【特別企画】最高級とカジュアル、2つのシステムを体験
サウンドエンジニア×デノンサウンドマスター、“作り手”同士が語るイマーシブサラウンドの未来
今回デノン試聴室で改めて作品をチェックし、村上氏は次のように語った。
「AVC-A110のサウンドは非常に解像度が高く、S/Nも良いですね。丁寧に取り除いていたリップノイズの部分など、思っていた以上に細かい部分まで見えてくるので、今まで以上に気を引き締めて仕事に取り組もうと、気合を入れなおしました」。
村上氏は、古賀氏のサラウンドにおけるアイデアを具体的に実行するための技術的サポートを担っていたとのこと。村上氏は様々な劇場用ドルビーアトモス作品の作業にも携わっているため、古賀氏が考える作業を、より早く直接的に具現化することができる。また映像に合わせた音のパンニングにおいても、フレーム単位で古賀氏の操作を判断・サポートするなど、正確なジャッジをするうえで非常に重要な役割を担っていたそうだ。
「今回ドルビーアトモスの再現性を確認するうえで、ポスプロを担当した劇団維新派の演劇作品「透視図」の音の動きを聴いてみました。人の動きに合わせてパンニングしたところや、音楽の広がり具合、トップスピーカーを使った飛行機の音の動きがどう再現されるかを確認したのですが、AVC-A110ではきちんとそれぞれの処理が反映されていました。
村上氏はまた、「イマーシブサラウンドの良いところは、以前なら位相をいじって上から聴こえるように頑張っていたような場面でも、直感的にトップスピーカーに対し音を配置すれば、上からの音を表現できるところです」とイマーシブサラウンドならではのメリットも語ってくれた。
■「SB550をきっかけにイマーシブサラウンドの世界を聴いてもらいたい」
続いてSB550を中心として、ワイヤレス接続で「DENON HOME 150」2台をリアに配置したリーズナブルなイマーシブサラウンドシステムを使っての視聴も実施。手軽な環境でのサラウンド体験について古賀氏に感想を伺うと、「ワイヤレスのリア側スピーカーも遅延が全くなく快適ですね。バッテリーで動いて、電源コードすらいらなくなってくれたら理想的ですが(笑)」。
「SB550を中心としたシステムは、サブウーファーを置かなくても良いのがいいですね。僕もサブウーファーに依存しない4.0.4chの構成が理想ではないかと考えています。個人的にはイネーブルドスピーカーを使った反射タイプでもよいので、イマーシブサラウンドへの対応をしてほしいところですが、今回のものを含めてハイトスピーカー無しのシステムを組む場合は、サラウンドスピーカーを視聴位置より少し上に置くことをお薦めします。映画館もそうですし、縦方向も自然と出ますから」と、古賀氏は実用的なアドバイスも語ってくれた。
村上氏も「リアスピーカーはバッテリー駆動で3時間鳴るようなものが欲しいですね」と古賀氏のコメントを受けつつ、その可能性の高さについて、次のように語る。
「実際のところ、アトモスどころか5.1chサラウンドすら聴いことない方も多いと思います。そういったサラウンド未体験の方達に向けて興味を持ってもらうきっかけとして、サウンドバースタイルの製品は良い提案だと感じますね。SB550をきっかけとして、より多くの方にイマーシブサラウンドの世界も聴いてもらいたいです」。
また古賀氏は他社製品を含め、サウンドバーにはミュージックコンテンツ用のチューニングが必要だと感じているという。
「SB550は想像以上の音でした。ポテンシャルがあるからこそ、もう少し音楽に寄り添った音も出てくれると嬉しいなと。僕もサウンドバーのサウンドチューニングに参加してみたいです(笑)」。
古賀氏はこうも続ける。「ソフトの作り手としては、スピーカー構成のイマーシブサラウンドで聴いて欲しいと強く感じています。サウンドバーを買う人も、できればそうしたマルチチャンネルのサラウンドシステムを体験していただきたいですね。便利ではあってもサウンドバーがすべてではないですから」。
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