ゲーミングに特化した映像モードをマスターモニターと比較!
BenQがゲーミングプロジェクターを牽引、台湾本社に新設された開発拠点「ゲーミングルーム」に潜入取材
■ゲーム用のチューニングとエンジニアの堅実な画作りがマッチ
今回は「X3100i」を例に、ソニーのマスターモニター「BVM-HX310」と横並び比較できる環境で、 Eric氏から直々にデモを交えて解説してもらった。
まずはRPGゲームに適した「RPG」モード。映画などと同様に、映像の世界が現実かのようにリアルに感じられるかがポイントと言えるだろう。例えば赤く焼け落ちそうな空。X3100iは直視型のマスターモニターに対して輝度とコントラストの面で当然敵わないが、実際に見比べるとルックは非常に近い印象。
X3100iが備えるDCI-P3の色域性能を活かしつつ、「パレットの使い方」の巧みさを実感できた。コントラスト調整も絶妙だ。Eric氏は色彩のチューニング時にも、マスターモニターBVM-HX310をリファレンスとしているという。
次にFPSゲームに適した「FPS」モード。これは一般的に暗部に潜む敵が見えやすいよう、暗部諧調を明るく持ち上げるもので、X3100iも同様の方向。暗部も明部を破綻なくコントロールされていて、ナチュラルさをキープしているのは、何度も慎重に検討を重ねた成果だろう。
「SPG」は、野球、バスケットボール、サッカー向けに用意されたスポーツゲームモード。明かりのある部屋でのプレイを想定し、色が洗い流されないように逆補正的にビビッドにする方向だ。しかし、ここで難しいのはチームカラーの再現。ファンの心理を察すると正確さが要求される。デモはバスケットボールだったが、ロ氏ゼルス・レイカーズの紫も違和感なく、それでいて少しビビッドで映える印象。これならコアなファン層も納得だろう。
「RCG」は、ドライビングシミュレーションを想定したレーシングゲームモード。画作りのポイントとしては、実車が登場するのでリアルさを追求しつつも、プレイがよりエキサイティングになるよう、少し色を特徴的にする方向。実際に映像を見ても正にその通りの印象。フェラーリの赤は少し拡張されつつも、明度を抑えて彩度を高める方向なので、色味としては派手に浮いたようにならず、深みとして感じられる。気分が“アガる”赤だ。
総じて、BenQが磨き上げてきた映像の基礎技術に、ゲーミング用ならではのチューニングと確かなエンジニアの画心が相乗効果を発揮していると感じた。今回紹介した常設ゲーミングルームの存在も一役買っていることだろう。
■ユーザー調査が徹底的で、ディティールの細部にもこだわる
数々のこだわりを感じる「X Series」だが、実際のところ、どれほどユーザーに寄り添っているのだろうか? そこで特に使い勝手を重視しているという「X300G」について、具体的な施策を、「X300G」を担当したプロダクトマネージャーのSophie Chen氏より解説してもらった。
まず驚いたのは、徹底的なユーザー調査。ターゲットユーザー層の住居形態や間取りの把握はもちろん、実際にユーザー宅に訪問して、設置や配線状況までも調査して製品に反映しているという。BenQは海外プロジェクターメーカーとして日本に支社を持つ数少ない企業のひとつであり、きめ細やかな対応もできる。
同社の調査によると、ゲーミングユーザーの40%が、7〜7.5畳のワンルーム賃貸住宅に住み、ほか、1DKや1LDKの場合は、DK/LDKをゲームのプレイ場所としているという。また、面白く感じたのは、東京の住宅事情は台北と似ている部分があるという点。USなどの巨大市場をターゲットとして開発された製品は、日本の住環境にしっくりフィットしないケースは多々あるが、台湾を拠点とし日本市場を重視するBenQ製品は、この点、安心できそうに感じた。
次に、製品のディティールへのこだわりにも感心。X300Gのデザインは、筐体の後方下部付近に突起がありそこが光るのがユニーク。筆者はガンダム風なのが気に入っていたが、その話をすると大いに盛り上がった。プロダクトマネージャーのDasun Lin氏によると、企画チームでデザインに関するアイデアを出し合い、最終的にBenQのデザイナーが落とし込んで完成したという。初期の紙製模型にも、その突起が巧妙に反映されていて、遊び心と大きなこだわりを感じた。
また、製品においては、突起部のイルミネーションに光ムラを感じないよう、ユニフォーミティーに気を付けて設計しているとの事で、こだわり度合いの深さにも感心した。
ほか、筐体天面の4方向のカーソル移動操作は、当初はボタン式を想定していたものの、最終的にはスティック式に。ゲーム機のコントローラーに慣れたユーザーにとってよりフレンドリーと考えたためだ。実際にゲーム機と比べると、見た目や操作間は、Nintendo SwitchやPlayStation5の中間的な雰囲気。この点も一般的にコストは上昇方向で、製品へのこだわりが窺えるポイントである。
細かな部分ではスタンドの形状も検討を経て決定。試作(3Dプリント)は、映像の高さを上下ともに調整できるようになっているが、設置状態の調査から、下方向は不要と判断し、最終的に水平から上向きのみに。このことで、スタンドがシンプルで製品としてもスマートに仕上がったと思う。
■ゲーミングモデルはメインストリームのひとつに
プロジェクター市場は一段落した感があり、「ゲーミング」を狙った製品はトレンドを追う一時的な流れのように思えたが、今回BenQがユーザーに対して「Details & Immersive」(=高画音質&没入感)という体験を提供しようという意気込みと、製品レベルでの数々こだわり、担当者の熱意に触れると、メインストリームに押し上げられる可能性を感じた。
また、ゲーミング製品の開発で得た知見が、ホームシアター用プロジェクターにフィードバックされる可能性もあるだろう。特に短焦点を含む設置性の改善は、家庭用プロジェクターに共通するテーマで、同社の力量にさらなる磨きが掛かったと想像できる。DLPプロジェクター世界シェアNo.1の地位に甘んじず、さらなる高みを目指すBenQの今後にも期待だ。
<取材協力>
●写真上段左より、
Larry Kao氏(Projector Product Manager of BenQ HQ)
Ariel Chen氏(B2C Marcom manager of BenQ APAC)
Patty Chen氏(Business Manager of BenQ HQ
Rick Yan氏(Gaming Projector Business Manager of BenQ Corp)
Dexter Lin氏(Projector Business line manager of BenQ APAC)
Sasha Huang氏(Projector Business line manager of BenQ APAC)
Ariel Chen氏(B2C Marcom manager of BenQ APAC)
●写真下段左より、
Eric Tsai氏(Projector Technology Manager of BenQ HQ)
Lesa Kao氏(Marketing Communication Head of BenQ APAC)
筆者
Sophie Chen氏(Projector Product Manager of BenQ HQ)
Dasun Lin氏(Projector Product Manager of BenQ HQ)