公開日 2012/11/13 09:52
パイオニア「A-70」レビュー − USB-DAC機能を備えた2chデジタルプリメイン上位機
「音楽と距離の近い」音を聴ける、
新素子採用クラスDアンプ搭載機
A-70のさまざまな造り方を見るにつけ、惚れ惚れするような機能美を感じる。内部は3分割され、フロントパネル側から見て左側に電源部、右側にプリアンプ部、そして中央部にパワーアンプ部というように整然と、画然と配置されているのだ。厚い鋼板を使ったリジット・アンダー・ベースなど、がっちりしたシャーシやなるべく低いところに基板を配置する低重心化も音に効いてくるところだ。背面左側からAC100Vが入り整流され、右側から信号系を入力。それらが中央のパワーアンプ部で増幅されてスピーカーに送り込まれる流れ。もちろん、各ブロック間のノイズ干渉を防ぐ役割があるし、そういった意味ではパワー部とプリ部にはそれぞれ独立した電源トランスも搭載している。
また、電源系の流れと、信号系の流れを最適化することで、配線自体を短くしているのも興味深い。ふだんあまり意識しないが回路の中で電気や音楽信号はいろんなパーツを通り、基板や配線の導電部を伝わってくる。その距離によってアンプの音は変わる。大きなアンプはそういう音がするし、電源や信号径路を短く、シンプルにしたアンプは劣化や歪みの少ない、「音楽との距離の近い」音を聴けるように思う、ちょっと短絡的だが。
そういったレイアウトを可能にしているがパワーアンプ部にクラスDアンプを選択したからだ。新たに開発した小型で発熱の少ない出力素子「Direct Power FET」を使っている。エネルギー変換効率に優れているのは言うまでもないがその存在によってこうしたレイアウトが可能になったとも言える。
PCやレコードなど多彩なソースに対応
また、A-70の大きな特徴とも言えるのがUSB入力を持ち、USB-DAC機能を備えている点だ。ちなみに採用しているDACデバイスはESS社製SABRE32。他にも2系統の同軸デジタル入力やアナログレコードを聴けるMM/MCフォノイコライザーを備える多機能なアンプだ。
PCとUSBケーブルで接続して、その音質をチェックしてみた。透明感の高い、端正なトーンが基調だ。スピーカーのウーファーを動かす駆動力が強く、輪郭のはっきりとした、あえて言えば馬力感のある低音が印象的だ。中高音域に存在感の高い帯域があり、それが音像の輪郭を積極的に描いてくる点もキャラが立っている。以前のパイオニアの、しなやかで透明感のある音から一歩踏み出して、より積極的な音、積極的な音楽表現を獲得しているのだ。訊けば、イギリスの名門「AIR STUDIOS」のサウンドエンジニアたちとパイオニアの設計者によるセッションを実施して、緻密な音質のチューニングも施しているという。
アナログ入力の音もチェックするということで、パイオニアの新しいデジタルプレーヤーPD-70からの音も聴いてみた。CDでもSACDでも音色的な深みやなめらかさを感じさせてくれる。どこか余裕のある感じはPD-70のポテンシャルだろうか。SN感が良く、元のソフトに入っている情報を鮮度感高く聴かせてくれるのだ。大編成のオーケストラでのダイナミックレンジの広さや低域の力感など、PD-70の良さとA-70の総合力、相乗効果を感じた。e-onkyo musicでダウンロードしたDSDデータをDVDに焼いて作ったDSDディスクを再生すると、DSDらしい、空気感のきわめて充実した、しなやかな音の傾向だった。
クラスDアンプと言ってもいろいろな製品が存在するが、この音には可能性を感じる。A-70はソースメディアの多い今の時代に対応し、パイオニアの新世代の音を感じさせる完成度の高い製品とリポートしたい。
(鈴木 裕)
新素子採用クラスDアンプ搭載機
A-70のさまざまな造り方を見るにつけ、惚れ惚れするような機能美を感じる。内部は3分割され、フロントパネル側から見て左側に電源部、右側にプリアンプ部、そして中央部にパワーアンプ部というように整然と、画然と配置されているのだ。厚い鋼板を使ったリジット・アンダー・ベースなど、がっちりしたシャーシやなるべく低いところに基板を配置する低重心化も音に効いてくるところだ。背面左側からAC100Vが入り整流され、右側から信号系を入力。それらが中央のパワーアンプ部で増幅されてスピーカーに送り込まれる流れ。もちろん、各ブロック間のノイズ干渉を防ぐ役割があるし、そういった意味ではパワー部とプリ部にはそれぞれ独立した電源トランスも搭載している。
また、電源系の流れと、信号系の流れを最適化することで、配線自体を短くしているのも興味深い。ふだんあまり意識しないが回路の中で電気や音楽信号はいろんなパーツを通り、基板や配線の導電部を伝わってくる。その距離によってアンプの音は変わる。大きなアンプはそういう音がするし、電源や信号径路を短く、シンプルにしたアンプは劣化や歪みの少ない、「音楽との距離の近い」音を聴けるように思う、ちょっと短絡的だが。
そういったレイアウトを可能にしているがパワーアンプ部にクラスDアンプを選択したからだ。新たに開発した小型で発熱の少ない出力素子「Direct Power FET」を使っている。エネルギー変換効率に優れているのは言うまでもないがその存在によってこうしたレイアウトが可能になったとも言える。
PCやレコードなど多彩なソースに対応
また、A-70の大きな特徴とも言えるのがUSB入力を持ち、USB-DAC機能を備えている点だ。ちなみに採用しているDACデバイスはESS社製SABRE32。他にも2系統の同軸デジタル入力やアナログレコードを聴けるMM/MCフォノイコライザーを備える多機能なアンプだ。
PCとUSBケーブルで接続して、その音質をチェックしてみた。透明感の高い、端正なトーンが基調だ。スピーカーのウーファーを動かす駆動力が強く、輪郭のはっきりとした、あえて言えば馬力感のある低音が印象的だ。中高音域に存在感の高い帯域があり、それが音像の輪郭を積極的に描いてくる点もキャラが立っている。以前のパイオニアの、しなやかで透明感のある音から一歩踏み出して、より積極的な音、積極的な音楽表現を獲得しているのだ。訊けば、イギリスの名門「AIR STUDIOS」のサウンドエンジニアたちとパイオニアの設計者によるセッションを実施して、緻密な音質のチューニングも施しているという。
アナログ入力の音もチェックするということで、パイオニアの新しいデジタルプレーヤーPD-70からの音も聴いてみた。CDでもSACDでも音色的な深みやなめらかさを感じさせてくれる。どこか余裕のある感じはPD-70のポテンシャルだろうか。SN感が良く、元のソフトに入っている情報を鮮度感高く聴かせてくれるのだ。大編成のオーケストラでのダイナミックレンジの広さや低域の力感など、PD-70の良さとA-70の総合力、相乗効果を感じた。e-onkyo musicでダウンロードしたDSDデータをDVDに焼いて作ったDSDディスクを再生すると、DSDらしい、空気感のきわめて充実した、しなやかな音の傾向だった。
クラスDアンプと言ってもいろいろな製品が存在するが、この音には可能性を感じる。A-70はソースメディアの多い今の時代に対応し、パイオニアの新世代の音を感じさせる完成度の高い製品とリポートしたい。
(鈴木 裕)