公開日 2021/04/30 06:45
サウンドエンジニア×デノンサウンドマスター、“作り手”同士が語るイマーシブサラウンドの未来
【特別企画】最高級とカジュアル、2つのシステムを体験
■「ライブの世界観を再現するのに、2つのスピーカーだけでは無理がある」
『ONLINE LIVE 2020 -Arena Travelers-』は昨年コロナ禍で実際のライブに参加できなかったファンの方々へ向けての無観客配信ライブとして、当初のツアーでも会場の一つとなっていた東京ガーデンシアターで収録された。PAについても本番と同じ規模ではないものの、施設の常設スピーカーを使って、本番に近い音圧でライブ収録が実施されたという。
事前にホールの持つ残響特性のインパルスレスポンス(IR)を取り込み、コンボリューションリヴァーブとして活用。DPA製無指向マイクをオムニクアッドサークルで構成し、ドルビーアトモスのトップスピーカー配置に揃え、ライブ会場内の音の響きもミックスに活用したそうだ。
古賀氏はこう語る。「僕がサラウンドに魅力を感じている理由の一つに、ライブ作品をリリースするのに、DVDや2chでは限界を感じているということがあります。動画配信などをスマホなどの環境で楽しむ方がいるのも承知していますが、ライブステージは照明や特殊効果、PAも含め、様々なスタッフたちがこだわって作り上げている、情報量の多い表現作品ですから、その世界観を2つのスピーカーだけで再現するには無理があります。だったら、せめて5.1chで聴いていただきたいと考えているのです」。
「特にヒゲダンみたいに楽器編成が多いと、逃げ場がない。2chだと様々な音がマスキングしてしまうので、余裕をもって音を作り込みたい。包み込まれる感覚は5.1chでも得られますし、ライブ会場の雰囲気にも近いと考えています」。
「ただ、制作する前には『サラウンドで誰が聴くのか』とよく言われるんです。今回は『ドルビーアトモスは違うんだ』と、近藤さんやドルビージャパンさんからも力添えをいただいて形になりました」。
「コロナ禍のなかで収録されたこの意義深きライブを後世に残すために、ドルビーアトモスにしておきたいと思ったんです。熱のあるうちに形にしておかないと忘れてしまうということもありますが、Official 髭男dismという旬で実力のあるアーティストだからこそ、ドルビーアトモスの理想的な環境で残したいと考えました」。
ライブステージはホーンセクションを含め最大12名の大編成で構成されており、その情報量の多さ、臨場感を届けるにはドルビーアトモスの器の大きさ、上方向にも広がる空間表現の豊かさを生かすことで、生体験に近いリアルなライブサウンドを届けることができる。「非常に大きなプレッシャーを感じながらも形にできて良かった」と古賀氏も感慨深そうだ。
「ホールやライブハウスも、会場が大きくなればなるほど反射音の量が増えていきます。反射して上から音が落ちてくる。それがリアルな空間なので、自然な環境に音楽を持っていくには、天井からの音はマストだと考えています」と古賀氏。イマーシブサラウンドにおける極意の一端を伺える一言だ。
ポニーキャニオンエンタープライズの近藤氏はこう語る。「ドルビーアトモスはビデオパッケージなどのニアフィールド用のものを劇場用に拡張したり、劇場のものをホーム用にしたりと、応用しやすいフォーマットです。1つ作品を作ると色々なウインドウで商品を展開できるんです。『音楽中心の方は2chでいいじゃん』という話になることも少なくないですが、その意識を変えていくのは古賀さんのように理論的に語っていただきつつ、音で形にできるエンジニアの方が前面に出ていただいかないと変化は起きません。そのためにサポートしていくのが我々の仕事だと考えています」。
本来ポスプロは最後の仕上げを手掛けるセクションであり、録音まで遡って担当することはない。しかし今回のヒゲダンのライブのように、生のライブ会場の音に一番近いと感じたドルビーアトモスの音をファンの方々に届けるには、古賀氏のようなこだわりを持ち、熱量を持ってイマーシブサラウンドを手掛けるエンジニアとの協力が欠かせない。
そこで古賀氏や会場での録音を担当したTamcoの四ノ宮祐氏、ポニーキャニオンエンタープライズの村上氏との協力体制を組み、理想的なアトモス収録のチームを作り上げ、近藤氏もサポートとして各方面の調整などの役割を担ったのである。
次ページ続いて「SB550」と「DENON HOME 150」でのサラウンドを試聴
トピック
-
テレビの音がハッキリ!音の悩みを解決するネックスピーカー「きこエール for TV」を使いこなす -
デノン&マランツのCDコンポでDALI/B&Wのプレミアムブックシェルフスピーカーを鳴らしきる! -
手軽に臨場感が手に入る!レグザのワンボディサウンドバー「RA-B500」「RA-B100」を徹底レビュー -
ひと味違う“ながら聴きイヤホン”「kikippa」登場。その実力は? -
今こそ推したい!ロングヒットを続けるワイヤレスヘッドホン。「Sonos Ace」は音質もノイキャンも一級品 -
自宅での映画体験を劇場級に。北米ホームシアターブランド、Valerion「VisionMaster Pro2」を徹底解説 -
VGP2026で金賞!ハイエンド・サウンドバーのヒットモデル『Sonos Arc Ultra』、スポーツ番組の臨場感にプロも大満足 -
カッコいいのは大前提、では買うべきはどっち? NothingとCMFのヘッドホンを徹底比較 -
映画はやっぱりJBL!入門サウンドバー『CINEMA SB580 ALL-IN-ONE』は間違いなしの正統派サウンド -
陽が差す部屋で鮮やかな大画面が楽しめるXGIMIの4Kプロジェクター「HORIZON 20シリーズ」3モデルをレビュー -
この価格はホント? Sound by Boseで高コスパ、Baseus最上位イヤホン/ヘッドホン「Inspireシリーズ」まるごと聴いた -
【読者限定割引クーポンあり】初のハイブリッド設計、本気のハイエンド級音質!「EarFun Air Pro 4+」レビュー -
3人の専門家が深堀り!Anker「Soundcore Liberty 5」定番機の秘訣とは -
オーディオを高く売るなら信頼と実績のオーディオランド!下取よりも買取がお得です◎
クローズアップCLOSEUP
-
テレビの音がハッキリ!音の悩みを解決するネックスピーカー「きこエール for TV」を使いこなす -
デノン&マランツのCDコンポでDALI/B&Wのプレミアムブックシェルフスピーカーを鳴らしきる! -
手軽に臨場感が手に入る!レグザのワンボディサウンドバー「RA-B500」「RA-B100」を徹底レビュー -
ひと味違う“ながら聴きイヤホン”「kikippa」登場。その実力は? -
今こそ推したい!ロングヒットを続けるワイヤレスヘッドホン。「Sonos Ace」は音質もノイキャンも一級品 -
自宅での映画体験を劇場級に。北米ホームシアターブランド、Valerion「VisionMaster Pro2」を徹底解説 -
VGP2026で金賞!ハイエンド・サウンドバーのヒットモデル『Sonos Arc Ultra』、スポーツ番組の臨場感にプロも大満足 -
カッコいいのは大前提、では買うべきはどっち? NothingとCMFのヘッドホンを徹底比較 -
映画はやっぱりJBL!入門サウンドバー『CINEMA SB580 ALL-IN-ONE』は間違いなしの正統派サウンド -
陽が差す部屋で鮮やかな大画面が楽しめるXGIMIの4Kプロジェクター「HORIZON 20シリーズ」3モデルをレビュー -
この価格はホント? Sound by Boseで高コスパ、Baseus最上位イヤホン/ヘッドホン「Inspireシリーズ」まるごと聴いた -
【読者限定割引クーポンあり】初のハイブリッド設計、本気のハイエンド級音質!「EarFun Air Pro 4+」レビュー -
3人の専門家が深堀り!Anker「Soundcore Liberty 5」定番機の秘訣とは -
【読者限定クーポン配布中】MEMS+ダイナミック型 SOUNDPEATS「Air 5 Pro+」をレビュー! -
DALI “プレミアム”コンパクトスピーカー「KUPID」、音楽にいつまでも没頭できるサウンドに迫る -
ゼンハイザー「HDB 630」はどこが凄い?初の“オーディオファイル向けワイヤレスヘッドホン”を徹底分析
アクセスランキング
RANKING
12/12 10:48 更新

















