公開日 2022/11/29 06:30
高級XLRケーブルの新しい基準、“NCFプラグ”採用のフルテック最高峰「Lineflux NCF(XLR)」レビュー
【特別企画】AAEX2023グランプリ受賞モデル
特殊素材NCFによる各種アクセサリー製品が大好評を得るフルテック。昨年登場のRCAプラグに続いて、信号系プラグへのNCF採用第二弾となるXLRプラグを採用した、完成品のケーブル「Lineflux NCF(XLR)」がこのほど遂に登場した。このケーブルならではの特徴と魅力を福田雅光氏がレポートする。
フルテックの最高峰XLRケーブル、「Lineflux NCF(XLR)」の作りと音質性能を調べた。この製品は、高級XLRケーブルの新しい基準になる性能であることを実感した。ハイエンド・グレードのXLRケーブルはこうあるべきであるからだ。
まず、XLRケーブルで課題となってきたプラグの設計が素晴らしい。画期的な作りである。オスとメスの両コネクターの接続端子部は、純銅アルファ導体のワンピース構造で、非磁性ロジウムメッキを施して採用。構造的にも、また聴感的にも純度が高く高解像度で、異論のない設計である。
そして、このケーブル価格。一般には高額であるが、ノイトリック製の金メッキプラグを使った高額ケーブルに比較すれば、よくこの価格で収まったと考えていいだろう。したがって今後20万円以上のXLRケーブルは、このグレードを超えなくてはならない。プラグの装着性でも、アキュフェーズやエソテリックの機器で試したが何の問題も発生しない。
それでは、ケーブル導体の構造設計はどのようになっているのだろう。導体構造を見て驚いた。ここには1.3mmφの単線導体が採用されていた。単線導体のインターコネクトケーブルはいくつか例があるが、一般的には0.18mmφ程度の極細導体を集合させた構成が使われる。
その極細素線に分散して流れる信号電流は、導体を振動させ、外部振動も加算していることもあるためか、帯域の細部に何か不満が消えず残念に感じることがあった。そのようなことから、フルテックが単線導体をここで採用した判断には期待するものがあり、同社の開発陣営がそこまで研究していたことも想像を超える。
またその導体が、α(アルファ)OCC銅であることにも注目した。これは、大野篤美教授が発明したO.C.C.製法(加熱鋳型式連続鋳造法)で台湾のメーカーが製造した単結晶高性能導体に、フルテック独自のαプロセスを施した導体だ。PCOCCは古河電工の製造工場設備がなくなり終了したが、OCC導体は台湾のメーカーが世界の高級ケーブルメーカーに供給を続けている。単結晶構造は結晶粒界がなく、電流を妨げる要素がたいへん少ない特徴を持っている。
ケーブル全体の音質にケーブルとプラグが与える影響度は、50%ずつあると考えている。ケーブルを高性能化しても最終的にはプラグが作用して性能を決定し、合成された結果となる。フルテックは革命的なXLRプラグ、「CF-601M NCF(R)」と「CF-602F NCF(R)」を誕生させることで、一気にこの問題にメスを加え、「Lineflux NCF(XLR)」で最適な方法が追求されたことになる。
オス型の「CF-601M NCF(R)」は、純銅素材の中空ピンにロジウムメッキのワンピース構造を、そして中空部には耐熱性NCF液晶ポリマー樹脂を注入した制振構造である。メス型の「CF-602F NCF(R)」も、純銅素材にロジウムメッキのワンピース構造を採用している。
また驚いたことに、導体の接続はハンダ付けに加え、ネジ止め無ハンダも可能にしている。無ハンダであるから、自作ケーブルも容易に作ることが可能だ。
また端子を固定しているボディ部の素材は、ナイロン、グラスファイバー、セラミックパウダー、カーボンパウダーを調合した特殊なNCF素材を採用。剛性、制振、静電気抑制などの性能を強化したものである。これらには圧倒的な高品質仕様を投入、構造も見事な設計である。
金属系の部品は全て超低温処理で物性を改善し、さらに消磁処理を加えて残留する磁気を完全に排除。これらの処理工程を、αプロセス処理と呼んでいる。ハウジング(ケース)は非磁性ステンレスをベースに3層のマルチマテリアルハイブリッド構造を採用。外観構造も美しく豪華である。
単線導体に不安を感じる人もいるのでは。しかし筆者のレファレンスシステムでは高度な音質追求の結果、CDプレーヤーとプリアンプ間はかなり以前から単線ケーブルである。エネルギー密度、解像度の高さ、混濁の少ない繊細な高音特性など疑問はない。
今回のケーブルは、アキュフェーズのプリアンプ「C-2900」とパワーアンプ「P-4500」間に接続して試聴した。広帯域で音の純度を高め、洗練されたサウンドが得られた。これは十分に納得できる性能である。低音がゆるむ、高音がくすむといった欠点は発生してこない。単線導体のメリットと、プラグの性能を感じることができる。
低音の瞬発力と供給されるエネルギーは、重低音での部分であるが、やはり有利であることを理解できる。高解像度で帯域はすっきりと高域へ伸びきり、繊細な倍音成分を美しく表現してくる。空間表現力も澄みきり、声楽の遠近感が綺麗に表現されている。
XLRケーブルにはこれまで、はっきり言って満足できる製品がなかった。ノイトリックのプラグを用いたケーブルでは限界がある。高級ケーブルの世界でそのような製品であることはたいへん不満だ。フルテックが挑戦したこの性能は高く評価する。
最後に。「いいですか、バランス方式を使うことが音質を高めるのではありません。その効果を最大に発揮させるには、XLRケーブルのクオリティが支配しています。したがってケーブルのグレードによっては、RCAケーブルの方が有利ということもあるんです」
【Lineflux NCF(XLR)】〔ケーブル部〕●導体:単芯α(アルファ)OCC導体1.3mm×1●シールド:2層●絶縁/誘電体:高級ポリエチレン●共振減衰材料–シース内のナノセラミック/カーボンパウダーコンパウンド●ケーブル径:約13.0mm〔プラグ部〕●導体部:純銅素材のα(アルファ)-導体、非磁性ロジウムメッキのワンピース構造の導体ピン●ボディ部:特殊な「NCF」反共振減衰素材(ナイロン/グラスファイバーにナノサイズの結晶性セラミックパウダー&カーボンパウダーを調合)を耐熱性NCF液晶ポリマー樹脂と組み合わせ●ハウジング:マルチマテリアルハイブリッドNCFカーボンハウジング(外側のハードクリアコートとその下のハイブリッドNCFシルバーメッキ3kカーボンファイバーの別の層で構成)、 内部は非磁性ステンレスハウジング●導体線結線方式:ネジ止めまたはハンダによる結線●適応最大ケーブル径:10.0mm●適応導体ワイヤーサイズ〔CF-601M NCF(R)〕:撚線→14AWG(2.08 sq.mm)MAX、単芯→12AWG(3.3 sq.mm)MAX、線径→2.1mm MAX●適応導体ワイヤーサイズ〔CF-602F NCF(R)〕:撚線→13AWG(2.62 sq.mm)MAX、単芯→12AWG(3.3 sq.mm)MAX、線径→2.4mm MAX●サイズ/質量:〔CF-601M NCF(R)〕→全長約18.6φ×64.6mm、約46.9g、〔CF-602F NCF(R)〕→全長約18.6φ×70.85mm、約58.2g
(協力:フルテック)
本記事は『ケーブル大全2023〜2024』からの転載です。
この価格で収めたことに驚く、高級XLRケーブルの新基準
フルテックの最高峰XLRケーブル、「Lineflux NCF(XLR)」の作りと音質性能を調べた。この製品は、高級XLRケーブルの新しい基準になる性能であることを実感した。ハイエンド・グレードのXLRケーブルはこうあるべきであるからだ。
まず、XLRケーブルで課題となってきたプラグの設計が素晴らしい。画期的な作りである。オスとメスの両コネクターの接続端子部は、純銅アルファ導体のワンピース構造で、非磁性ロジウムメッキを施して採用。構造的にも、また聴感的にも純度が高く高解像度で、異論のない設計である。
そして、このケーブル価格。一般には高額であるが、ノイトリック製の金メッキプラグを使った高額ケーブルに比較すれば、よくこの価格で収まったと考えていいだろう。したがって今後20万円以上のXLRケーブルは、このグレードを超えなくてはならない。プラグの装着性でも、アキュフェーズやエソテリックの機器で試したが何の問題も発生しない。
単結晶OCC銅による導体を贅沢に単線導体として採用
それでは、ケーブル導体の構造設計はどのようになっているのだろう。導体構造を見て驚いた。ここには1.3mmφの単線導体が採用されていた。単線導体のインターコネクトケーブルはいくつか例があるが、一般的には0.18mmφ程度の極細導体を集合させた構成が使われる。
その極細素線に分散して流れる信号電流は、導体を振動させ、外部振動も加算していることもあるためか、帯域の細部に何か不満が消えず残念に感じることがあった。そのようなことから、フルテックが単線導体をここで採用した判断には期待するものがあり、同社の開発陣営がそこまで研究していたことも想像を超える。
またその導体が、α(アルファ)OCC銅であることにも注目した。これは、大野篤美教授が発明したO.C.C.製法(加熱鋳型式連続鋳造法)で台湾のメーカーが製造した単結晶高性能導体に、フルテック独自のαプロセスを施した導体だ。PCOCCは古河電工の製造工場設備がなくなり終了したが、OCC導体は台湾のメーカーが世界の高級ケーブルメーカーに供給を続けている。単結晶構造は結晶粒界がなく、電流を妨げる要素がたいへん少ない特徴を持っている。
音の半分を決めるプラグは圧倒的な高品質仕様で新開発
ケーブル全体の音質にケーブルとプラグが与える影響度は、50%ずつあると考えている。ケーブルを高性能化しても最終的にはプラグが作用して性能を決定し、合成された結果となる。フルテックは革命的なXLRプラグ、「CF-601M NCF(R)」と「CF-602F NCF(R)」を誕生させることで、一気にこの問題にメスを加え、「Lineflux NCF(XLR)」で最適な方法が追求されたことになる。
オス型の「CF-601M NCF(R)」は、純銅素材の中空ピンにロジウムメッキのワンピース構造を、そして中空部には耐熱性NCF液晶ポリマー樹脂を注入した制振構造である。メス型の「CF-602F NCF(R)」も、純銅素材にロジウムメッキのワンピース構造を採用している。
また驚いたことに、導体の接続はハンダ付けに加え、ネジ止め無ハンダも可能にしている。無ハンダであるから、自作ケーブルも容易に作ることが可能だ。
また端子を固定しているボディ部の素材は、ナイロン、グラスファイバー、セラミックパウダー、カーボンパウダーを調合した特殊なNCF素材を採用。剛性、制振、静電気抑制などの性能を強化したものである。これらには圧倒的な高品質仕様を投入、構造も見事な設計である。
金属系の部品は全て超低温処理で物性を改善し、さらに消磁処理を加えて残留する磁気を完全に排除。これらの処理工程を、αプロセス処理と呼んでいる。ハウジング(ケース)は非磁性ステンレスをベースに3層のマルチマテリアルハイブリッド構造を採用。外観構造も美しく豪華である。
澄みきる空間と豊かな瞬発力、繊細な倍音も美しく表現する
単線導体に不安を感じる人もいるのでは。しかし筆者のレファレンスシステムでは高度な音質追求の結果、CDプレーヤーとプリアンプ間はかなり以前から単線ケーブルである。エネルギー密度、解像度の高さ、混濁の少ない繊細な高音特性など疑問はない。
今回のケーブルは、アキュフェーズのプリアンプ「C-2900」とパワーアンプ「P-4500」間に接続して試聴した。広帯域で音の純度を高め、洗練されたサウンドが得られた。これは十分に納得できる性能である。低音がゆるむ、高音がくすむといった欠点は発生してこない。単線導体のメリットと、プラグの性能を感じることができる。
低音の瞬発力と供給されるエネルギーは、重低音での部分であるが、やはり有利であることを理解できる。高解像度で帯域はすっきりと高域へ伸びきり、繊細な倍音成分を美しく表現してくる。空間表現力も澄みきり、声楽の遠近感が綺麗に表現されている。
XLRケーブルにはこれまで、はっきり言って満足できる製品がなかった。ノイトリックのプラグを用いたケーブルでは限界がある。高級ケーブルの世界でそのような製品であることはたいへん不満だ。フルテックが挑戦したこの性能は高く評価する。
最後に。「いいですか、バランス方式を使うことが音質を高めるのではありません。その効果を最大に発揮させるには、XLRケーブルのクオリティが支配しています。したがってケーブルのグレードによっては、RCAケーブルの方が有利ということもあるんです」
【Lineflux NCF(XLR)】〔ケーブル部〕●導体:単芯α(アルファ)OCC導体1.3mm×1●シールド:2層●絶縁/誘電体:高級ポリエチレン●共振減衰材料–シース内のナノセラミック/カーボンパウダーコンパウンド●ケーブル径:約13.0mm〔プラグ部〕●導体部:純銅素材のα(アルファ)-導体、非磁性ロジウムメッキのワンピース構造の導体ピン●ボディ部:特殊な「NCF」反共振減衰素材(ナイロン/グラスファイバーにナノサイズの結晶性セラミックパウダー&カーボンパウダーを調合)を耐熱性NCF液晶ポリマー樹脂と組み合わせ●ハウジング:マルチマテリアルハイブリッドNCFカーボンハウジング(外側のハードクリアコートとその下のハイブリッドNCFシルバーメッキ3kカーボンファイバーの別の層で構成)、 内部は非磁性ステンレスハウジング●導体線結線方式:ネジ止めまたはハンダによる結線●適応最大ケーブル径:10.0mm●適応導体ワイヤーサイズ〔CF-601M NCF(R)〕:撚線→14AWG(2.08 sq.mm)MAX、単芯→12AWG(3.3 sq.mm)MAX、線径→2.1mm MAX●適応導体ワイヤーサイズ〔CF-602F NCF(R)〕:撚線→13AWG(2.62 sq.mm)MAX、単芯→12AWG(3.3 sq.mm)MAX、線径→2.4mm MAX●サイズ/質量:〔CF-601M NCF(R)〕→全長約18.6φ×64.6mm、約46.9g、〔CF-602F NCF(R)〕→全長約18.6φ×70.85mm、約58.2g
(協力:フルテック)
本記事は『ケーブル大全2023〜2024』からの転載です。