公開日 2017/12/12 10:28
CHORDのアンプ技術の核心とは − 航空電子技術の応用で生まれたオーディオ用電源の秘密
【特別企画】ジョン・フランクス氏が語る
CHORDは近年のデジタルオーディオにおける新しい潮流の中で、DAVEに代表されるD/Aコンバーターでその先頭に立ってきた。CHORDという名前を聞いて、FPGAを用いた独自DACをまず思い浮かべる方も多いかもしれない。
しかし、ご存じのとおりCHORDはそもそもアンプから出発したブランドであり、創業者のジョン・フランクス氏が開発したアンプによって、最初にその名をハイエンドオーディオで広く知られることになった。現在に至るまでCHORDのアンプはブランドの両輪の片方として、多くのハイエンドファンに愛されている。
今なおハイエンド・アンプのひとつの到達点となっているCHORDのアンプに改めてスポットライトを当てるべく、アンプ開発を手がけるジョン・フランクス氏にインタビュー。その優位性について改めて解説してもらった。
■航空機分野における電源技術をHi-Fiオーディオアンプに応用
ーー フランクスさんがCHORDを創業する前に航空機分野のエンジニアだったのは有名な話ですが、この航空機分野の技術がアンプを含むCHORDの製品には活かされているとのことです。そこでまず、フランクスさんのバックボーンについて改めてお話いただけないでしょうか。
フランクス氏 その通り、私はCHORDを創業する前に航空機エンジニアを職業としていて、航空機の設計チームに所属していました。航空機のエンジニアリングといっても領域は広大ですが、私はフライトレコーダー、俗に言うブラックボックスの電源を専門に担当していました。
フライトレコーダーというと皆さんは航空機の中に1つか2つ設置されているものとイメージされるかもしれませんが、実際にはそれに類するものを含めると100以上のブラックボックスが航空機内に存在しています。この電子機器群が、航空機が運航する上でのあらゆる記録を行うのです。
この100個を超える精密な電子記録装置を常時稼働させるための電源に、高い精度と信頼性が要求されることは想像に難くないと思います。このようなブラックボックスの電源を、私は設計していたのです。
ーー 航空機におけるフライトレコーダーに求められる正確性や信頼性の高さは、ホームユースのエレクトロニクスとは比にならないであろうことは容易に想像できます。
フランクス氏 航空機に搭載される電子機器のことを「Avionics」(アビオニクス)と呼びます。アビオニクスは特殊な分野であり、求められる技術力や信頼性の水準はあらゆる他領域と比較しても高いです。アビオニクスにおける電源も同様で、より小型で強力、そして安定性の高い電源が求められます。
私はアビオニクスの電源を研究する若きエンジニアだったのですが、同時に、オーディオ用アンプのデザインを趣味としていました。そして、アビオニクスの電源設計がアンプにも活かせるのではないかと常々考え、実際に試していたのです。
ーー それが後のCHORD Electronicsの創業に繋がっていくわけですね。
フランクス氏 私がアビオニクスに関わっていたのはもう40年前ですが、面白いのは、当時はアビオニクス特有のものだったテクノロジーやノウハウが、今日になって一般の領域に出回ってきていることです。アビオニクスの世界で常識だったことが、40年を経て一般の世界で認知されるに至っています。
ーー アビオニクスという分野が、それだけ他の領域に先行した高い技術を備えていたということが理解できます。そして、CHORDはそれらの技術をいち早くオーディオの世界に取り込んできたということですね。
フランクス氏 当時、私は仕事の傍ら、自分や友人たちのためにアンプを設計して楽しんでいました。ディスコで使うための非常に強力なパワーアンプを依頼されて設計したこともありましたね。若い頃はこのようにアンプ設計を趣味で手がけていたのですが、その中で研究対象であり仕事で携わっていたアビオニクスのノウハウ、特に電源の技術がアンプの設計にも活用できることがわかってきたのです。
■独自のスイッチング電源がアンプの音質を決定づける
ーー それが、CHORDのアンプの特徴としてまず挙げられるスイッチング電源に繋がるわけですね。CHORDのアンプにおけるスイッチング電源がなぜ優れているのか、改めてご説明いただけますか。
フランクス氏 アビオニクスに照らし合わせてアンプを開発する中でわかったのは、高周波を上手く制御することでスイッチング電源の特性が向上すること、そして優れたスイッチング電源とグランドの処理の工夫によってアンプの音質を飛躍的に向上させられるということでした。
しかし、ご存じのとおりCHORDはそもそもアンプから出発したブランドであり、創業者のジョン・フランクス氏が開発したアンプによって、最初にその名をハイエンドオーディオで広く知られることになった。現在に至るまでCHORDのアンプはブランドの両輪の片方として、多くのハイエンドファンに愛されている。
今なおハイエンド・アンプのひとつの到達点となっているCHORDのアンプに改めてスポットライトを当てるべく、アンプ開発を手がけるジョン・フランクス氏にインタビュー。その優位性について改めて解説してもらった。
■航空機分野における電源技術をHi-Fiオーディオアンプに応用
ーー フランクスさんがCHORDを創業する前に航空機分野のエンジニアだったのは有名な話ですが、この航空機分野の技術がアンプを含むCHORDの製品には活かされているとのことです。そこでまず、フランクスさんのバックボーンについて改めてお話いただけないでしょうか。
フランクス氏 その通り、私はCHORDを創業する前に航空機エンジニアを職業としていて、航空機の設計チームに所属していました。航空機のエンジニアリングといっても領域は広大ですが、私はフライトレコーダー、俗に言うブラックボックスの電源を専門に担当していました。
フライトレコーダーというと皆さんは航空機の中に1つか2つ設置されているものとイメージされるかもしれませんが、実際にはそれに類するものを含めると100以上のブラックボックスが航空機内に存在しています。この電子機器群が、航空機が運航する上でのあらゆる記録を行うのです。
この100個を超える精密な電子記録装置を常時稼働させるための電源に、高い精度と信頼性が要求されることは想像に難くないと思います。このようなブラックボックスの電源を、私は設計していたのです。
ーー 航空機におけるフライトレコーダーに求められる正確性や信頼性の高さは、ホームユースのエレクトロニクスとは比にならないであろうことは容易に想像できます。
フランクス氏 航空機に搭載される電子機器のことを「Avionics」(アビオニクス)と呼びます。アビオニクスは特殊な分野であり、求められる技術力や信頼性の水準はあらゆる他領域と比較しても高いです。アビオニクスにおける電源も同様で、より小型で強力、そして安定性の高い電源が求められます。
私はアビオニクスの電源を研究する若きエンジニアだったのですが、同時に、オーディオ用アンプのデザインを趣味としていました。そして、アビオニクスの電源設計がアンプにも活かせるのではないかと常々考え、実際に試していたのです。
ーー それが後のCHORD Electronicsの創業に繋がっていくわけですね。
フランクス氏 私がアビオニクスに関わっていたのはもう40年前ですが、面白いのは、当時はアビオニクス特有のものだったテクノロジーやノウハウが、今日になって一般の領域に出回ってきていることです。アビオニクスの世界で常識だったことが、40年を経て一般の世界で認知されるに至っています。
ーー アビオニクスという分野が、それだけ他の領域に先行した高い技術を備えていたということが理解できます。そして、CHORDはそれらの技術をいち早くオーディオの世界に取り込んできたということですね。
フランクス氏 当時、私は仕事の傍ら、自分や友人たちのためにアンプを設計して楽しんでいました。ディスコで使うための非常に強力なパワーアンプを依頼されて設計したこともありましたね。若い頃はこのようにアンプ設計を趣味で手がけていたのですが、その中で研究対象であり仕事で携わっていたアビオニクスのノウハウ、特に電源の技術がアンプの設計にも活用できることがわかってきたのです。
■独自のスイッチング電源がアンプの音質を決定づける
ーー それが、CHORDのアンプの特徴としてまず挙げられるスイッチング電源に繋がるわけですね。CHORDのアンプにおけるスイッチング電源がなぜ優れているのか、改めてご説明いただけますか。
フランクス氏 アビオニクスに照らし合わせてアンプを開発する中でわかったのは、高周波を上手く制御することでスイッチング電源の特性が向上すること、そして優れたスイッチング電源とグランドの処理の工夫によってアンプの音質を飛躍的に向上させられるということでした。
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