公開日 2015/10/29 10:34
英国の電源ブランド・アイソテックの独自技術や製品の魅力を井上千岳がレポート
【特別企画】45カ国以上・10万人以上の愛用者を持つ
英国より注目の電源ブランドアイソテックが初上陸
その技術や音質的な魅力をさぐる
オーディオ用のクリーン電源といえば、日本のオーディオファンの方ならば、いくつかのブランドが思い浮かぶはず。このように優れた電源ブランドがひしめき合うオーディオ市場の中で、英国生まれの新ブランド、アイソテックが参入することとなった。日本のオーディオファンにはまだ馴染みが少ないかもしれないが、すでに45カ国以上、10万人以上の愛用者を持つという世界的ブランドである。果たしてどのような衝撃をもたらすのか?
本項では早くも同ブランド製品の実力を高く評価している井上千岳氏を迎え、他の電源ブランドとは一味違う技術やその効果についてじっくりとレポートしていただくことにしよう。
独自回路のデルタフィルターを採用して
ノーマル/コモン、2つのノイズを除去
■アイソテックの技術力
音質を変えることなくノイズだけを除去する
アイソテックは我が国に初めて紹介される、電源コンディショナーを専門としたブランドである。2001年現代表のキース・マーティン氏によって設立され、英国ウィンチェスターに本拠を置く。
電源コンディショナーにはいくつかのタイプがあるが、アイソテックのそれは基本的にパッシブ、つまり電源を使わないフィルタータイプである。これには創立者マーティン氏の経験が働いている。
オーディオファンであったマーティン氏はクリーンな電源を得るために、市販のフィルター類を買って試してみたのだそうだ。ところがどれもこれも音が変わってしまうし、エネルギーが低下する。このため自分自身で理想的なクリーン電源を作らなければならないと考え、同社の設立に至ったというのである。
こうした経緯があるだけに音に対する要求は大変厳しく、使用パーツや構造について入念な選択を行ってきた。その結果完成したのがデルタフィルターと名付けられた独自の回路で、特殊な高性能コアによる低抵抗コイルに様々な高品位コンデンサーを組み合わせ、ディファレンシャルモード(ノーマルモード)およびコモンモード双方のノイズを除去することが可能だという。
1コンセント1フィルターでそれぞれをアイソレートする
また構造上のもうひとつの特徴は、1コンセント1フィルターとしてそれぞれをアイソレートしていることである。従って結線は1点から放射状に分岐させたスター型で、コンセント同士のアイソレートに加えてパーツ間の相互干渉も排除する仕組みとなっている。
■アイソテックの効果
驚くほどの測定結果は聴けば納得せざるを得ない
そのノイズ除去性能は驚くべきもので、測定結果を見ると信じられないほどだが、実際に行ったものだという。盛大なノイズがすっかり消えて、真っ平な直線になっている。本当にこれだけきれいになってしまうものかと思うのだが、音を聴いてみるとなるほどと納得せざるを得ないのである。
このエネルギーの強さ、たくましさが
アイソテック最大の魅力と言っていい
●中核モデル「アクエリアス」
一音一音の彫りが深まりエネルギー感を引き出す
代表的な製品はEVO3 AQUARIUSといって、6口のモデルである。大電流用つまりパワーアンプ用2口と前段用4口に分かれていて、前段用は前述のデルタフィルターを3段通って出力される。しかも最後の1段はコンセントごとに1つずつのフィルターとして、アイソレーションを完璧なものとしている。
最初つないだときには、音色や音調の変化がないため効いているのかどうかわからないかもしれない。一気に繊細になったとか重心が下がったとかメリハリが強くなったとか、そういったことはない。しかし例えばピアノでも、一音一音の彫りが深まりタッチのエネルギーがしっかりしているのがいままでと違う。バロックでも繊細な古楽器のディテールに明快な起伏が付いているのに気がつくのだ。それがつまり改善効果。オーケストラやジャズでは、背景の汚れっぽさや音に絡む濁りがさっぱりと消えて、彫りの深いダイナミズムに富んだ再現が展開される。このエネルギーの強さ、たくましさが、アイソテックの最も大きな特質と言っていい。
●上位モデルの「シグマス」
さらなる静寂とエネルギー微細レベルまでリアルに再現
EVO3 SIGMASはさらに強化されたモデルで、やはり6口を装備する。大電流用2口にも個別のデルタフィルターが搭載され、前段用4口は容量が5Aから10Aに倍加している。持ってみると重さが相当違うので、単に容量を上げたというだけでなく、フィルターの構成自体も複雑・入念になっていると推測される。
音質も強化されているのが明らかで、静かでありながら出てくるエネルギーが大きい。つまり背景ノイズが極めて低減されているということである。静かというのはその結果で、ピアノにしてもホールの空気が手に触れられるような実体感がある。またバロックもいっそう鮮度が高く、ヴァイオリンだけでなくバロック・チェロやリュート、オルガンなどの各楽器がひとつひとつ浮き彫りになったようにくっきりしている。そして強弱の幅がひろく、とりわけ微細なレベルの音が生き生きとしてリアルに聴こえてくる。
ジャズは弾力が違う。確かに生で聴いたときにはこんな感じだったなと思い出させるような軽快な弾みが強く、音色の明るさと立ち上がりの力強さが際立っている。オーケストラも同様だ。このダイナミズムの広大な起伏というものが、電源改善の大きな特色と言えるだろう。また位相がどの帯域でもぴったり揃ってフォーカスが明確なのも、なかなか得られない特質である。
●その他のラインアップ
映像用の小型機やプラグ式も確実なノイズ低減効果を発揮
ところでこれら2機とは別に、MiniMiraというモデルがある。本来は映像用として開発されたそうでコンセントも2口だが、使ってみると意外なほどの効果に驚くはずだ。まず試しにというときに打ってつけで、これほど輪郭がクリアで鮮明になるものかと誰もが思うに違いない。
さらにごく簡単に使えるのがEVO3 ISOPLUGで、空きコンセントに差し込む並列型である。これも確実な効果があって、ノイズが静かに収まるのがわかる。
このほかセッティングCDやバーンインCDなども用意され、ラインアップは幅広い。今後さらに色々な製品が紹介される予定で、久々に海外製の本格的な電源機器が登場した印象だ。期待の大きなブランドである。
本記事は、『オーディオアクセサリー 158号』からの転載です。オーディオアクセサリー誌の詳細はこちら。
その技術や音質的な魅力をさぐる
オーディオ用のクリーン電源といえば、日本のオーディオファンの方ならば、いくつかのブランドが思い浮かぶはず。このように優れた電源ブランドがひしめき合うオーディオ市場の中で、英国生まれの新ブランド、アイソテックが参入することとなった。日本のオーディオファンにはまだ馴染みが少ないかもしれないが、すでに45カ国以上、10万人以上の愛用者を持つという世界的ブランドである。果たしてどのような衝撃をもたらすのか?
本項では早くも同ブランド製品の実力を高く評価している井上千岳氏を迎え、他の電源ブランドとは一味違う技術やその効果についてじっくりとレポートしていただくことにしよう。
独自回路のデルタフィルターを採用して
ノーマル/コモン、2つのノイズを除去
■アイソテックの技術力
音質を変えることなくノイズだけを除去する
アイソテックは我が国に初めて紹介される、電源コンディショナーを専門としたブランドである。2001年現代表のキース・マーティン氏によって設立され、英国ウィンチェスターに本拠を置く。
電源コンディショナーにはいくつかのタイプがあるが、アイソテックのそれは基本的にパッシブ、つまり電源を使わないフィルタータイプである。これには創立者マーティン氏の経験が働いている。
オーディオファンであったマーティン氏はクリーンな電源を得るために、市販のフィルター類を買って試してみたのだそうだ。ところがどれもこれも音が変わってしまうし、エネルギーが低下する。このため自分自身で理想的なクリーン電源を作らなければならないと考え、同社の設立に至ったというのである。
こうした経緯があるだけに音に対する要求は大変厳しく、使用パーツや構造について入念な選択を行ってきた。その結果完成したのがデルタフィルターと名付けられた独自の回路で、特殊な高性能コアによる低抵抗コイルに様々な高品位コンデンサーを組み合わせ、ディファレンシャルモード(ノーマルモード)およびコモンモード双方のノイズを除去することが可能だという。
1コンセント1フィルターでそれぞれをアイソレートする
また構造上のもうひとつの特徴は、1コンセント1フィルターとしてそれぞれをアイソレートしていることである。従って結線は1点から放射状に分岐させたスター型で、コンセント同士のアイソレートに加えてパーツ間の相互干渉も排除する仕組みとなっている。
■アイソテックの効果
驚くほどの測定結果は聴けば納得せざるを得ない
そのノイズ除去性能は驚くべきもので、測定結果を見ると信じられないほどだが、実際に行ったものだという。盛大なノイズがすっかり消えて、真っ平な直線になっている。本当にこれだけきれいになってしまうものかと思うのだが、音を聴いてみるとなるほどと納得せざるを得ないのである。
このエネルギーの強さ、たくましさが
アイソテック最大の魅力と言っていい
●中核モデル「アクエリアス」
一音一音の彫りが深まりエネルギー感を引き出す
代表的な製品はEVO3 AQUARIUSといって、6口のモデルである。大電流用つまりパワーアンプ用2口と前段用4口に分かれていて、前段用は前述のデルタフィルターを3段通って出力される。しかも最後の1段はコンセントごとに1つずつのフィルターとして、アイソレーションを完璧なものとしている。
最初つないだときには、音色や音調の変化がないため効いているのかどうかわからないかもしれない。一気に繊細になったとか重心が下がったとかメリハリが強くなったとか、そういったことはない。しかし例えばピアノでも、一音一音の彫りが深まりタッチのエネルギーがしっかりしているのがいままでと違う。バロックでも繊細な古楽器のディテールに明快な起伏が付いているのに気がつくのだ。それがつまり改善効果。オーケストラやジャズでは、背景の汚れっぽさや音に絡む濁りがさっぱりと消えて、彫りの深いダイナミズムに富んだ再現が展開される。このエネルギーの強さ、たくましさが、アイソテックの最も大きな特質と言っていい。
●上位モデルの「シグマス」
さらなる静寂とエネルギー微細レベルまでリアルに再現
EVO3 SIGMASはさらに強化されたモデルで、やはり6口を装備する。大電流用2口にも個別のデルタフィルターが搭載され、前段用4口は容量が5Aから10Aに倍加している。持ってみると重さが相当違うので、単に容量を上げたというだけでなく、フィルターの構成自体も複雑・入念になっていると推測される。
音質も強化されているのが明らかで、静かでありながら出てくるエネルギーが大きい。つまり背景ノイズが極めて低減されているということである。静かというのはその結果で、ピアノにしてもホールの空気が手に触れられるような実体感がある。またバロックもいっそう鮮度が高く、ヴァイオリンだけでなくバロック・チェロやリュート、オルガンなどの各楽器がひとつひとつ浮き彫りになったようにくっきりしている。そして強弱の幅がひろく、とりわけ微細なレベルの音が生き生きとしてリアルに聴こえてくる。
ジャズは弾力が違う。確かに生で聴いたときにはこんな感じだったなと思い出させるような軽快な弾みが強く、音色の明るさと立ち上がりの力強さが際立っている。オーケストラも同様だ。このダイナミズムの広大な起伏というものが、電源改善の大きな特色と言えるだろう。また位相がどの帯域でもぴったり揃ってフォーカスが明確なのも、なかなか得られない特質である。
●その他のラインアップ
映像用の小型機やプラグ式も確実なノイズ低減効果を発揮
ところでこれら2機とは別に、MiniMiraというモデルがある。本来は映像用として開発されたそうでコンセントも2口だが、使ってみると意外なほどの効果に驚くはずだ。まず試しにというときに打ってつけで、これほど輪郭がクリアで鮮明になるものかと誰もが思うに違いない。
さらにごく簡単に使えるのがEVO3 ISOPLUGで、空きコンセントに差し込む並列型である。これも確実な効果があって、ノイズが静かに収まるのがわかる。
このほかセッティングCDやバーンインCDなども用意され、ラインアップは幅広い。今後さらに色々な製品が紹介される予定で、久々に海外製の本格的な電源機器が登場した印象だ。期待の大きなブランドである。
オーディオに対する熱意が生み出したコンディショナー この度同社のインターナショナル・プロダクト・トレーナーであるビヨン・ヘゲルスタッド氏がオーディオ・アクセサリー誌編集部を訪ねてきた。この機会にアイソテックを起こしたキース・マーティン氏について伺うことにした。 マーティン氏は、もともとインダストリアル・デザイナーであったそうだ 。ただ大学を卒業したのが1990年代の不況の最中だったので就職先がなく、通信販売のレコード会社に勤めながら仕事を探していたという。 その後デザイン会社に入って様々な優良企業の仕事をし、またフリーランスとしても活動していたようだ。 その頃もオーディオに対する熱意は変わらず、電源アイテムに興味を持ちあるコンディショナーを購入したという。ところがその製品は1カ月足らずで故障してしまい、中を開けて不良箇所を発見するとうんざりしたのだそうだ。そこで考えたのは、1年もかければこれよりずっといいコンディショナーが作られるのではないかということ。そこでアイソテックの設立を決意したという。同社の誕生は、キッチンテーブルからだったのである。(井上 千岳) |
本記事は、『オーディオアクセサリー 158号』からの転載です。オーディオアクセサリー誌の詳細はこちら。