公開日 2022/09/06 16:46
最高ランクの”深冷処理”で壁コンセントの音質はどう変わる? 5人の評論家が聴き比べ
サブゼロ処理研究所「HST-Concent」。PHILE WEB.SHOPで販売中
サブゼロ処理研究所が手掛ける深冷処理サービス、HST(ハイパー・サブゼロ・トリートメント)。この処理の最高ランクにあたるSE処理の効果を手軽に体験することのできる電源コンセントとプレートのセットが発売された。当サイト内のウェブショップ「PHILE WEB.SHOP」でも取り扱い中だ。オーディオアクセサリー185号では、井上千岳氏がその音質効果を体験しているが、最新号186号では同氏も含めた5人のオーディオ評論家が登場。ノーマル(未処理)、BASIC処理(24時間の工程)、EXC処理(48時間の工程)、SE処理(48時間の工程管理+内部応力減少を目的とした特殊処理)の4つの仕様を体験した。
超低温処理にサブゼロ処理、クライオ処理(マイナス100℃以下の超サブゼロ)と呼ばれるものがある。オーディオの世界でもこの強制的に冷却する処理技術で物性を改良する手法がよく使われている。例えば部品の金属部の内部には物性にむらが残留しているため、最高の状態にすることを狙い、精密部品にはサブゼロ処理がされていると聞いた。かつて、超低温処理について調べると高級ナイフや一流職人の使う包丁は、この工程がないと切れ味に影響し使いものにならないことを専門誌で読み、重要な意味があることを知る。
しかし、オーディオ部材ではどんな音質的な変化が現れるのか? 処理前後の音の違いを知っておきたい。そこで今回、サブゼロ処理研究所が壁コンセント「HST-Concent(SE)-A」を発売するにあたり、コンセントのオリジナルの状態と処理時間の違う3つのグレードが比較できる電源タップを用意してくれた。非常に興味深い試聴テストとなった。
ノーマル(未処理)の状態でも、高音のアクセントがはっきりしている。解像度は低音も高音も高く、その切れ味のよさにちょっと驚く。レスポンスと鮮明さに優れていて、オーディオ用途で十分に使える。むろんサブゼロは錬金術ではないので、元の状態の性能はしっかりしている必要があるので、これは幸先がいい。
24時間処理のBASICは低域に量感が出てローバランスに変化する。一方、48時間処理のEXCは抜けがよく帯域全体に締まりを効かせ精度が高くなる。バランスはBASICから激変した。ヴォーカルは透明度が高い。オリジナルよりも強調感が減少して、クオリティと解像度が改善されたことがわかる。ただ十分な印象もあるが100点とは思えない。中間帯域がまだぬるい表現がある。中高音の切れ味も最高ではない。
これは48時間処理に内部応力を減少させる特殊処理がされている。試聴するとバランスやエネルギー分布、解像度はほとんど完璧に思う。音質はEXCの延長線になるが、精度が格段に高く疑問を感じさせない。このSN比とスピードのあるレスポンス、精度の高さは素晴らしい。トランジェントに優れ、表現は生きいきと光っている。クセは消滅。低音は強力なダンピングの効いたエネルギー。音像の表現は前進してくるような勢いがある。これは驚いた。
サブゼロ研究所のHST処理にはどのジャンルにも共通した特徴があって、処理を重ねるごとに正しい方向へと収束してゆく。まずレスポンスが均質化して偏りがなくなり、ノイズが減少して情報量が増す。ダイナミズムが広がり、瞬発力と輪郭が明瞭になり、そして焦点が定まって空間的な位置感が見えてくるという具合である。
このコンセントの場合はSEバージョンという最も深い処理が行われているため、上記のような特徴がことごとく備わっている。開発段階で未処理のものからベーシック、エクセレント、SEと全て順を追って聴いているので、その変わり方もよくわかっているつもりだが、SEでの変わり方は最初の状態とはまるで別物のような印象である。
ディテールの表情や音場の実在感、起伏の大きさなど、どことなく曖昧だったものが全てがキリッと明快になってピントが合ってくる。霧の中から次第に景色が明らかになってくるような変わり方である。これはよく言われる音の変質とは全く逆で、音が正しくなった結果であることを強調しておきたい。
内部応力の除去を目的としたSE処理は、とりわけ、楽器同士の間合いが一層的確に引き出され、それぞれの存在ひとつひとつが解れて空間へと展開される効果が快い。演奏の持っている空気感が倍増するような心地よさがあるのだ。同時に、一音一音の余韻が心地よく伸び、音楽演奏に溌剌とした、生き生きとしたエネルギー感が生み出される快さを楽しめる。
この度の試聴テストでは、アメリカン電機製「7110GD」コンセントが取り付けられた4つの同じ電源ボックスに対して、サブゼロ処理研究所による深冷処理「HST処理」が、未処理のもの、1サイクルのHST処理「BASIC」を施したもの、2サイクルのHST処理「EXCELENT」を施したもの、そして、そこへ「SE処理」を施したものを順に聴き比べた。それらは、処理時間が長くなるほどに、音楽のスケール感や空間の奥行きが広がっていくような効果が確認できたが、そこへSE処理が加わると、単なる明瞭さや音数の多さ、歪感の解消に加えて、先述のような空気感の表現が引き出されたことが印象的であった。
サブゼロ処理はこれまでいくつかのグッズで実験し、大変な好結果を得ている。これまでは24時間処理のベーシックと48時間処理のエクセレントがあったが、このたび新しいSEという処理方法が確立したとのこと。自宅でコンセントを試すことが叶った。全く同じ構成でコンセントのみ処理を違えた電源ボックスを4種類用意してもらい、音を聴き比べる。
まず未処理のものを聴いてベーシックに挿し替えると、ナロウレンジで縮こまった感じだったのが一気に解き放たれ、「そうそう、音楽を聴くならこうでなくちゃ」と思わず膝を叩く。次にエクセレントにしたら、今度は音の厚みと実体感が大幅に高まり、音楽が胸に迫ってくる。この差も未聴の人が想像されるより遥かに大きい。
さらにエクセレントからSEへ替えると僅かに音圧感が下がるが、これは歪率が一段と減少したためだろう。音場はクリーンに磨き上げられ、しかも音楽に一切の欠落感がない。抜けが良く爽やかで、清楚さと骨太さを併せ持つハイファイという印象だ。サブゼロ処理の新境地といってよいだろう。
HSTと呼ぶ低温処理サービスを行うサブゼロ研究所から、オーディオグレード壁コンセントが登場した。48時間の極低温処理を基本設計とし、新たな物質処理であるSE処理をプラス。内部応力を大幅に低減してさらなる高音質化をはかるものだ。
金属が成形される際に高い圧力がかかり、場所によって組織の構造が違う。それを均一にするために内部応力の歪みをとるわけだが、その方法はいくつかあるそうだ。詳細は非公開だが、今回のコンセントにはステンレスのプレートも含めて、このSEバージョンの処理が行われている。コンセントはアメリカン電気社製だ。
ここでは未処理とSEを含めた3パターンの処理済みとで比較しよう。電気の流れが改善され、動作精度が向上。同社HST処理に共通の傾向であるが、特にSE処理は歪みや滲み、モヤつきもことごとく退散。声楽や管弦楽など、体感S/Nや透明度。さらに解像力がぐんと高まり、音場の底まで見透かしたような深い音楽体験ができるのだ。純度が高いままジャズはキレ味よくパワフルに立ち上がった。SEは学ぶべきことが多い。内部応力対策はこれからオーディオの世界で必須となろう。その先鞭をつけた画期的な処理技術だ。
オリジナルの状態を基に3グレードの処理を比較 / 福田雅光
超低温処理にサブゼロ処理、クライオ処理(マイナス100℃以下の超サブゼロ)と呼ばれるものがある。オーディオの世界でもこの強制的に冷却する処理技術で物性を改良する手法がよく使われている。例えば部品の金属部の内部には物性にむらが残留しているため、最高の状態にすることを狙い、精密部品にはサブゼロ処理がされていると聞いた。かつて、超低温処理について調べると高級ナイフや一流職人の使う包丁は、この工程がないと切れ味に影響し使いものにならないことを専門誌で読み、重要な意味があることを知る。
しかし、オーディオ部材ではどんな音質的な変化が現れるのか? 処理前後の音の違いを知っておきたい。そこで今回、サブゼロ処理研究所が壁コンセント「HST-Concent(SE)-A」を発売するにあたり、コンセントのオリジナルの状態と処理時間の違う3つのグレードが比較できる電源タップを用意してくれた。非常に興味深い試聴テストとなった。
ノーマル(未処理)の状態でも、高音のアクセントがはっきりしている。解像度は低音も高音も高く、その切れ味のよさにちょっと驚く。レスポンスと鮮明さに優れていて、オーディオ用途で十分に使える。むろんサブゼロは錬金術ではないので、元の状態の性能はしっかりしている必要があるので、これは幸先がいい。
24時間処理のBASICは低域に量感が出てローバランスに変化する。一方、48時間処理のEXCは抜けがよく帯域全体に締まりを効かせ精度が高くなる。バランスはBASICから激変した。ヴォーカルは透明度が高い。オリジナルよりも強調感が減少して、クオリティと解像度が改善されたことがわかる。ただ十分な印象もあるが100点とは思えない。中間帯域がまだぬるい表現がある。中高音の切れ味も最高ではない。
これは48時間処理に内部応力を減少させる特殊処理がされている。試聴するとバランスやエネルギー分布、解像度はほとんど完璧に思う。音質はEXCの延長線になるが、精度が格段に高く疑問を感じさせない。このSN比とスピードのあるレスポンス、精度の高さは素晴らしい。トランジェントに優れ、表現は生きいきと光っている。クセは消滅。低音は強力なダンピングの効いたエネルギー。音像の表現は前進してくるような勢いがある。これは驚いた。
全てがキリッと明快になる。まるで別物のような効果 / 井上千岳
サブゼロ研究所のHST処理にはどのジャンルにも共通した特徴があって、処理を重ねるごとに正しい方向へと収束してゆく。まずレスポンスが均質化して偏りがなくなり、ノイズが減少して情報量が増す。ダイナミズムが広がり、瞬発力と輪郭が明瞭になり、そして焦点が定まって空間的な位置感が見えてくるという具合である。
このコンセントの場合はSEバージョンという最も深い処理が行われているため、上記のような特徴がことごとく備わっている。開発段階で未処理のものからベーシック、エクセレント、SEと全て順を追って聴いているので、その変わり方もよくわかっているつもりだが、SEでの変わり方は最初の状態とはまるで別物のような印象である。
ディテールの表情や音場の実在感、起伏の大きさなど、どことなく曖昧だったものが全てがキリッと明快になってピントが合ってくる。霧の中から次第に景色が明らかになってくるような変わり方である。これはよく言われる音の変質とは全く逆で、音が正しくなった結果であることを強調しておきたい。
明瞭さや音数の多さに加えて、空気感の表現までも引き出す / 生形三郎
内部応力の除去を目的としたSE処理は、とりわけ、楽器同士の間合いが一層的確に引き出され、それぞれの存在ひとつひとつが解れて空間へと展開される効果が快い。演奏の持っている空気感が倍増するような心地よさがあるのだ。同時に、一音一音の余韻が心地よく伸び、音楽演奏に溌剌とした、生き生きとしたエネルギー感が生み出される快さを楽しめる。
この度の試聴テストでは、アメリカン電機製「7110GD」コンセントが取り付けられた4つの同じ電源ボックスに対して、サブゼロ処理研究所による深冷処理「HST処理」が、未処理のもの、1サイクルのHST処理「BASIC」を施したもの、2サイクルのHST処理「EXCELENT」を施したもの、そして、そこへ「SE処理」を施したものを順に聴き比べた。それらは、処理時間が長くなるほどに、音楽のスケール感や空間の奥行きが広がっていくような効果が確認できたが、そこへSE処理が加わると、単なる明瞭さや音数の多さ、歪感の解消に加えて、先述のような空気感の表現が引き出されたことが印象的であった。
音楽に一切の欠落感がない。まさにサブゼロ処理の新境地 / 炭山アキラ
サブゼロ処理はこれまでいくつかのグッズで実験し、大変な好結果を得ている。これまでは24時間処理のベーシックと48時間処理のエクセレントがあったが、このたび新しいSEという処理方法が確立したとのこと。自宅でコンセントを試すことが叶った。全く同じ構成でコンセントのみ処理を違えた電源ボックスを4種類用意してもらい、音を聴き比べる。
まず未処理のものを聴いてベーシックに挿し替えると、ナロウレンジで縮こまった感じだったのが一気に解き放たれ、「そうそう、音楽を聴くならこうでなくちゃ」と思わず膝を叩く。次にエクセレントにしたら、今度は音の厚みと実体感が大幅に高まり、音楽が胸に迫ってくる。この差も未聴の人が想像されるより遥かに大きい。
さらにエクセレントからSEへ替えると僅かに音圧感が下がるが、これは歪率が一段と減少したためだろう。音場はクリーンに磨き上げられ、しかも音楽に一切の欠落感がない。抜けが良く爽やかで、清楚さと骨太さを併せ持つハイファイという印象だ。サブゼロ処理の新境地といってよいだろう。
音場の底まで見透かした、深い音楽体験ができる / 林 正儀
HSTと呼ぶ低温処理サービスを行うサブゼロ研究所から、オーディオグレード壁コンセントが登場した。48時間の極低温処理を基本設計とし、新たな物質処理であるSE処理をプラス。内部応力を大幅に低減してさらなる高音質化をはかるものだ。
金属が成形される際に高い圧力がかかり、場所によって組織の構造が違う。それを均一にするために内部応力の歪みをとるわけだが、その方法はいくつかあるそうだ。詳細は非公開だが、今回のコンセントにはステンレスのプレートも含めて、このSEバージョンの処理が行われている。コンセントはアメリカン電気社製だ。
ここでは未処理とSEを含めた3パターンの処理済みとで比較しよう。電気の流れが改善され、動作精度が向上。同社HST処理に共通の傾向であるが、特にSE処理は歪みや滲み、モヤつきもことごとく退散。声楽や管弦楽など、体感S/Nや透明度。さらに解像力がぐんと高まり、音場の底まで見透かしたような深い音楽体験ができるのだ。純度が高いままジャズはキレ味よくパワフルに立ち上がった。SEは学ぶべきことが多い。内部応力対策はこれからオーディオの世界で必須となろう。その先鞭をつけた画期的な処理技術だ。