ゲーミングに特化した映像モードをマスターモニターと比較!
BenQがゲーミングプロジェクターを牽引、台湾本社に新設された開発拠点「ゲーミングルーム」に潜入取材
■ゲーミングモデル「X-3」ラインで設置性と使いやすさを追求
次にBenQゲーミングプロジェクターの戦略と製品ラインナップについて教えてくれたのが、主に「X500i」を担当したプロダクトマネージャーのLarry Kao氏。
BenQがゲーミングプロジェクターでユーザーに提供したいのは「究極の没入感」。単に大きな映像で映し出すという事ではなく、ゲームの世界観へ没入できるよう、視覚と聴覚を満足させるのがゴールだという。フラグシップライン(型番が4桁)で、現行モデルでは4K/HDR対応でLED光源による3,300ルーメン(ANSI)の輝度性能を持った「X3100i」が相当する。ハイエンドゲームルームを想定し、映画館レベルの画質と音質を備え、オープンワールド系ゲームの世界に没入できるとしている。
そのため、製品の基本機能として、天吊り設置で投写位置が適度な高さに調整できるよう-20%もの光学レンズシフト機能を持たせることに。レンズシフトではなく台形補正でも良いのでは?と思ってしまうが、台形補正ではデジタル的に映像を変形するので、画質と明るさの面で損失が生じ、また処理のために低遅延モードが利用できなくなるのが問題だという。レンズシフトは光学機構が必要で製品も高価になってしまいがちだが、ハイエンド環境で最高のゲーム体験を目指し、妥協の無い姿勢と一貫性にBenQのこだわりを感じた。
「X-3」と呼ぶのは型番が3桁の下位ラインで、現行モデルでは「X500i」(4K/HDR/2,200ルーメン)と「X300G」(4K/HDR/2,000ルーメン)が相当する。自室/個室や部屋の一角など「パーソナルスペース」で比較的ライトなゲームをプレイする想定で、設置性を重視しているという。
両モデルともLED光源でコンパクトであることに加え、特に「短焦点」が共通のポイント。プロジェクターを使いたい時だけ、プレーヤーの前にポンと置いて直ぐにストレスなく利用できるように工夫を心掛けている。特に「X300G」は部屋から部屋への移動も想定し、設置性の簡便性を重視。電動ズーム機能を備えるほか、水平傾きを自動補正する機能も搭載。
ゲームモード(RPG・FPS・SPG/スポーツなど)の変更でサウンドモードも連動して切り替わるなど、ユーザーの声を反映しつつ、より使いやすさを追求して改善を行ったきたという。Larry氏は、「現時点でこれほどゲーミングユーザーに寄り添った製品は、BenQのXシリーズ以外に見当たらない。」と胸を張る。
■長年の高画質技術を地盤にマッピングを最適化
映像関連の詳細については、主にチューニング方針について、プロジェクター製品の技術担当であるEric Tsai氏にお伺いした。同氏はBenQプロジェクターが一貫して訴求する「CinematicColor」(正確な色再現)の番人とも言える経験豊富なエンジニアで、日本のテレビにも出演した経験を持つ。
まず前提として、ゲーミングプロジェクター「X Series」も、ホームシアター用モデルと同等の水準で「CinematicColor」を貫いている。ゲーミングプロジェクターだからといって特殊なことはせず、BenQが培ってきた高画質技術が惜しみなく投入されていると理解できる。
特に短焦点モデルでは投写光をワイドに拡散するため、四隅の輝度落ちや歪みが気になりがちだが、レンズの主要部に造形の自由度が高いプラスティックレンズを用いて非球面設計を高度に最適化したり、前玉(一番外側のレンズ)を大口径にするなど、映像の均質性(ユニフォーミティー)に配慮。スペック値として表し難い部分への拘りも、BenQの良心を感じる部分だ。
プロジェクター製品として骨太であることは理解できたが、「X Series」ならではのポイントについて、Eric氏によると「パレットの使い方」にこだわりがあるという。現在、コンソールゲーム機はHDR10対応で色域もBT.2020と広い。対して映像機器は光源の制約などから未だ追い付いていない。その差はダウンコンバート方向でマッピングする必要があるのだが、ゲームのタイプに応じて、その世界感がより引き立つよう最適化しようとするのが「パレットの使い方」という事のようだ。
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