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評論家は「曲のどんなポイント」を聴いている?

YOASOBI、ヒゲダン、上原ひろみ……オーディオ評論家が試聴に使った2023年の曲はこれだ!【Part.1】

公開日 2023/12/29 06:30 山本敦/高橋敦/草野晃輔
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草野晃輔先生が選ぶリファレンス曲
草野先生が執筆したレビュー記事はこちら


Official髭男dism 「TATTOO」



今年も多数のタイアップ曲を手掛けたOfficial髭男dism。「TATTOO」も、TBS系ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』の主題歌で使われた。

この曲では、低域の再生力とボーカルの表現力を測れる。低域は、イントロの途中から始まるアタック感のあるベースとドラムが分かりやすい。粘りあるリズミカルな音色でボーカルを邪魔しなければ、音の密度が高くのっぺりしやすい低域をきちんと描写していると分かる。低域を誇張するタイプだと音が強くボーカルを喰ってしまい、逆に弱いと声が前に出すぎてバランスが悪く感じられる。

ボーカルはイントロが終わってから最後までずっと続き、間奏もない。低域の再生力があるとボーカルが単調に続くように聴こえがちだが、中高域で微細な表現ができるならパートごとに繊細なビブラートやブレスワークが展開されていると分かる。

TOMOO 「Super Ball」



音楽サブスクサービスには、おすすめ楽曲を知らせてくれる「レコメンド」機能がある。ここから、毎年多くの楽曲に新しい曲に出会っている。その中で今年どハマりしたのが女性シンガーソングライターTOMOO(トモオ)の「Super Ball」だ。9月リリースの1stアルバム『TWO MOON』の収録曲となり、CRCK/LCKSのリーダーでサックス奏者の小西遼がプロデュースしている。

聴きどころは、センス溢れるワーディングの歌詞を、力強く華のある声で紡いでいくボーカル。女性ボーカルとしては低めの声質だが、ときにささやくように息を多めに混ぜたり、ファルセットを巧みに織り込んだりと声色を繊細に操り、曲の世界観を創り上げていく。

コーラスが重なるサビは、一度聴くとしばらく耳に残る印象的なメロディーが音場を支配する。音像が明瞭で中高域の表現力が高い機器で聴きたい曲だ。

みきとP 「少女レイ」



2018年リリースの夏っぽいボカロ曲を集めたコンピレーションアルバム「EXIT TUNES PRESENTS Vocaloseasons feat.初音ミク Summer」の収録曲が初出。若者を中心に人気を集め、同時期にYouTubeで公開されたMVは人気を集め2023年12月時点で3,100万回を超えている。

ピックアップしたのは、「レコードの日 2023」に発売されたこの曲の12インチシングルレコード。45回転で情報量が多く、音の透明感と浸透力は筆者がここ数年で聴いたレコードの中でもトップクラスだ。

テストに使いたいのがB面のみきとP歌唱Ver。アコースティックギターを用いたトロピカル調の爽やかな演奏と対比する、「僕」が恋心を抱いた「君」を追い詰めていくドロドロとした歌詞の描き分けが明瞭なら、素直で繊細な表現に長けたサウンドだと判断できる。曲として調和がとれているものの、笑顔のまま人を殴るような狂気を帯びて聴こえるはずだ。筆者も聴く度に不思議な感覚になる。(12インチアナログ盤を選択)


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