山之内正と鈴木裕がそれぞれの視点から迫る
エソテリック「マスターサウンドワークス」シリーズの魅力を徹底レビュー!
エソテリックから初の本格派インテグレーテッドアンプを含む 「マスターサウンドワークス」の新アンプ2機種が姿を現した! |
Text/山之内 正
エソテリックは「マスターサウンドワークス」と冠したアンプシリーズを2008年より発売し、こだわりのオーディオファンに好評を得てきた。そして、ここに新しい方向性を持った待望のアンプ2機種を誕生させた。I-03は、同ブランド初となる本格インテグレーテッドアンプであり、シンプルかつハイパワーで、このカテゴリとしては最上位クラスとなるモデル。またA-02はAB級のステレオパワーアンプで、ハイパワーを誇るモデルである。いずれも、プロのスタジオ用アンプの開発から得た長い経験から生み出された、高品位なパフォーマンスを獲得してた、いま最も注目のアンプといえるだろう。ここにエソテリックアンプシリーズの、第2章がスタートしたのだ!
■2モデルの誕生の背景
音楽制作の現場と指向を共有してコンセプトの異なる2機種を開発
エソテリックは近年デジタルプレーヤーに加えてアンプの開発に積極的に取り組んでおり、管球式パワーアンプA-100をはじめ、話題作を続々と投入し、3年前にはコントロールアンプC-03も完成させた。そのエソテリックから今年新たにコンセプトの異なる2機種のアンプが登場した。クラスDアンプを積むプリメインアンプ「I-03」と、A-03の設計思想をベースにさらなる音質向上を狙ったステレオパワーアンプ「A-02」である。発売直後のホットなタイミングで、それぞれとじっくり試聴することができたので、その結果を紹介することにしよう。
Kシリーズもそうだが、エソテリックが設計思想に掲げる「マスターサウンドワークス」は、音楽制作の現場と情報や指向を共有することにより、音楽が生まれる現場の感動や臨場感を忠実に再現することを目指している。
■インテグレーテッドアンプI-03の概要
純度にこだわりハイパワーを実現操作感も含め完成度も非常に高い
クオリティに徹する姿勢は形状からも読み取ることができる。I-03は、外見から分かる通りC-03やデジタルプレーヤー最新ラインのKシリーズとデザインコンセプトを共有しており、アルミ素材の美しさとマッシブな量感を両立させたフォルムが美しい。電源ボタンをさりげなくディスプレイ左端に配置したり、筐体表面からビス類を隠すなど、細部まできめ細かく配慮した仕上げの良さが目を引く。
セレクターとボリュームを左右対称に配置したフロントパネルのレイアウトは、これ以上は無理というぐらいシンプルで、正面にはブランドのロゴすら見当たらない。セレクターとボリュームの操作感は感触、動きともに十分に吟味されていて、非常に完成度が高い。
パワーアンプ回路は独自のピュアクラスD方式を採用し、出力素子にはMOS-FETを3パラレルプッシュプル構成で投入。チャンネルごとに独立した基板を用意するデュアル・モノ構成で配置し、大容量アナログ電源で駆動する。高効率のクラスDアンプとはいえ、電源回路にはあえてスイッチング方式を使わず、純度の高さにこだわっているのだ。出力は6Ω負荷時にチャンネル当たり240Wと、サイズからは想像できないほどのゆとりがある。
筐体自体が放熱に寄与する設計なので動作時はそれなりに温度が上がるが、その温度上昇は放熱孔を排したアンプとは思えないほど緩やかなものだ。
■パワーアンプA-02の概要
大型スピーカーを視野に設計され外観の美しさはクラスレスである
A-02はチャンネル当たり200W(8Ω)の出力を誇るAB級のステレオパワーアンプで、純A級のA-03よりも高出力を必要とする用途に向く。LAPT素子を用いた5パラレルプッシュプル構成で最大瞬間供給電流を確保し、大型スピーカーの駆動も視野に入れた設計を徹底、ダンピング・ファクターの数値はなんと1000に及ぶ。BTL駆動時には800Wの出力を実現する性能を秘めている点にも注目したい。
筐体の仕様はA-03とほぼ共通するが、内蔵するアンプ回路の変更、電源部の強化などによって、質量は本機の方が3.5kgほど重くなった。曲線を生かしたデザインはマッシブな量感だけでなく質感の高さをたたえており、クラスレスの美しさを実感させる。筆者の個人的な見方ではあるが、海外ブランドのパワーアンプの場合、本機の仕様と作りの良さを考慮すると、価格が2倍前後の製品に匹敵するのではないだろうか。