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公開日 2013/02/28 18:56

8K SHV放送、20年に開始へ − “奇跡のスケジュール”へ「オールジャパン体制」

スマートテレビのオープンアプリ環境構築も
ファイル・ウェブ編集部
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「放送サービスの高度化に関する検討会」が開かれた
総務省は、2020年にも8Kのスーパーハイビジョン本放送を開始する方針を固めた。

総務省が28日に開催した「放送サービスの高度化に関する検討会」第2回会合で、スーパーハイビジョンの8K放送について、2020年の本放送開始を目標としたロードマップが示された。従来8K放送は、NHKが2020年の試験放送開始を目標として掲げていたが、これを大きく前倒しする。

同検討会には、NHKや在京民放各局、スカパー!、WOWOW、KDDI、日本ケーブルテレビ連盟など放送関連会社のほか、AVメーカーではソニー、パナソニック、東芝が参加。また東大や東北大などで教鞭を執る学識者も参加している。

8Kのスーパーハイビジョンは昨年8月、ITU-R勧告BT.2020として承認され、テレビの国際規格として本格的に動き始めた。画素数は最大で水平7,680×垂直4,320、1秒あたりのフレーム数は60で、表示は毎秒120フレームが可能。さらに色域も現在の放送に比べ飛躍的に広がる。また音声についても、最大22.2chのサラウンドが規格化されている。

今回の検討会では、同検討会のうち、8K/4K放送に関する課題に取り組むワーキンググループの検討結果が報告された。これまで3回の会合を開き、8K/4K放送について検討してきたという。

報告では「技術の進展や他国の状況などを考えると、我が国でも8Kや4Kについてスピード感を持って取り組んでいく必要がある」と説明。技術面ではHEVCなど映像圧縮技術が進化していることを挙げ、他国の状況については、2014年にも欧米で4K放送が開始される可能性が指摘されているとした。さらに韓国では2012年10月に地上波で4K放送の実験が行われたほか、2014年や2018年のスポーツイベントに合わせた4K放送の実現に向け作業を進めている情報があるとも付け加えた。

このような状況からワーキングループの主査は、4Kや8K放送について「可能な限り早期に、視聴者へ提供することが望ましく、また過去の歴史を振り返って検討しても、開始時期は大規模なスポーツイベントの実施時期が適している」と主張した。

こういった背景をもとに、8K放送、4K放送の具体的なロードマップとして、2014年のブラジル・ワールドカップでは関心を持つユーザーが4Kを体験できる環境を、2016年には関心を持つユーザーが8Kを体験できる環境を、それぞれ整備することを目安として提示。さらに2020年のオリンピックの時点では、8Kと4Kをともに視聴できるテレビの普及を図ることを、時期的な目標として取り組んでいく。

当面、8K/4K放送の伝送にはCSやCATV、IPTVなどを活用する計画。ただし衛星で今後新たな空き周波数が確保されるなど、既存の視聴者に影響を与えない範囲で新サービスを導入できる環境が整った場合は、別途検討する。

当初の予定を相当前倒しすることから、「実現には時間的にかなりタイトになることが考えられる」とも指摘。このため官民が協力し、オールジャパン体制で人的・資金的リソースを集約することが必要とし、具体的には「放送事業者や受信機メーカーなど、関係事業者が参加した組織を新たに設立し、その組織を主体にして技術や設備、コンテンツの確保を図っていくことが望ましい」と報告した。

このスケジュールについて日本テレビの石澤氏は「ユーザーの本当のニーズに応えながら、スケジュールを前倒ししようというのは、奇跡を起こそうということと同じ」と発言。この発言を受け、検討会の座長を務める東京大学の須藤氏は、「まさに奇跡のようなスケジュールで、オールジャパン体制で奇跡を起こす必要がある」と述べた。また別の委員からは「我々日本はこれまでいくつもの奇跡を成し遂げてきた国」との発言もあった。

■スマートテレビはオープンなアプリ開発環境を提言

本日の会合では、スマートテレビに関する今後の方針も示された。スマートテレビに関する議論を行っているワーキンググループは、「すでにグローバルで様々なメーカーが発売しているスマートテレビとの差別化を図るためには、スマートテレビ向けに、放送番組と連動したアプリが開発されることが必要」と指摘した。

具体的には、オープンなアプリ開発環境を整備することが必要とし、多彩なアプリがサードパーティーからも多数作られる環境整備が重要とした。アプリの基盤技術にはHTML5を利用する。

放送サービスや受信機は、SI(Service Information)情報など、放送経由で提供される各種情報をアプリで利用できるようにすること、放送局のサーバーから通信で提供される各種情報もアプリで活用できるようにすることが必要と指摘。またこれらの情報を活用しながら、番組単位またはタイムコード単位でアプリを自動更新できるようにする重要性も強調した。

具体的なサービスイメージとしては、放送で送られてくる映像に、HTML5で関連情報を表示することや、放送波から送られてくるイベントメッセージのタイミングで、関連情報をタブレットに表示することなどを想定している。

なお検討会では、オープンな環境を整備しながら、同時に安全性や安心を確保することも重要とし、緊急警報などの妨害やなりすましなどを回避するため、アプリの動作を一定の条件で管理し、動作範囲を制御する技術的な仕組みを採り入れる必要があるとも指摘した。

■検討会各委員のコメント

今回の検討会についての、各出席者からの主なコメントは以下の通り。

ソニー 島田氏「スーパーハイビジョンをオールジャパンとして進めてもらえるのは喜ばしい。受信機はもちろんだが、ソニーとしてはカメラや放送機器についても開発を行いたい。またスマートテレビの報告についても、テレビの高付加価値化を進めるのに大変嬉しい施策。早く実現させて欲しい」。

パナソニック 宮部氏「放送のさらなる発展は重要なこと。ワーキンググループで示されたロードマップを実現できるよう、最大限努力していきたい。メーカーだけでは出来ない部分、たとえばコンテンツの充実などについてもしっかりと歩調を合わせてやっていきたい」。

東芝 安木氏「ユーザーが感動を実感できるような技術的パラメーターを実現して欲しい。8K放送は世界に先駆けた放送になる。コンテンツ充実のための取り組みにも力を入れて欲しい」。

NTT「8Kや4Kについては、通信事業者として、伝送路をしっかりと整備していきたい」。

KDDI 高橋氏「8K、4Kの開始時期については、とてもアグレッシブなスケジュール。しっかりと対応していきたい。CATV事業者としても積極的に取り組んでいきたい」。

WOWOW 和崎氏「放送の中でも衛星放送は半歩先を歩んできた。そういう意味で、スーパーハイビジョン、スマートテレビに注目している。今回のスーパーハイビジョンのロードマップは非常にアグレッシブ。ただし画質だけではなかなか視聴者に届かないだろう。これにスマートテレビといった付加価値を組み合わせ、視聴者に魅力を感じてもらうことが必要。また、ビジネススキームが成立するかも重要で、今後の課題となるだろう」。

スカパー! JSAT 高田氏「まず、早く始めることが必要。そのためにはハードとソフト、オールジャパン体制が必要となる」。

TBS 信国氏「放送コンテンツの高画質化は世界のトレンド。4K映像を多数見たが、非常に魅力的。今回の流れは支持したい。ただし、視聴者の負担を避けることにも留意してもらいたく、これは放送事業者としても同様。バランスを取って進めていただきたい。また、2K→4K→8Kの移行についても積極的に議論に加わっていきたい」。

日本テレビ 石澤氏「ユーザーの本当のニーズに応えながら、スケジュールを前倒ししようというのは、奇跡を起こそうという事と同じように思える。だが、これが世界の流れであることも事実。オールジャパン体制で奇跡を起こせるよう、我が社も貢献したい」。

フジテレビ 関氏「最近スーパーハイビジョンの社内デモを行ったが、番組制作側の反応が良かった。スマートテレビについては、放送事業者としてアプリ開発に力を入れたい」。

NHK 久保田氏「ロードマップについては、まだ議論すべきことが色々とあるが、このロードマップを達成できるよう積極的に取り組んでいきたい。オールジャパン体制を作り上げることが重要だ」。

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