公開日 2015/04/30 14:32
コントラスト比“無限”の新世代4K対応プロジェクター、エプソン「EH-LS10000」レビュー
大橋伸太郎が「強烈なインパクト」を語る
国内プロジェクター市場を牽引するブランドの1つ“エプソン”から、待望の4K対応レーザー光源プロジェクター「EH-LS10000」が登場した(関連ニュース)。1993年に三管式を導入して以来約20年間、プロジェクターの進化を見続けてきた評論家 大橋伸太郎が、改めて“心を鷲掴みにされた”という本機の魅力を語る。
■エプソン EH-LS10000は、インパクトの強烈さという点で屈指の大物
筆者は1993年にCRT三管式を導入して以来のプロジェクターユーザーで、現在使用中の製品で四代目になる。シャープの透過型液晶に始まる固定画素方式の進展もつぶさに見てきた。そうしたキャリアの中で印象に残ったプロジェクターは多々あるが、インパクトの強烈さという点で屈指の大物が新たに現われた。エプソンのLCOS方式=反射型液晶方式による新製品「EH-LS10000」である。
技術の達成度と映像の美しさが高度にバランスを保ち、初めてプロジェクターの傑作が生まれる。エプソンは国内で圧倒的なシェアを持ち、独自の3LCD方式(透過型液晶)で市場を開拓したプロジェクターのリーディングメーカーである。ただ、エントリー〜中間グレードには強いが、それらは筆者のようなCRT三管式ユーザーの心を揺さぶるゾーンの製品ではなかった。しかし今回のEH-LS10000 は、同社の製品の中でも「オーラ」を感じさせる。
■画素ずらしによる4K対応を選択したEH-LS10000
本機の重要ポイントは2つ。第一はLCOS方式で4K解像度を達成したことだ。国内で3社目になる。JVC同様、ネイティブ4Kパネルを採用せず画素ずらしで4,096×2,160相当の解像度で映像を表示する。なお、セイコーエプソンではネイティブ4K LCOSデバイスの試作に成功しており、本機の開発に際して検討と議論が重ねられたものと推察される。
しかし、EH-LS10000は画素ずらしを使った4K表示(4Kエンハンスメントテクノロジー)の道を選んだ。その背景を鑑みるに、エプソンは一貫して国内市場を拡大してきたメーカーだ。4Kに望むスタンスもその延長線上にある。売価100万円を越えるようなプロジェクターを作りたくなかったのだろう。
■LCOS式として初めてレーザー光源を採用したモデル
本機の2つ目のポイントに、LCOS方式として初めて、光源にUHPやキセノン等の電球(放電灯)でなく、電子光源(レーザーダイオード)を使った点が挙げられる。エプソンがずっと手掛けて来た3LCD(透過型液晶)は高輝度が得られやすく生産性に優れる反面、開口率の狭さ故にコントラストでLCOSに劣る。また、カラーフィルターを用いるために色域の広さでも遅れを取っていた。それを挽回するために光学機器メーカーとしての技術を活かし、ディープブラックテクノロジーやシネマフィルターを開発し戦ってきたわけだが、今回LCOSを採用したことでこのビハインドが消えた。むしろ、逆にこれまで培った技術をLCOSに応用することで他社へのアヘッドを生み出すことが出来る。そうしてレーザー光源が採用された。
レーザーダイオードの場合、ランプとは異なり、波長の異なる複数の光源を併用することが可能だ。EH-LS10000が採用した手法は実に周到だ。高画質機専用に光効率の異なる2種のブルーレーザーを専門メーカーに新規に開発させたのだ(IT用途の製品でレーザー光源の製品があるが、効率が悪いのでブルーレーザーを用いない)。
1つは、色再現に最適波長の青の純度が高いブルーレーザーで拡散ホイールを併用してBの光源に使用する。もう1つは、効率に優れた波長を異にするブルーレーザーで蛍光体ホイールを使ってYに変換した後にダイクロイックミラーでRとGに分光し、最終的にBとあわせ込んで映像を構成する。波長を異にした二種の青色レーザーダイオードを使用することで色域は飛躍的に拡大し、DCIやアドビRGB領域をクリアした。広色域を活かして本機のカラーモードは10種に分化した(カラーモードの種類:ダイナミック、リビング、ナチュラル、THX、シネマ、デジタルシネマ、AdobeRGB、3Dダイナミック、3Dシネマ)。
■“コントラスト比無限”の「パーフェクトブラック」
本機のレーザー光源は、輝度信号の入らないフレームを検知すると完全に消灯する。0lm(ルーメンホワイト)、つまり完全な黒の再現が可能になった。エプソンではこれを「パーフェクトブラック」と呼称し、“コントラスト比が無限”とアピールしている。動特性、つまり消灯状態からの復帰も俊敏で、映像の遅れがない。
EH−LS10000の新技術とフィーチャーを挙げて行くと一冊の本になってしまうので止めておくが、どれだけ新技術満載でも、そこから映像美が生み出されなければ意味はない。しかしEH-LS10000 は、映像の力という点でも心を鷲掴みにするパワーがあった。
■エプソン EH-LS10000は、インパクトの強烈さという点で屈指の大物
筆者は1993年にCRT三管式を導入して以来のプロジェクターユーザーで、現在使用中の製品で四代目になる。シャープの透過型液晶に始まる固定画素方式の進展もつぶさに見てきた。そうしたキャリアの中で印象に残ったプロジェクターは多々あるが、インパクトの強烈さという点で屈指の大物が新たに現われた。エプソンのLCOS方式=反射型液晶方式による新製品「EH-LS10000」である。
技術の達成度と映像の美しさが高度にバランスを保ち、初めてプロジェクターの傑作が生まれる。エプソンは国内で圧倒的なシェアを持ち、独自の3LCD方式(透過型液晶)で市場を開拓したプロジェクターのリーディングメーカーである。ただ、エントリー〜中間グレードには強いが、それらは筆者のようなCRT三管式ユーザーの心を揺さぶるゾーンの製品ではなかった。しかし今回のEH-LS10000 は、同社の製品の中でも「オーラ」を感じさせる。
■画素ずらしによる4K対応を選択したEH-LS10000
本機の重要ポイントは2つ。第一はLCOS方式で4K解像度を達成したことだ。国内で3社目になる。JVC同様、ネイティブ4Kパネルを採用せず画素ずらしで4,096×2,160相当の解像度で映像を表示する。なお、セイコーエプソンではネイティブ4K LCOSデバイスの試作に成功しており、本機の開発に際して検討と議論が重ねられたものと推察される。
しかし、EH-LS10000は画素ずらしを使った4K表示(4Kエンハンスメントテクノロジー)の道を選んだ。その背景を鑑みるに、エプソンは一貫して国内市場を拡大してきたメーカーだ。4Kに望むスタンスもその延長線上にある。売価100万円を越えるようなプロジェクターを作りたくなかったのだろう。
■LCOS式として初めてレーザー光源を採用したモデル
本機の2つ目のポイントに、LCOS方式として初めて、光源にUHPやキセノン等の電球(放電灯)でなく、電子光源(レーザーダイオード)を使った点が挙げられる。エプソンがずっと手掛けて来た3LCD(透過型液晶)は高輝度が得られやすく生産性に優れる反面、開口率の狭さ故にコントラストでLCOSに劣る。また、カラーフィルターを用いるために色域の広さでも遅れを取っていた。それを挽回するために光学機器メーカーとしての技術を活かし、ディープブラックテクノロジーやシネマフィルターを開発し戦ってきたわけだが、今回LCOSを採用したことでこのビハインドが消えた。むしろ、逆にこれまで培った技術をLCOSに応用することで他社へのアヘッドを生み出すことが出来る。そうしてレーザー光源が採用された。
レーザーダイオードの場合、ランプとは異なり、波長の異なる複数の光源を併用することが可能だ。EH-LS10000が採用した手法は実に周到だ。高画質機専用に光効率の異なる2種のブルーレーザーを専門メーカーに新規に開発させたのだ(IT用途の製品でレーザー光源の製品があるが、効率が悪いのでブルーレーザーを用いない)。
1つは、色再現に最適波長の青の純度が高いブルーレーザーで拡散ホイールを併用してBの光源に使用する。もう1つは、効率に優れた波長を異にするブルーレーザーで蛍光体ホイールを使ってYに変換した後にダイクロイックミラーでRとGに分光し、最終的にBとあわせ込んで映像を構成する。波長を異にした二種の青色レーザーダイオードを使用することで色域は飛躍的に拡大し、DCIやアドビRGB領域をクリアした。広色域を活かして本機のカラーモードは10種に分化した(カラーモードの種類:ダイナミック、リビング、ナチュラル、THX、シネマ、デジタルシネマ、AdobeRGB、3Dダイナミック、3Dシネマ)。
■“コントラスト比無限”の「パーフェクトブラック」
本機のレーザー光源は、輝度信号の入らないフレームを検知すると完全に消灯する。0lm(ルーメンホワイト)、つまり完全な黒の再現が可能になった。エプソンではこれを「パーフェクトブラック」と呼称し、“コントラスト比が無限”とアピールしている。動特性、つまり消灯状態からの復帰も俊敏で、映像の遅れがない。
EH−LS10000の新技術とフィーチャーを挙げて行くと一冊の本になってしまうので止めておくが、どれだけ新技術満載でも、そこから映像美が生み出されなければ意味はない。しかしEH-LS10000 は、映像の力という点でも心を鷲掴みにするパワーがあった。
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