公開日 2015/07/08 10:00
欧州マランツのブランドアンバサダー、Ken Ishiwata氏が語る「Model 7から続くマランツの伝統」
欧州限定モデル「14S1 Special Edition」を発表
5月に独ミュンヘンで開催された世界最大規模のオーディオイベント「HIGH END」にて、欧州マランツは欧州向けの特別モデルとして「14S1 Special Edition」シリーズを発表した。本機のチューニングを手がけたのは、マランツのブランド・アンバサダーを務めるKen Ishiwata氏だ。新製品の概要や自身のオーディオ観について、同氏にお話を伺うことができた。
Ken Ishiwata氏はヨーロッパにおけるマランツの象徴的な人物であることはもちろん、欧州のHi-Fiオーディオ分野に非常に大きな影響力を持つ存在である。彼が手がけたマランツの特別モデルには「KI」(同氏のイニシャル)の称号が付与され、オーディオファンから高い支持を集めてきた。「KI」モデルは日本には導入されていないこともあり、Ken Isiwata氏の名前は、日本国内ではオーディオマニアのみ知るところであろうが、ここミュンヘンではKen Isiwata氏のデモには毎回大勢のファンが詰めかけており、欧州における存在感を改めて思い知らされた。
14S1 Special Editionシリーズは、Ken Ishiwata氏がマランツで最初に特別モデルを手がけてから2015年で30周年を迎えることを記念したアニバーサリーモデル。USB-DAC搭載SACDプレーヤー「SA-14S1 SE」と、プリメインアンプ「PM-14S1 SE」の2モデルで構成される。型番から見てもわかる通り、両モデルのベースになっているのは日本でも展開されている「14S1」シリーズである。14S1 Special Editionにおいては、Ishiwata氏が自ら音質チューニングを施した。
通常モデルとのちがいだが、SA-14S1 SE/PM-14S1 SEともに、トップカバーを5mm厚の重量級アルミニウム製トップカバーに変更。電源部には大型トロイダルトランスを採用し、SA-14S1 SEには銅メッキ・シールドケースを、PM-14S1 SEには非磁性アルミ・シールドケースをそれぞれ用いている。また、各種オーディオパーツは、Ishiwata氏自らがオーディオ向け高級品の中から選別を行っている。
Ishiwata氏は「人間とは“好み”が必ずありますから、皆さまそれぞれの音の好みについて私は立ち入るつもりはありません。ただし、レコーディングされた音源に入っている要素については、綺麗に引き出してあげる必要があります」と語る。「ですから音に関しては皆様にお任せして、その他の部分についてはなるべく忠実にレコーディングエンジニアやミュージシャンが意図した状態を引き出してあげるというのが我々のやりかたです」。
今回の14S1Special Editionには、どのような思想の元にチューニングが施されたのであろうか。Ken Ishiwata氏が本機で目指したのは、銘機『Model 7』以来、マランツの伝統として引き継いできた“サウンドステージの再現”であるという。
「ソウル・B・マランツが手がけた真空管プリアンプに『Model 7』という銘機がありますよね。1960年代にこのModel 7を試聴したとき、そのサウンドステージの美しさに驚かされました。真空管にはそもそもノイズがあるのですが、このノイズによって実際以上の奥行きが出てくるのです。映像の世界で言えば「3D」とも表現できるサウンドステージの美しさ、これこそがマランツのユニークな点であると考えました」。
「そしてCDが世に出たときに、私はこのマランツの良さをデジタルオーディオにおいてもしっかりと表現していきたいと考えたのです。特にヨーロッパにおけるマランツでは、このサウンドステージの再現をマランツブランドの伝統と捉えて取り組んできました。今回の14S1 Special Editionの根底にあるものも同様です」(Ken Ishiwata氏)
そして14S1 Special Editionの音作りにおいても、「サウンドステージをきれいに描きだすこと」は大きなテーマだった。Ken Ishiwata氏は「スピーカーから音がでるのではなく、スピーカーの後ろ、あるいは外側にサウンドステージが広がっていくイメージです。サウンドステージには幅が合り、奥行きがあり、高さがあります。まさに「3D」ですね。このサウンドステージをいかに美しく描き出すかは、14S1 Special Editionにおいても最大の目標でした」と説明してくれた。
会場にはマランツ往年のCDプレーヤー「CD-45 Limited Edition」が展示されていた。本機がKen Ishiwata氏が手がけたマランツのスペシャル・エディションの最初の製品であり、その後の「KI」モデルの原点だ。同氏は本機に始まるスペシャル・エディション誕生のエピソードも語ってくれた。
1985年に登場した「CD-45」は14bit DAC搭載による4倍オーバーサンプリング再生を特徴としたCDプレーヤーであったが、オーバーサンプリングの効果が当時はなかなか理解されなかったことに加え、他のメーカーから16bit DACを搭載した製品が続々と登場。その優れたサウンドにも関わらず市場ではハンディを負う状況になってしまったのだという。その状況に苦慮した当時の英国のセールスマネージャーに相談を受けたKen Isiwata氏は、本機が優れたCDプレーヤーであることを改めて示すために、同氏は各部品の交換や音質チューニングのための改造を施し、音質をさらに高めた「Limited Edition」として発売を行った。すると、用意した2000台がわずか2週間で売り切れてしまったのだ。「CD-45はCD黎明期に考え抜かれたプレーヤーでした。これを特別版という形式で復活させたことが、SA14 Special Edtionに続く系譜の始まりなのです」とIshiwata氏は語る。
Ken Ishiwata氏はHi-Fiオーディオの歴史にも言及した。Hi-Fiオーディオの歴史が始まったのは1948年頃、LPがアメリカで登場したときだった。SPからLPになってオーディオ・クオリティが急激に向上したことで、Hi-Fi再生が実現できる状況になったのだという。この頃に登場したのが、マランツやマッキントッシュだ。そしてモノラル時代を経て1958年にステレオLPが登場した。前述のModel 7が世に送り出されたのもこのタイミングだ。
「model 7の頃からのマランツの思想を受け継いでいくことが私の使命だと考えています。マランツの伝統を守らなくてはいけないと、ずっと努力してしてきました。そしてこれからも、さらなる努力を続けていきます」。Ken Ishiwata氏はそう語ってインタビューを結んでくれた。
Ken Ishiwata氏はヨーロッパにおけるマランツの象徴的な人物であることはもちろん、欧州のHi-Fiオーディオ分野に非常に大きな影響力を持つ存在である。彼が手がけたマランツの特別モデルには「KI」(同氏のイニシャル)の称号が付与され、オーディオファンから高い支持を集めてきた。「KI」モデルは日本には導入されていないこともあり、Ken Isiwata氏の名前は、日本国内ではオーディオマニアのみ知るところであろうが、ここミュンヘンではKen Isiwata氏のデモには毎回大勢のファンが詰めかけており、欧州における存在感を改めて思い知らされた。
14S1 Special Editionシリーズは、Ken Ishiwata氏がマランツで最初に特別モデルを手がけてから2015年で30周年を迎えることを記念したアニバーサリーモデル。USB-DAC搭載SACDプレーヤー「SA-14S1 SE」と、プリメインアンプ「PM-14S1 SE」の2モデルで構成される。型番から見てもわかる通り、両モデルのベースになっているのは日本でも展開されている「14S1」シリーズである。14S1 Special Editionにおいては、Ishiwata氏が自ら音質チューニングを施した。
通常モデルとのちがいだが、SA-14S1 SE/PM-14S1 SEともに、トップカバーを5mm厚の重量級アルミニウム製トップカバーに変更。電源部には大型トロイダルトランスを採用し、SA-14S1 SEには銅メッキ・シールドケースを、PM-14S1 SEには非磁性アルミ・シールドケースをそれぞれ用いている。また、各種オーディオパーツは、Ishiwata氏自らがオーディオ向け高級品の中から選別を行っている。
Ishiwata氏は「人間とは“好み”が必ずありますから、皆さまそれぞれの音の好みについて私は立ち入るつもりはありません。ただし、レコーディングされた音源に入っている要素については、綺麗に引き出してあげる必要があります」と語る。「ですから音に関しては皆様にお任せして、その他の部分についてはなるべく忠実にレコーディングエンジニアやミュージシャンが意図した状態を引き出してあげるというのが我々のやりかたです」。
今回の14S1Special Editionには、どのような思想の元にチューニングが施されたのであろうか。Ken Ishiwata氏が本機で目指したのは、銘機『Model 7』以来、マランツの伝統として引き継いできた“サウンドステージの再現”であるという。
「ソウル・B・マランツが手がけた真空管プリアンプに『Model 7』という銘機がありますよね。1960年代にこのModel 7を試聴したとき、そのサウンドステージの美しさに驚かされました。真空管にはそもそもノイズがあるのですが、このノイズによって実際以上の奥行きが出てくるのです。映像の世界で言えば「3D」とも表現できるサウンドステージの美しさ、これこそがマランツのユニークな点であると考えました」。
「そしてCDが世に出たときに、私はこのマランツの良さをデジタルオーディオにおいてもしっかりと表現していきたいと考えたのです。特にヨーロッパにおけるマランツでは、このサウンドステージの再現をマランツブランドの伝統と捉えて取り組んできました。今回の14S1 Special Editionの根底にあるものも同様です」(Ken Ishiwata氏)
そして14S1 Special Editionの音作りにおいても、「サウンドステージをきれいに描きだすこと」は大きなテーマだった。Ken Ishiwata氏は「スピーカーから音がでるのではなく、スピーカーの後ろ、あるいは外側にサウンドステージが広がっていくイメージです。サウンドステージには幅が合り、奥行きがあり、高さがあります。まさに「3D」ですね。このサウンドステージをいかに美しく描き出すかは、14S1 Special Editionにおいても最大の目標でした」と説明してくれた。
会場にはマランツ往年のCDプレーヤー「CD-45 Limited Edition」が展示されていた。本機がKen Ishiwata氏が手がけたマランツのスペシャル・エディションの最初の製品であり、その後の「KI」モデルの原点だ。同氏は本機に始まるスペシャル・エディション誕生のエピソードも語ってくれた。
1985年に登場した「CD-45」は14bit DAC搭載による4倍オーバーサンプリング再生を特徴としたCDプレーヤーであったが、オーバーサンプリングの効果が当時はなかなか理解されなかったことに加え、他のメーカーから16bit DACを搭載した製品が続々と登場。その優れたサウンドにも関わらず市場ではハンディを負う状況になってしまったのだという。その状況に苦慮した当時の英国のセールスマネージャーに相談を受けたKen Isiwata氏は、本機が優れたCDプレーヤーであることを改めて示すために、同氏は各部品の交換や音質チューニングのための改造を施し、音質をさらに高めた「Limited Edition」として発売を行った。すると、用意した2000台がわずか2週間で売り切れてしまったのだ。「CD-45はCD黎明期に考え抜かれたプレーヤーでした。これを特別版という形式で復活させたことが、SA14 Special Edtionに続く系譜の始まりなのです」とIshiwata氏は語る。
Ken Ishiwata氏はHi-Fiオーディオの歴史にも言及した。Hi-Fiオーディオの歴史が始まったのは1948年頃、LPがアメリカで登場したときだった。SPからLPになってオーディオ・クオリティが急激に向上したことで、Hi-Fi再生が実現できる状況になったのだという。この頃に登場したのが、マランツやマッキントッシュだ。そしてモノラル時代を経て1958年にステレオLPが登場した。前述のModel 7が世に送り出されたのもこのタイミングだ。
「model 7の頃からのマランツの思想を受け継いでいくことが私の使命だと考えています。マランツの伝統を守らなくてはいけないと、ずっと努力してしてきました。そしてこれからも、さらなる努力を続けていきます」。Ken Ishiwata氏はそう語ってインタビューを結んでくれた。
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