山之内正と鈴木裕がそれぞれの視点から迫る
エソテリック「マスターサウンドワークス」シリーズの魅力を徹底レビュー!
充実のラインアップとなったパワーアンプシリーズ 最新モデルA-02の実力を2つのスピーカーで検証する! |
Text/鈴木 裕
エソテリックのアンプシリーズ「マスターサウンドワークス」は、2008年のA-100からスタートし、徐々にラインアップを拡充。その高いクオリティがファンの間に確実に認められてきた。そして今年、待望の大出力AB級パワーアンプ「A-02」とインテグレーテッドアンプ「I-03」が登場し、ほぼフルラインが揃ったといえるだろう。ここではA-02の高品位なパフォーマンスを、オーディオファイルなら誰もが知る2つの代表的なスピーカーを組み合わせることで、検証していきたい。
■マスターサウンドワークスの中でのA-02の価値
プロのスタジオで磨いた経験を投入高い駆動力とハイファイ性能を両立
ティアック時代から録音現場との関係が深いエソテリックの究極のテーマが、レコーディングスタジオでの音楽情報、感動を収録したマスター音源を表現すること。そしてその思想を反映した製品群が「マスターサウンドワークス」である。パワーアンプのA-100、A-80、A-03。インテグレーテッドアンプのI-03。そしてプリアンプのC-03、フォノアンプのE-03などがラインアップされている。
その中で、ステレオパワーアンプA-03の設計思想をベースに、スピーカーに対する高い駆動力を特徴として新しく登場したのがA-02だ。レコーディング現場のエンジニアとのさらに深いコラボレーションの中から、現場で要求されるプレイバックを大音量で再生するのに必要とされるスピーカー駆動力はもとより、音楽的な表現力、演奏の再現性を持たされている。
クラスABのパワーアンプ部はデュアル・モノラル構成を取り、ひとつの素子で34アンペア(瞬間動作時)もの電流供給能力を持つバイポーラ・トランジスターを5パラレル・プッシュプルで採用。ドライブ段とその前の電圧増幅段のそれぞれ専用に、大型のトロイダル電源トランスを装備する。高い駆動力と、高いハイファイ性能を両立した構成になっている。
【A-02とC-03との組み合わせで2つのスピーカーを聴く】
■Part.1 B&W 804 Diamond
駆動力は申し分なく軽快に反応し高い透明感と明確な音場を表現
A-02のポテンシャルを確認すべく、音元出版試聴室で2種類のスピーカーを鳴らしてみた。システムは、SACD/CDプレーヤーとしてエソテリックのK-01。プリアンプはC-03。そしてパワーアンプはもちろんA-02という、エソテリックブランドで固めている。
まずB&Wの804 Diamond。ロハセル製振動板のふたつのウーファーユニットを持った3ウェイだ。名前の通り、ダイヤモンド・ドーム・トゥイーターを搭載。トールボーイ型で、しかもダブルウーファーを持つスピーカーの場合、低音の量は出やすいものの、アンプによっては茫洋とした低音になりがちだ。公称インピーダンスはスペック表を見ると8Ω(最小3Ω)という表示だが、このカッコの中の最小3Ωというものが曲者で、つまり意外と駆動しにくいことを匂わせている。
山下達郎の『ソノリテ』を聴くと、低音のシンセベースの、軽く反応のいい感じなど、A-02の駆動力は申し分ない。声は達郎の人間性を感じさせるもので、アキュレートな音色感だ。千住真理子のヴァイオリンを聴くと、妙にハイファイ調のアンプではピアノ演奏が前面にしゃしゃり出てくることがあるが、伴奏のピアノの存在感がジャスト。音としてはピアノの左手が担当する低音域の立ち上がりがよく、またヴァイオリンの最高域であるE線の倍音がクリアに、緻密に再生される。
大編成のオーケストラを聴いても、トゥッティ(全奏)での迫力ある表現や音の形が崩れず、スケール感など満足度が高い。キース・ジャレット・トリオのライブでは、シンバルの切れ込みのいい美音が実に楽しかった。総合的に言えばコントラスト強めの、透明感の高い音で、明確な音場表現力だ。