上の仕込み期間が必要になる。だから今回紹介するのはあくまで「数年後のリファレンス候補」ということをご承知おきいただきたい。
アヴィシャイ・コーエンのECMにおける5作目のリーダーアルバム『ネイキッド・トゥルース』からチョイス。このアルバムは作曲、演奏、録音いずれをとっても高水準だが、ジヴ・ラヴィッツの浮遊し拡散するパーカッションと細やかなブラシ捌きからスタートするパートVIが、オーディオ的にはひとつのベンチマークになるだろう。
Amazon Music配信の音源(48kHz/24bit)を聴いているが、180グラム重量盤のヴァイナルも気になるところ。
Vulfpeckの新プロジェクト「Wong's Cafe」からピックアップ。ストリーミングではコーリー・ウォン名義での配信だが、紛うことなきVulfpeck、しかも(Vulf Valutシリーズでありながら)すべて新曲という変則的なアルバムに含まれる、ラグタイムブルース調の小品。
ウォンお得意のストラトによる正確無比な高速カッティングはないものの、Vulfpeckらしい生録感漂う音場の雰囲気を再現したい、と思わせてくれる曲だ。
日本人でボッサが似合うウィスパーボイスといえば彼女、という存在のミズノマリ氏が歌うParis Matchのカバーアルバム『OUR FAVOURITE POP II 〜TOKYO STYLE〜』から。
ブレスノイズはわずかに残すもののリップノイズは聴こえそうで聴こえない、という絶妙なさじ加減の録音が繰り返し聴く音源としてちょうどいい。山下達郎氏のオリジナルもいいが、アコースティックなアレンジが施されたこのカバーも秀逸。