HOME > ニュース > AV&ホームシアターニュース
公開日 2006/06/05 19:34
増田和夫が見た“Wooo”「W42P-HR9000」(1)高画質を支える数々の新技術
まず、エクステリアから見てみよう。本機のボディは、チューナー&録画部をTV本体に内蔵したオールインワンスタイルを継承している。一体型にすると、デザインをシンプルにできるほか、チューナー部と表示部を合体させることで、回路の集積化と高画質化が行いやすくなるというメリットも生れる。
別売のスイーベルラック/スタンドに設置すると、リモコンで左右30度にスイーベル(電動首振り)できる。リモコンのボタンを押すと、42V型の大画面がゆっくりと振り向く様子は、なかなか壮観だ。リビングのソファだけでなく、ダイニングテーブルでもTVを見たい、といった時に重宝するだろう。
操作してみるとGUIのレスポンスが良くなっているのがわかる。メインプロセッサの動作クロックが200MHzから333MHzに高速化され、チャンネル切り替えやEPG表示などの速度が向上しているのだ。操作性については次回以降で詳しく触れたいが、録画操作やクイックタイマー設定などが見直され、細かい操作性も向上している。
こだわりの1080ALISパネル
今回は高画質化の要となるプラズマパネルをメインにチェックしてみよう。
日立は早くからプラズマTVの開発に取り組んできたメーカーで、1998年に富士通日立プラズマディスプレイ社がPDPの開発に成功し、2000年にその技術を使って、日立製42型プラズマTVが発売されている。その日立が一貫して掲げてきた開発目標は、ハイビジョン放送の高解像度表示だ。このために選ばれたプラズマ方式が「ALIS」である。
ALIS方式のパネルは、図のように画素をインターレースで高密度に発光できる点が特徴となっている。この仕組みによって比較的小型のパネルでも表示解像度を上げやすく、比較的低コストで製造でき、高解像度化しても輝度を保ちやすい。また画素を交互に発光させるためパネル寿命が長く、省電力というメリットもある。これらの利点を活かして、他社プラズマの解像度がWVGA(横800×縦480ピクセル)であった2000年当時から、日立は1024×1024ピクセルの高解像度表示を実現していたのである。ALISは、インターレースで高解像度、つまりハイビジョン放送にぴったりのPDPといえるだろう。
そのALISパネルが、本機ではさらに進化している。従来モデルの解像度は1024×1024ピクセルだったが、本機は、さらに高解像度化された1024×1080ピクセルの「1080ALISパネル」を新たに採用しているのだ。縦1080ピクセルは、ハイビジョンの縦解像度と同じで、縦方向については画素変換なしにハイビジョン映像をそのまま表示可能だ。また、従来の1024ピクセルで隠されていたオーバースキャン領域も、隠さずにハイビジョンの全画面が表示できる。
フルHDとは言えないが、他社の42型プラズマTVの縦方向解像度が768ピクセル前後であることを考えると、縦1080の緻密さが本機のアドバンテージといえるだろう。一般的に言ってPDPでは画素を高密度化すると画面が暗くなってしまうが、本機は、高解像度でも明るいALISの特徴を活かして1400cd/m2の高輝度を実現している。暗室コントラストも4000対1と十分に高い。42V型の本機のほか、37V型モデルにも1080ALISパネルが採用されている。これら比較的小型なTVを高解像度化できるのが、ALISならではの技といえるだろう。そして1080ALISのもう一つの大きなメリットは、高解像度なTVをリーズナブルな価格で量産できることだ。売れ筋のプラズマTVと同じ価格帯で、他のプラズマより高解像度なハイビジョン映像が楽しめる。このコストパフォーマンスの良さが、本機の大きな魅力といえるだろう。日立のALISパネルへのこだわりが本機に結実しているのである。
贅沢な高画質回路を搭載した
1080ALISパネルを活かすために、高画質回路「PictureMasterHD」が新たに採用されている。この回路は、従来の7個のAV処理回路を2チップにまとめたLSIで、画像認識や3次元デジタルカラーマネジメントなど高度なデジタル信号処理を行っている。詳しくは視聴テストでチェックしたいが、最大16ビットの多階調デジタル処理は、疑似輪郭の低減や階調性の拡大に大きな効果をあげている。また、新開発の蛍光体と、色透過率の高い前面フィルターによって、色の再現性をNTSCの106%にまで拡大している。この色再現についても確実な効果を確認できた。サウンド関連では、番組ジャンルによって最適な音質イコライジングを選択する自動音声モードを新たに採用している。このように、回路の一新でAVクオリティを根本から見直している。
さらに内部を覗くと、将来の高機能化のために、OSが従来のμITORNから、高機能化しやすいLinuxに変更されている。また、効率的な映像ストリーム管理が可能なミドルウエア「HPSM」が新たに採用されている。このあたりは表に出ない部分だが、将来のネットワーク&インテリジェント化への布石といえるだろう。こうした点でも、本機は将来を見据えてニューアルされている。新シリーズに賭ける日立の意気込みが感じられるハードウエアといえるだろう。
(増田和夫)
増田和夫 プロフィール
パソコン&ネット歴十数年のベテランPC使い。PC雑誌やデジタル映像関係のメディアで活躍中。デジカメにも精通し、写真誌にスチル作品を発表するフォトグラファーでもある。 AV歴も長く、VTRは黎明期からβ・VHS共に熱中した大の録画機ファン。自宅ロフトでプロジェクターを楽しむ映画ファンでもある。DVDなどの記録媒体の記事にも強い。取材は現場主義で、ジャーナリスティックなインタビュー記事も得意としている。