【第158回】ミヤザキタケルの気軽にホームシネマ
「めんどくさいから殺していい?」森田剛の怪演が魅せる、サイコキラー“森田”の狂気と哀しみ
サブスクで映画を観ることが当たり前となりつつある昨今、その豊富な作品数故に、一体何を観たら良いのか分からない。そんな風に感じたことが、あなたにもありませんか。本コラムでは、映画アドバイザーとして活躍するミヤザキタケルが水先案内人となり、選りすぐりの一本をあなたにお届け。今回は2016年公開の『ヒメアノ〜ル』をご紹介します!
『ヒメアノ〜ル』(2016年・日本)
(配信:U-NEXT)

発売元:株式会社ハピネットファントム・スタジオ
販売元:株式会社ハピネット・メディアマーケティング
「行け!稲中卓球部」「ヒミズ」などで知られる古谷実原作の同名コミックを、『空白』『ミッシング』などで知られる𠮷田恵輔監督のメガホンで映画化。平凡な毎日を送る清掃員の岡田(濱田岳)は、先輩である安藤(ムロツヨシ)が想いを寄せるカフェ店員・ユカ(佐津川愛美)との恋のキューピッド役を頼まれる。ユカが働くカフェへ向かうと、高校時代の同級生・森田(森田剛)と偶然再会する岡田。そこで、ユカが森田に付きまとわれているという話を耳にするのだが……。

森田剛が「森田」という役を演じているほか、濱田岳演じる青年の名が「岡田」であったりと、V6を通ってきている世代の方であれば思わずニヤリとしてしまう本作。ムロツヨシ演じる安藤のコミカルさや、岡田が見せる初々しい恋愛模様など、微かな不穏さを感じさせつつも、序盤は恋愛コメディ的な作品を目にしているかのような錯覚に陥ってしまう。が、やがて化けの皮が剥がれ、隠していた本性が明らかになるのは開始43分から。それを指し示すかのように、そこで初めて本作のタイトル、映倫マーク、R15+の表示が現れる。

舞台作品で磨き上げられた森田剛の怪演によって生み出される狂気が、目にする者の心を恐怖のどん底へと叩き落とし、作品の性質はガラッと変化する。何故森田はそのようになってしまったのか、岡田は森田の狂気から逃げ切ることができるのか……。その結末は、是非ご自分の目と心でお確かめください。濃厚濃密な内容にも関わらず、意外にも99分と尺が短めなのもGOOD!
(C)2016「ヒメアノ~ル」製作委員会
※本稿記載の配信サービスは執筆時点のものになります。
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ミヤザキタケル 1986年生まれ、長野県出身。2015年より「映画アドバイザー」として活動を始める。 宝島社sweetでの連載をはじめ、WEB、雑誌、ラジオなどで、心から推すことのできる映画を紹介。そのほか、イベント登壇、MC、映画祭審査員、BRUTUS「30 人のシネマコンシェルジュ」など、幅広く活動中。 |