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公開日 2007/06/28 14:44
話題のソフトを“Wooo”で観る − 第9回『パイレーツ・オブ・カリビアン』 (BD)
この連載「話題のソフトを“Wooo”で観る」では、AV評論家・大橋伸太郎氏が旬のソフトの見どころや内容をご紹介するとともに、“Wooo”薄型テレビで視聴した際の映像調整のコツなどについてもお伝えします。DVDソフトに限らず、放送や次世代光ディスクなど、様々なコンテンツをご紹介していく予定です。第9回はBlu-ray Discソフト『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズをお届けします。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』三部作は、遊園地のアトラクションから生まれた映画といわれるが、ウォルト・ディズニーのオールドファンが見ると必ずしもそうとはいえない。元来「海賊」は、アニメーションと実写作品の両方で、ディズニー映画の定番だった。『宝島』(1950)、『ピーターパン』(1953)、『黒ひげ大冒険』(1967)、ヴェルヌ原作のSFの先駆『海底二万哩』(1954)もそこに加えれば、どれだけディズニーが「海賊」や「海洋冒険」というテーマを好んで映画にしてきたかわかる。ディズニーランドの建設は1955年、しかも「カリブの海賊」がオープンしたのは少し後になってからだから、一連の映画が博した人気からアトラクションが生まれたといったほうが正しい。
もう一つの理由は、ディズニーランドのリピーターはご存知だろうが、アトラクション「カリブの海賊」は、17世紀から19世紀まで大西洋やカリブ海に出没して英米の海軍を悩ませた、エドワード・ティーチ、ジャン・ラフィートといった史実に実在した海賊たちをモデルに織り込み、ノスタルジックな世界観をふくらませて生まれた。しかし、映画版はそれと異なる独自のロマネスクと世界観を持っている。
つまり、映画版『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、ディズニーランドを訪れる大衆が楽しむアトラクションのイメージを巧みに活用しながら、ディズニー映画の本流にして「伝家の宝刀」的テーマに回帰した作品である。しかも、ロマンティックで長大な冒険活劇という骨格を堅持し、脇役に至るまで有名俳優を起用するなど膨大な製作費をつぎ込み、ここまでの大作に仕立てた。筆者が20年ちょっと昔、当時付き合っていた彼女に案内されて東京ディズニーランドを初めて訪れた時、彼女は真っ先に「カリブの海賊」のあの薄暗い洞窟へと筆者を引っ張り込み、耳元でこうささやいたのだった。「これが(ディズニーランドで)一番お金が掛かっているのよ!」
そう、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、大衆を裏切らなかった。だから、ディズニーの実写作品最大のヒット作になった。これをアトラクションから生まれたもう一つの映画『ホーンテッド・マンション』と比較してみるといい。『ホーンテッド…』ではディズニーは何を思ったか、現代アメリカを舞台にした小じんまりしたファミリー映画にしてしまい、同時代的なイメージの制約に陥って自滅するという愚を犯した。ディズニーランドは「時間のない国」だったはずだ。『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、『パール・ハーバー』でブエナビスタがコンビを組んだジェリー・ブラッカイマーによる独立プロ製作である。筆者の想像に過ぎないが、ブラッカイマーは大衆がディズニー映画に求めるものを、本家のディズニー以上に客観的に見ていたのではないか。
もう少し映画の世界観の内側に踏み込んでみよう。『パイレーツ・オブ・カリビアン』は娯楽映画にして、登場するキャラクターの造型がしっかりしている。第二作『デッドマンズ・チェスト』以降、登場人物に「善人」はみごとに一人もいなくなる。父を救出するために仲間を欺き為政者と取引するウィル・ターナー、令嬢の仮面をかなぐり捨て女海賊の血を滾らせるエリザベス・スワン、そう、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の魅力は悪の魅力である。その中心にジョニー・デップが飄々と演じるキャプテン・ジャック・スパロウがいる。ジョニー・デップが役作りにストーンズのキース・リチャーズをイメージしたことはよく知られていて、現在公開中の完結編『ワールド・エンド』にはキースが父親役で出演しているが、ローリング・ストーンズも「偽悪」を演じ悪の魅力で売ったバンドである。このあたりマジメなのかギャグなのかわからないが、とにかく首尾一貫した作品世界の基調統一があって、それがエネルギーになり、ヒットシリーズとなったのである。
今回、Blu-ray Discで第一作『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』と第二作『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』が同時発売された。後でも触れるが、MPEG4 AVCによる高画質盤である。二つを比較すると、ジョニー・デップ中心に物語が展開し、闇夜のシーンではダークな幻想美を楽しませる第一作に比較して、公開中の『ワールド・エンド』まで含め、三部作の中で最も評価が分かれる作品が二作目の『デッドマンズ・チェスト』である。「映画館で寝てしまった」、「DVDを早送りした」、そんな声も筆者の周りから聞いた。確かに前半の特に人食い人種との追いかけっこは冗長である。しかし、アトラクションから映画が抜け出し、ウィル・ターナーやエリザベス・スワンといった登場人物たちが本来の使命に目覚め、壮大な運命劇に変わる重要な中間章である。アルチンボルドの絵画から抜け出てきたような魚人間や、『海底二万哩』の深海の怪物がリメイクされたようなクラーケンなどヴィジュアルも楽しい。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』はここからが本番である。皆さんは家庭で一流映画館に負けない迫力あふれる上映に挑戦してほしい。
■Woooで見る『パイレーツ・オブ・カリビアン』
ブルーレイディスクの『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、MPEG2やVC-1に比較して画質面で明らかに優れるMPEG4 AVCを採用(第二作の映像特典では、俳優が出演してのダイスゲームで遊べるが、その映像もAVCである)しているが、この数ヶ月でAVC採用盤が急増し、ブルーレイソフトの画質平均が大きく向上している中でも、本作の映像は飛び抜けている。
AVC採用というだけではこれだけの画質は得られなかったはずだ。本作はテレシネをポジからでなくオリジナルネガをコンピューターに取り込んだDI(Digital Intermediate)データから行っている(『AVレビュー』7月号記事を参考)。つまり物理手段を介在させないオールデジタルワークである。その結果、どのような映像が得られたかというと、写真に例えるとわかりやすい。従来のハイビジョン映画ソフトがていねいに焼かれたカラープリントだとすれば、本作の映像は4×5のカラーポジフィルムである。それくらいクリアで透明感に溢れ、細部の情報のロスのない鮮度の高い映像なのである。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』は三作とも本編が2時間半を超える長丁場だが、映像の基調は、アトラクションのイメージを継承したノスタルジックでダークなシーン、ディズニーらしいグロテスクな幻想美、海洋アドベンチャーらしいカラフルで光に溢れたデイライトシーンが交錯し、クリアな透明感という特徴は共通である。この特徴を完璧に引き出す存在が、日立のフルハイビジョンテレビP50-XR01である。
筆者自宅の二階仕事場に5月に入ったばかりのP50-XR01は、「フルHD ALISパネル」(水平1920×垂直1080)を搭載し、1080p入力に対応した映像回路“Picture Master Full HD” が周辺を固める最新のフルハイビジョンテレビである。世界で初めてビルトイン/カートリッジ両方のiVDR-Sに対応したことも他にない特長である。P50-XR01の画質上の長所は何よりも明るさと情報量。1100cd/m2の高輝度と10000対1のコントラスト(暗所)性能を持ち、この輝度の余裕が50V型大画面を隅々まで光で充たし、先述の『パイレーツ・オブ・カリビアン』の透明感のある映像とピタリ一致、劇場のスクリーンに映し出される映像とは次元を異にした、なめらかで深い輝くばかりの映像を現出させる。
・P50-XR01調整のポイント
『パイレーツ・オブ・カリビアン』は二作とも大変に優れたハイビジョンディスクだが、固定画素のテレビで見る上での一般論として、第一作の再現がやや難しく、第二作の方が全編を安定して再現しやすいといえる。二作の間には製作年次に3年のずれがあるわけだが、ソフトにそれが反映されたのか単なる偶然かは不明。今回は再現のやや難しい第一作をテーマにしていこうと思う。
霧の中を航行する英国海軍船の船首に少女時代のエリザベスの全身が現れる冒頭のシーンは、プラズマテレビには一つの試金石になるシーンである。もともと階調表現の難しい女性の表情のクローズアップの上にさらに霧がかかっているのである。PDPのRGBの発光のタイミングが正確に揃っているか(トラッキング)、誤差拡散ノイズの抑制がきちんとできているかが一目瞭然でわかってしまう。それが出来ていないと霧に色むらが乗り、子役の表情の階調がベタッと潰れて見苦しくなる。この冒頭の難所を筆者宅のP50-XR01はきれいにクリアした。しかし、これだけの高画質ソフトを味わうなら、見る直前でなく早めに電源を入れて映像を安定させておくこと。これは3管式プロジェクターの時代から現在の液晶、プラズマテレビまで変わらないノウハウで、今回P50-XR01に関しても比較すると映像の安定度にかなりの差があった。
この後、ジェフリー・ラッシュ演じるキャプテン・バルボッサと乗組員の海賊たちが呪われた不死の宿命を露にする月夜のシーンがあり、次に白昼のカリブ海を進むブラックパール船上のシーンになる。第一作、二作を通じて明暗差を始め最も変化が激しいくだりだが、P50-XR01は下記の設定で難なくクリア、第二作もこのまま全編を心置きなく楽しめた。
【今回の設定値】
・映像モード:シネマティック
・明るさ:-3
・黒レベル:-2
・色の濃さ:-6
・色合い:+2
・画質:-4
・色温度:低
・ディテール:切
・コントラスト:リニア
・黒補正・LTI・CTI・YNR・CNR:切
・3次元Y/C
・MPEG NR:切
・映像クリエーション:なめらかシネマ
・デジタルY/C:入
・色再現:リアル
(大橋伸太郎)
大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数2006年に評論家に転身。趣味はウィーン、ミラノなど海外都市訪問をふくむコンサート鑑賞、アスレチックジム、ボルドーワイン。
バックナンバー
・第1回『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』
・第2回『アンダーワールド2 エボリューション』
・第3回『ダ・ヴィンチ・コード』
・第4回『イノセンス』 (Blu-ray Disc)
・第5回『X-MEN:ファイナル デシジョン』 (Blu-ray Disc)
・第6回『16ブロック』 (Blu-ray Disc)
・第7回『イルマーレ』 (Blu-ray Disc)
・第8回スーパーマン』シリーズ (Blu-ray Disc)
『パイレーツ・オブ・カリビアン』三部作は、遊園地のアトラクションから生まれた映画といわれるが、ウォルト・ディズニーのオールドファンが見ると必ずしもそうとはいえない。元来「海賊」は、アニメーションと実写作品の両方で、ディズニー映画の定番だった。『宝島』(1950)、『ピーターパン』(1953)、『黒ひげ大冒険』(1967)、ヴェルヌ原作のSFの先駆『海底二万哩』(1954)もそこに加えれば、どれだけディズニーが「海賊」や「海洋冒険」というテーマを好んで映画にしてきたかわかる。ディズニーランドの建設は1955年、しかも「カリブの海賊」がオープンしたのは少し後になってからだから、一連の映画が博した人気からアトラクションが生まれたといったほうが正しい。
もう一つの理由は、ディズニーランドのリピーターはご存知だろうが、アトラクション「カリブの海賊」は、17世紀から19世紀まで大西洋やカリブ海に出没して英米の海軍を悩ませた、エドワード・ティーチ、ジャン・ラフィートといった史実に実在した海賊たちをモデルに織り込み、ノスタルジックな世界観をふくらませて生まれた。しかし、映画版はそれと異なる独自のロマネスクと世界観を持っている。
つまり、映画版『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、ディズニーランドを訪れる大衆が楽しむアトラクションのイメージを巧みに活用しながら、ディズニー映画の本流にして「伝家の宝刀」的テーマに回帰した作品である。しかも、ロマンティックで長大な冒険活劇という骨格を堅持し、脇役に至るまで有名俳優を起用するなど膨大な製作費をつぎ込み、ここまでの大作に仕立てた。筆者が20年ちょっと昔、当時付き合っていた彼女に案内されて東京ディズニーランドを初めて訪れた時、彼女は真っ先に「カリブの海賊」のあの薄暗い洞窟へと筆者を引っ張り込み、耳元でこうささやいたのだった。「これが(ディズニーランドで)一番お金が掛かっているのよ!」
そう、映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、大衆を裏切らなかった。だから、ディズニーの実写作品最大のヒット作になった。これをアトラクションから生まれたもう一つの映画『ホーンテッド・マンション』と比較してみるといい。『ホーンテッド…』ではディズニーは何を思ったか、現代アメリカを舞台にした小じんまりしたファミリー映画にしてしまい、同時代的なイメージの制約に陥って自滅するという愚を犯した。ディズニーランドは「時間のない国」だったはずだ。『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、『パール・ハーバー』でブエナビスタがコンビを組んだジェリー・ブラッカイマーによる独立プロ製作である。筆者の想像に過ぎないが、ブラッカイマーは大衆がディズニー映画に求めるものを、本家のディズニー以上に客観的に見ていたのではないか。
もう少し映画の世界観の内側に踏み込んでみよう。『パイレーツ・オブ・カリビアン』は娯楽映画にして、登場するキャラクターの造型がしっかりしている。第二作『デッドマンズ・チェスト』以降、登場人物に「善人」はみごとに一人もいなくなる。父を救出するために仲間を欺き為政者と取引するウィル・ターナー、令嬢の仮面をかなぐり捨て女海賊の血を滾らせるエリザベス・スワン、そう、『パイレーツ・オブ・カリビアン』の魅力は悪の魅力である。その中心にジョニー・デップが飄々と演じるキャプテン・ジャック・スパロウがいる。ジョニー・デップが役作りにストーンズのキース・リチャーズをイメージしたことはよく知られていて、現在公開中の完結編『ワールド・エンド』にはキースが父親役で出演しているが、ローリング・ストーンズも「偽悪」を演じ悪の魅力で売ったバンドである。このあたりマジメなのかギャグなのかわからないが、とにかく首尾一貫した作品世界の基調統一があって、それがエネルギーになり、ヒットシリーズとなったのである。
今回、Blu-ray Discで第一作『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』と第二作『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』が同時発売された。後でも触れるが、MPEG4 AVCによる高画質盤である。二つを比較すると、ジョニー・デップ中心に物語が展開し、闇夜のシーンではダークな幻想美を楽しませる第一作に比較して、公開中の『ワールド・エンド』まで含め、三部作の中で最も評価が分かれる作品が二作目の『デッドマンズ・チェスト』である。「映画館で寝てしまった」、「DVDを早送りした」、そんな声も筆者の周りから聞いた。確かに前半の特に人食い人種との追いかけっこは冗長である。しかし、アトラクションから映画が抜け出し、ウィル・ターナーやエリザベス・スワンといった登場人物たちが本来の使命に目覚め、壮大な運命劇に変わる重要な中間章である。アルチンボルドの絵画から抜け出てきたような魚人間や、『海底二万哩』の深海の怪物がリメイクされたようなクラーケンなどヴィジュアルも楽しい。映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』はここからが本番である。皆さんは家庭で一流映画館に負けない迫力あふれる上映に挑戦してほしい。
■Woooで見る『パイレーツ・オブ・カリビアン』
ブルーレイディスクの『パイレーツ・オブ・カリビアン』は、MPEG2やVC-1に比較して画質面で明らかに優れるMPEG4 AVCを採用(第二作の映像特典では、俳優が出演してのダイスゲームで遊べるが、その映像もAVCである)しているが、この数ヶ月でAVC採用盤が急増し、ブルーレイソフトの画質平均が大きく向上している中でも、本作の映像は飛び抜けている。
AVC採用というだけではこれだけの画質は得られなかったはずだ。本作はテレシネをポジからでなくオリジナルネガをコンピューターに取り込んだDI(Digital Intermediate)データから行っている(『AVレビュー』7月号記事を参考)。つまり物理手段を介在させないオールデジタルワークである。その結果、どのような映像が得られたかというと、写真に例えるとわかりやすい。従来のハイビジョン映画ソフトがていねいに焼かれたカラープリントだとすれば、本作の映像は4×5のカラーポジフィルムである。それくらいクリアで透明感に溢れ、細部の情報のロスのない鮮度の高い映像なのである。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』は三作とも本編が2時間半を超える長丁場だが、映像の基調は、アトラクションのイメージを継承したノスタルジックでダークなシーン、ディズニーらしいグロテスクな幻想美、海洋アドベンチャーらしいカラフルで光に溢れたデイライトシーンが交錯し、クリアな透明感という特徴は共通である。この特徴を完璧に引き出す存在が、日立のフルハイビジョンテレビP50-XR01である。
筆者自宅の二階仕事場に5月に入ったばかりのP50-XR01は、「フルHD ALISパネル」(水平1920×垂直1080)を搭載し、1080p入力に対応した映像回路“Picture Master Full HD” が周辺を固める最新のフルハイビジョンテレビである。世界で初めてビルトイン/カートリッジ両方のiVDR-Sに対応したことも他にない特長である。P50-XR01の画質上の長所は何よりも明るさと情報量。1100cd/m2の高輝度と10000対1のコントラスト(暗所)性能を持ち、この輝度の余裕が50V型大画面を隅々まで光で充たし、先述の『パイレーツ・オブ・カリビアン』の透明感のある映像とピタリ一致、劇場のスクリーンに映し出される映像とは次元を異にした、なめらかで深い輝くばかりの映像を現出させる。
・P50-XR01調整のポイント
『パイレーツ・オブ・カリビアン』は二作とも大変に優れたハイビジョンディスクだが、固定画素のテレビで見る上での一般論として、第一作の再現がやや難しく、第二作の方が全編を安定して再現しやすいといえる。二作の間には製作年次に3年のずれがあるわけだが、ソフトにそれが反映されたのか単なる偶然かは不明。今回は再現のやや難しい第一作をテーマにしていこうと思う。
霧の中を航行する英国海軍船の船首に少女時代のエリザベスの全身が現れる冒頭のシーンは、プラズマテレビには一つの試金石になるシーンである。もともと階調表現の難しい女性の表情のクローズアップの上にさらに霧がかかっているのである。PDPのRGBの発光のタイミングが正確に揃っているか(トラッキング)、誤差拡散ノイズの抑制がきちんとできているかが一目瞭然でわかってしまう。それが出来ていないと霧に色むらが乗り、子役の表情の階調がベタッと潰れて見苦しくなる。この冒頭の難所を筆者宅のP50-XR01はきれいにクリアした。しかし、これだけの高画質ソフトを味わうなら、見る直前でなく早めに電源を入れて映像を安定させておくこと。これは3管式プロジェクターの時代から現在の液晶、プラズマテレビまで変わらないノウハウで、今回P50-XR01に関しても比較すると映像の安定度にかなりの差があった。
この後、ジェフリー・ラッシュ演じるキャプテン・バルボッサと乗組員の海賊たちが呪われた不死の宿命を露にする月夜のシーンがあり、次に白昼のカリブ海を進むブラックパール船上のシーンになる。第一作、二作を通じて明暗差を始め最も変化が激しいくだりだが、P50-XR01は下記の設定で難なくクリア、第二作もこのまま全編を心置きなく楽しめた。
【今回の設定値】
・映像モード:シネマティック
・明るさ:-3
・黒レベル:-2
・色の濃さ:-6
・色合い:+2
・画質:-4
・色温度:低
・ディテール:切
・コントラスト:リニア
・黒補正・LTI・CTI・YNR・CNR:切
・3次元Y/C
・MPEG NR:切
・映像クリエーション:なめらかシネマ
・デジタルY/C:入
・色再現:リアル
(大橋伸太郎)
大橋伸太郎 プロフィール
1956 年神奈川県鎌倉市生まれ。早稲田大学第一文学部卒。フジサンケイグループにて、美術書、児童書を企画編集後、(株)音元出版に入社、1990年『AV REVIEW』編集長、1998年には日本初にして現在も唯一の定期刊行ホームシアター専門誌『ホームシアターファイル』を刊行した。ホームシアターのオーソリティとして講演多数2006年に評論家に転身。趣味はウィーン、ミラノなど海外都市訪問をふくむコンサート鑑賞、アスレチックジム、ボルドーワイン。
バックナンバー
・第1回『ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女』
・第2回『アンダーワールド2 エボリューション』
・第3回『ダ・ヴィンチ・コード』
・第4回『イノセンス』 (Blu-ray Disc)
・第5回『X-MEN:ファイナル デシジョン』 (Blu-ray Disc)
・第6回『16ブロック』 (Blu-ray Disc)
・第7回『イルマーレ』 (Blu-ray Disc)
・第8回スーパーマン』シリーズ (Blu-ray Disc)