ネットワークオーディオ、ノイズ対策の基礎知識(2)「LAN由来のノイズ対策編」
昨年秋にQobuzがスタートして以来、にわかに注目高まるネットワークオーディオ。しかし、ルーターやハブといった家庭内のネットワークを活用することから、これまでのパッケージメディアとはまた違った音質対策が必要になってきている。そこで、ネットワークオーディオを探求するにあたって重要ポイントを、ノイズ源ごとに分けて3回の集中連載としてお届けしよう。
第2回の今回は「LANケーブルを経由して混入するノイズへの対策アクセサリー」を整理してみる。

2025/03/12
まずは入れたい、オーディオグレードスイッチングハブ
周知のとおり、ルーターだけでは有線接続しきれない数のネットワーク機器を使用する場合に、LANポートを増設するために設置するのがスイッチングハブである。しかしネットワークオーディオの黎明期から、「スイッチングハブを介することで音が良くなる」「スイッチングハブを換えると音が変わる」ことがマニアの間で知られていた。
今では各アクセサリーメーカーから高音質をうたうネットワークオーディオ専用スイッチングハブが多数発売されている。それらは、接続したLANケーブルにノイズが混入するのを防ぐアクセサリーとしても位置づけられるのだ。
・English Electric「8 Switch」

筐体にノイズの防御と放熱性に優れるアルミダイキャストを採用。また回路やポート等にも高周波ノイズ対策を施すことでハブ自身が内部で発生するノイズにも対応する。そして高精度なTCXOクロックの搭載で、より安定した情報伝送を実現している。
・SOtM「sNH-10G」

8つのLANポートに加えてSFPポートを搭載しているのが最大の特徴のスイッチングハブだが、LANケーブルを経由して混入するノイズに対応するべく、特殊設計されたLANノイズフィルターを搭載している。
・日本テレガートナー「M12 SWITCH IE GOLD」

アルミ削り出し筐体を採用するだけでなく、LANポートに一般的なRJ45タイプではなく完全シールド型サークルコネクタ(M12 Xコード)を採用して、外来ノイズがLANケーブル内に混入するのを徹底的に防いでいる。
・Synergistic Research「Ethernet Switch UEF」

Synergistic Research社伝統の「UEF(Unified Energy Field)技術」と「EM Cell(Electromagnetic Cell)技術」が採用されている。「UEF技術」はさまざまな回路上で発生する異なる電磁界を、1つの理想的な電磁界で包み込みこむことにより音の雑味を排除する。「EM Cell技術」は基板内で発生する電磁界を「差動電磁界の誘導結合」によりRFやEMといった要素をコントロールする技術である。
・EDISCREATION「SILENT SWITCH OCXO 2」

主電源にはディスクリート設計のリニア電源を搭載し、OCXOクロック電源には超低ノイズLDO(Low Drop Out)レギュレータを採用している。ネットワークスイッチの設計では世界初となるグラウンド絶縁スイッチを実装し、接続した他の機器からのグラウンドノイズを容易に遮断可能であるのも見逃せない。
・akitsuko「SW0200」

「ネットワークリファイナー」とはネットワークオーディオの音質向上を目的とした2ポートのオーディオ用スイッチングハブのこと。LANポートそのものがノイズ源となり音質に大きく影響するため最小限の2ポートとした。他のネットワーク機器からのノイズを遮断し、内蔵の低ノイズ電源、高精度クロック、厳選したパーツで構成した回路による高品質なLAN信号がネットワークプレーヤーに供給される。
上記意外にも、DELAの「S100」「S1」、Silent Angelの「N8」「N8 Pro-CLK」など、ネットワークオーディオに力を入れるブランドの多くがスイッチングハブを展開している。家庭用のネットワークとオーディオ向けを切り分けるだけでも大きな音質の違いが生まれる。今最も熱いジャンルのひとつと言えるだろう。
LANケーブルの先端に接続するアクセサリー
ネットワークプレーヤーやサーバー等に接続するLANケーブルの先端に接続するためのアクセサリー。1つ追加するだけで簡単にノイズ対策ができるお手頃なアイテムである。
・Silent Power「LAN iSilencer」

iFi audioのサブブランドとして誕生したSilentPower。過去にiFiブランドで発売されたアクセサリー類もSilentPowerとして再編成されている。入力にLAN(RJ45)ソケット、出力にLAN(RJ45)プラグを装備する「LAN iSilencer」は搭載するガルバニック絶縁技術により電気回路を分離して、グラウンド電位の差やAC電源による誘導電流を遮断する。
・ACOUSTIC REVIVE「RLI-1GB-TripleC」

こちらもLANケーブルに直列で接続するもので、アイソレーショントランスとコモンモードノイズ用チョークコイルを組み合わせて、伝送ノイズを大幅にカットする。躍動感やエネルギー感の減衰なく高いノイズ除去率を誇るという。
LANケーブル間に接続するアクセサリー
2本のLANケーブルの間に接続して使用するアクセサリー。本製品を用いるためには、もう1本LANケーブルを追加で用意する必要がある。矢印の向きが記載されているので、信号の流れに沿って設置すると良いだろう。
・English Electric「EE1」

独自開発のICチップを直列に配置しノイズを吸収、熱に変換して発散。純粋な音楽・映像情報のみを伝送する。また同時にケーブルブランド「コード・カンパニー」のノイズ吸収技術も投入し、幅広い帯域のノイズを大幅に削減する。筐体には電磁波シールド性能が高いアルミダイキャストを採用している。
・SOtM「iSO-CAT7 Special Edition」

吟味された特殊パーツを採用し、LANケーブルに埋め込まれた4つの信号線を分離・シールドすることで、各信号線間の干渉を可能な限り減らす。ブラックケーブル(最高の解像度とダイナミズム)、グレーケーブル(ブラックとダークグレーの中間)、ダークグレー(マイルドで心地よいサウンド)、の3本の短いLANケーブルが付属する。
赤丸急上昇中!話題の光アイソレーター
光アイソレーターについては、先日「光アイソレーター一斉試聴」として以下の4モデルについてレビューを行っているので、ぜひ以下の記事も参照してほしい。いずれも、LANケーブルから流れてくる電気信号を一旦光に変換することでノイズをシャットアウトするというアイデアの製品となる。
・TOP WING「OPT ISO BOX」39,600円
・SONORE「OpticalModule Deluxe V3」88,000円(1台)
・EDISCREATION「FIBER BOX 3」330,000円(JAPAN STANDARD MODEL)
・日本テレガートナー「OPT BRIDGE 1000M」349,800円

これ以外に最近登場してきたものとしては、先述のSilentPowerの「LAN iPurifier Pro」という製品がある。
・SilentPower「LAN iPurifier Pro」

「LAN イン・LANアウト」方式の「LAN iPurifier Pro」は、その内部で(1)「光ガルバニックアイソレーション技術」による完全な信号分離(2)アクティブ回路による信号再生成(3)ジッター除去、という3つの技術によりLANケーブルを通じて伝わるデジタルノイズの低減とデータ品質の最適化を実現するという。
良質なLANケーブルも重要
いまや内外の各メーカーからたくさんのオーディオ専用LANケーブルが発売されている。代表的なブランドはサエク、アコースティック・リヴァイブ、コード・カンパニー、フルテック等である。これらはアナログケーブルを豊富にラインナップしていたブランドで、その導体やシールド技術を応用したLANケーブルとなっている。

他にも、テレガートナーやDELAなど、ネットワーク専業ブランドとしての強みを活かした製品も多数登場してきている。また、テレガートナーの金属製コネクタはさまざまなハイエンドブランドにも活用されており、信頼性の高さを伺わせる。
LANケーブルを選ぶ際には、音質はもちろんだが、ケーブルの硬さにも注意して選んでほしい。硬く取り回しにくいものもあり、ハブやルーターなど軽い製品とつなぐと機器が浮いてしまうこともありえる。その場合は余裕を持った長さにしたり、ハブを重量感のあるものにしたり、設置方法を工夫したりすることも必要となる。
また、光アイソレーター等によりせっかくクリーンになったLAN上の電気信号も、その後ろに繋げるLANケーブルの電磁波シールド性能が低いとまた外来ノイズに侵されて元の木阿弥になってしまいかねないので、光アイソレーター等からの出力信号を運ぶLANケーブルには、くれぐれも電磁波シールド性能の高いものをお選びいただきたい。
まとめ
空き端子アクセサリーばかりだった第1回とは異なり、「LANケーブルを経由して」混入するノイズへの対策アクセサリーは製品ジャンル・形態が、電磁波シールドを施したLANケーブルも含めると5種にもなった。次回は電源由来のノイズへの対策アクセサリーを整理する。