• ブランド
    特設サイト
公開日 2017/07/14 14:37

ティエン「TT3」を聴く ー “アナログの達人”が理想を具現化させたアナログプレーヤー

3基のモーターを搭載
石原 俊
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
■「3」という数字に秘められた長年の経験とノウハウ

ティエンオーディオは、台湾のレコードプレーヤー・メーカーである。創業は2002年。日本には今回初上陸となるが、15年ものキャリアを持つことになる。開発者の名はジェフ・ティエン。同氏のアナログへのこだわりは相当なもので、これまで数多くの銘機と呼ばれるハイエンドプレーヤーの販売や修理、調整を行っているうちに、自身のレコードプレーヤーの理想にたどり着いたという。その理想を具現化したのが、TT3だ。

TIEN AUDIO「TT3」¥550,000(税別、トーンアームVIROA付属)※写真はダブルアームセッティング時

TT3の「TT」は「トリプル・ターンテーブル」の略で、全てにおいて「3」という数字にこだわった設計がなされているようだ。プラッターと同サイズのベース部は3本のスパイクで支持されている。スパイクの直上には3基のモーターがマウントされているが、これはモーターの振動を接地面に逃がすという位置によるものだろう。

ティエンオーディオの代表であり、開発者でもあるジェフ・ティエン氏。これまで数々の銘機と呼ばれるハイエンドプレーヤーの販売や調整を経験し、そのノウハウを自身のブランドのプレーヤーに投入する

ではなぜ3基ものモーターを使用するのだろうか。ティエンオーディオによると、モーターは1基でも2基でもダメだそうで、それではサブプラッターの水平方向に対してベルトの力が均等ではなくなってしまい、バランスを崩してしまうためだ。3基のモーターが正三角形状のベルトを駆動し、その正三角形に内接する円であるところのサブプラッターを回転させることでパーフェクトな動作が得られるという。回転制御もCPUで行い、ワウフラッターは驚異的。このベルトもゴムではなくシリコンを採用するなど劣化の少ないものを採用し、長期にわたって安定した回転を実現することに配慮した。

3基のモーターを採用し、プラッターにかかる力を均等に保つ構造としている。また、プーリーに採用されたサスペンションで、ベルトの経年劣化によるワウフラッターの発生も抑制。ベルトドライブとしては、驚異的なワウフラッターを実現したことも特徴だ

メインプラッターはアクリル系の樹脂製である。コントロールは別筐体のコントローラーで行い、33/45回転に加えて78回転にも対応する。

腕木状のアクリル製アームボードは、ターンテーブルのベース部に取りつける。搭載できるトーンアームは最大で3本。ここにも「3」という数字がキーワードとなる。アームベースは他社製用も存在するそうだが、試聴機には自社製のVIROAというヘッドシェル一体型トーンアームの12インチタイプと10インチタイプが搭載されていた。

トーンアームVIROAは、アームパイプにカーボンを採用したほか、アジマス調整機構とアンチスケーティング機構を組み合わせた独自のマグネットダンピングシステムを採用。これはトーンアームは磁場を最良に保つことが必要という観点から採用された構造だ

このVIROAもなかなかのスグレモノだ。ピボット部は下側からスパイクで1点支持されているので、そのままではフラフラなのだが、スタイラスがレコードにコンタクトするとピタリと安定する。面白いのはケーブルの処理で、アームパイプからいったん外に出て、小型のコネクターで出力部に接続する仕組みになっている。だからアームパイプを買い足せばカートリッジを迅速に交換することができる。

出力ケーブルはRCA端子を採用。カウンターウェイトは低い位置に置くことで、ダイナミックバランス型トーンアームの針圧に近い特性を実現することに成功している

■音楽のありのままを描く超高解像度サウンド

そのサウンドは極めて生々しい。切れば血が出るようなサウンドといってもいい。オーディオ的には極めてワイドレンジで、音のヌケが素晴らしく良く、聴感上のSN比が高い。現代機らしく古典的なプレーヤーのような楽曲・演奏への介入が皆無で、音楽のありのままの姿を描く。

ジャズはスピード感が素晴らしい。聴感上の音速が通常のプレーヤーよりもはるかに速く、エネルギー感がリスニングポジションに突き刺さるようなイリュージョンを感じる。音の消えっぷりも良く、本機がスピーカーを支配しているような印象すら受ける。分解能も抜群で、大音量でも音が混濁することは絶対といっていいほどない。

ヴォーカルは解像度がめっぽう高く、清楚で気品のあるハイエンドサウンドなのだが、グラビア美人的なキレイさばかりではなく、匂い立つような色気がある。クラシックは超々高級機なみのクオリティが得られる。複雑なオーケストラでも、どのパートがどのような動きをしているかが「視覚的」に分かるほどだ。

この価格でこれだけの音が出るのは非常にお買い得だ。個人的にも気になるプレーヤーの上陸を喜びたい。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
クローズアップCLOSEUP
アクセスランキング RANKING
1 「オーディオのオンキヨー」復活へ。新スピーカーとセパレートシステムを年明けのCESで発表
2 【完全ワイヤレスイヤホン特集 PART.10】音のプロが選ぶベストバイは?
3 CD再生とファイル再生の架け橋に!Shanlingからリッピング機能付きトランスポート「CR60」が登場
4 今こそ「ミニコンポ」が面白い! デノン/マランツ/B&Wの令和ライフにマッチする厳選5モデルレビュー
5 水月雨、『崩壊:スターレイル』とのコラボ完全ワイヤレス。ダイナミック+環状平面駆動の同軸ドライバー搭載
6 【ミニレビュー】空き電源コンセントに挿入するだけ。オーディオみじんこ「SILVER HARMONIZER AC-ADVANCE」
7 モニターオーディオ「GOLDシリーズ」レビュー。ユニット大幅刷新の第6世代機は「ハイスピードで焦点の明確な音調」
8 AVIOT、『らんま1/2』コラボ完全ワイヤレスイヤホン。完全新録ボイス240種類以上搭載
9 Nothing、スマホ/イヤホンが最大30%オフ価格になるウィンターキャンペーン。先着順で靴下もらえる
10 要注目の新興ブランド、ラトビア「アレタイ」スピーカー試聴レビュー!広大な空間描写力が魅力
12/20 10:05 更新
MAGAZINE
音元出版の雑誌
オーディオアクセサリー193号
季刊・オーディオアクセサリー
最新号
Vol.195
オーディオアクセサリー大全2025~2026
別冊・ケーブル大全
別冊・オーディオアクセサリー大全
最新号
2025~2026
プレミアムヘッドホンガイドマガジン vol.22 2024冬
別冊・プレミアムヘッドホンガイドマガジン
最新号
Vol.22
プレミアムヘッドホンガイド Vol.32 2024 AUTUMN
プレミアムヘッドホンガイド
(フリーマガジン)
最新号
Vol.32(電子版)
VGP受賞製品お買い物ガイド 2025年冬版
VGP受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2025年冬版(電子版)
DGPイメージングアワード2024受賞製品お買い物ガイド(2024年冬版)
DGPイメージングアワード受賞製品お買い物ガイド
(フリーマガジン)
最新号
2024年冬版(電子版)
音元出版の雑誌 電子版 読み放題サービス
「マガジンプレミアム」お試し無料!

雑誌販売に関するお問合せ

WEB
  • PHILE WEB
  • PHILE WEB AUDIO
  • PHILE WEB BUSINESS
  • ホームシアターCHANNEL
  • デジカメCHANNEL
AWARD
  • VGP
  • DGPイメージングアワード
  • DGPモバイルアワード
  • AEX
  • AA AWARD
  • ANALOG GPX