PR 公開日 2023/05/17 06:30
【動画あり】最小構成のGrandiosoで実現するハイエンドの世界。エソテリックの目指す洗練の極地を探る
特別な音楽体験を共有する
Grandiosoシステム構成はモノーラル構成や電源別筐体など複数の筐体で構成されるものが多いが、コンセプトはそのままにシンプルなシステム構成で、ハイエンドにふさわしいオーディオの世界を探求する。近年のエソテリックは、そんな”新しい形”を積極的に展開している。今回紹介するプリアンプ「Grandioso C1X solo」とパワーアンプ「Grandioso S1X」の組み合わせは、そんな同社の最高クラスのサウンドを、シンプルな構成で楽しめるというもの。エソテリックのフラグシップラインだからこそ実現できる新たな挑戦、そのサウンドを山之内 正氏が体験した。
Grandioso(グランディオーソ)は、壮大で威厳のある世界観を呈示したい時に作曲家が楽譜に記す音楽用語だ。この言葉が出てきたら、演奏家は呼吸を整え、心して良い音を出そうと努力する。エソテリックの最上位シリーズがGrandiosoを名乗るのは、特別な音楽体験を聴き手と共有するという意志の表明で、頂点を目指す意気込みの強さをうかがわせる。
極限の高忠実再生を実現する手段として、モノラル設計の徹底や電源部の分離がもたらす効果は絶大だ。エソテリックおなじみのアプローチだが、その結果としてコンポーネントの数が増え、システムの規模がどんどん大きくなるジレンマもある。Grandiosoの最上位機種でシステムを組むと、組み合わせによって8から11筐体構成となり、オーディオラックを銀色の優美なドレープが埋め尽くす。まさに壮観!なのだが、その一方で、シンプルなシステムを望む声も無視できない。
最小構成で頂点をきわめるのもまた洗練の極致だ。もちろんエソテリックはそのことを理解しているので、クオリティを確保しつつサイズを抑えるノウハウを駆使して一体型やステレオ機の開発に取り組み、ディスクプレーヤーのK1やプリメインアンプのF1を完成させた。パワーアンプはステレオ仕様のS1を2015年に導入済みだ。
その流れのなかで唯一プリアンプはC1と後継のC1Xどちらも電源部を独立させた二筐体構成を堅持してきたが、ついに満を持して一体型のC1X soloを完成させ、ステレオパワーアンプの新顔となるS1Xと歩調を合わせて投入した。最上位シリーズならではのクオリティを確保しつつダウンサイジングに挑戦した注目の製品群が出揃ったのだ。
C1X soloとS1XにK1Xを組み合わると三筐体に収まり、ラックの占有スペースはフル構成の半分以下で済む。プリメインアンプのF1はすでに生産が完了しているので、この組み合わせがGrandiosoの最もシンプルなシステムということになる。
C1X soloは、デュアルバランスアンプと完全デュアルモノの回路構成を変更することなく、計5基の電源トランスや電流伝送など、音を左右する基本フィーチャーをC1Xからそのまま受け継いだという。もちろん物理的制約があるので、電源トランスの高さを変更するなど部分的なモディファイは行われているのだが、独自開発のボリューム機構や強靭な出力バッファー回路など、コアとなる装備はすべてカバーしている。
一方、パワーアンプのS1Xは前作のS1とは設計思想を転換し、新たにクラスAアンプを採用することでスペースファクターを一気に向上させる手法を選んだ。Grandiosoの頂点に君臨するM1Xは300W/8Ωの大出力を確保しているが、S1Xの出力は純A級領域でチャンネル当たり50W/8Ω〜100W/4Ωと控えめな数字が並ぶ。前作のS1は150W/8Ωなのでざっと3分の1だが、そこまでの大出力にこだわらず、クラスAアンプならではの緻密で純度の高い音をきわめることにリソースを集中させたのがS1Xなのだ。この方針転換が実際の音にどう影響するのか、興味は尽きない。
K1Xを組み合わせたGrandiosoのミニマムなシステムで再生音を確認する。最初に聴いた金管アンサンブル(アークブラス)は鳴りっぷりの良さに加えて、ステージが三次元で展開する立体的な空間再現力が抜きん出ている。半円形に弧を描いて並ぶ10名の奏者を一人ひとり把握できる正確な音像描写、ベルの向きまで見えるリアルな実在感、そしてアンサンブル全体を包み込む柔らかく広々としたホール空間の存在まで、忠実に引き出してくるのだ。
バルトーク「管弦楽のための協奏曲」最終楽章もステージ最後部まで楽器の配置を正確に再現。この曲では、急速に駆け上るクレッシェンドの頂点で到達する音圧の大きさが想定を大きく上回り、C1X soloとS1Xを電流伝送でつなぐメリットの大きさを確認することができた。エアボリュームが大きいエソテリックの試聴室でB&W「801 D3」をここまで鳴らせることを考えると、一般的なリスニングルームでは出力の数字が控えめという事実を気にする必要はないと思う。
セリア・ネルゴールのヴォーカルはエフェクトを最小に抑えたダイレクトな肉声感を引き出し、パーカッションやバンジョーの鋭いアタックからは、マイクとアンプを通していることを忘れさせるほどのダイレクトな感触が伝わる。生楽器の立ち上がりのエネルギーの大きさはスタジオやホールでしか体験できないと思いがちだが、忠実度の高い再生システムで聴けば、本来の俊敏なアタックがそのまま蘇ることは何度か体験済みだ。C1X soloとS1Xに核にした再生システムは、臨場感と鮮度の高さを引き出す能力がきわめて高いことを実感した。
ペトラ・マゴーニがリュート伴奏で歌うヴォーカルはエモーショナルな表現力の深さが聴きどころで、声の強弱をなめらかなグラデーションで描き出すダイナミックレンジの豊かさが浮かび上がってきた。ささやくような弱音でか細く音が痩せることがなく、最高音部のフォルテも密度を失わずにマゴーニの強靭な喉を思い知らされる。
リュートの発音は一音一音の粒立ちが鮮明で明るく、繊細な高音部のアルペジオがヴォーカルと重なっても動きが混濁することがない。動的な解像度の高いシステムでなければ、ここまで軽やかで引っ掛かりのない発音を引き出すのは難しいだろう。
Grandioso初のターンテーブルとして昨年導入されたT1をつなぎ、レコードも聴いてみた。ケルテス指揮、ウィーン・フィルによるドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」をリリース直前のテスト盤で再生。エソテリックは14年前にこの録音をレコード化して鮮度の高い音を引き出し、絶賛されたことが記憶に残っているが、マスタリング環境が進化したこともあり、今回はそれを上回る高音質が期待できる。
T1とC1X solo、S1Xの組み合わせで聴いた第1楽章は、ピアニシモでハーモニーを重ねる序奏の弦楽器の柔らかい音色が絶品。主部に入ると一転してホルンや木管の力強い響きと弦の鋭いリズムの対比が際立ち、ケルテスの卓越した解釈が冴え渡る。
第3楽章では低弦が彫りの深い音でリズムを刻み、推進力の強さに耳を奪われた。62年前の録音にここまで緻密な音が入っていたのかと驚愕し、静寂の表現も次元が異なる。T1の底力をもらさず引き出すC1X soloとS1Xのポテンシャルの高さも含め、Grandiosoシリーズの進化を実感することができた。同シリーズにフォノイコライザーはまだ登場していないので、今回はE-02を使用した。
◇
C1Xからの変更点が少ないC1X soloについては少しも不安を抱いていなかったのだが、クラスAアンプに変更したS1Xで果たしてGrandiosoならではの壮大なサウンドを再現できるのか、という点については、正直なところ一抹の不安が頭をよぎった。
ところが、聴き始めてからすぐにその不安が杞憂であることがわかり、そのあとは遠慮なく大音量で再生し、音圧や瞬発力の制約を意識することなく、音楽に没入することができた。それどころか普段聴きなれている音源の真価を再認識させるような表現も飛び出してくる。
パーカッションの鮮やかな立ち上がりやヴォーカルの陰影の深さはその好例で、新鮮な感動に浸ることができた。Grandiosoが目指す特別な音楽体験の共有という理想は、新たに加わったスリムなコンポーネント群にも確実に受け継がれている。
(提供:エソテリック)
「特別な音楽体験を聴き手と共有する」 -Grandiosoシリーズに込めた願い
Grandioso(グランディオーソ)は、壮大で威厳のある世界観を呈示したい時に作曲家が楽譜に記す音楽用語だ。この言葉が出てきたら、演奏家は呼吸を整え、心して良い音を出そうと努力する。エソテリックの最上位シリーズがGrandiosoを名乗るのは、特別な音楽体験を聴き手と共有するという意志の表明で、頂点を目指す意気込みの強さをうかがわせる。
極限の高忠実再生を実現する手段として、モノラル設計の徹底や電源部の分離がもたらす効果は絶大だ。エソテリックおなじみのアプローチだが、その結果としてコンポーネントの数が増え、システムの規模がどんどん大きくなるジレンマもある。Grandiosoの最上位機種でシステムを組むと、組み合わせによって8から11筐体構成となり、オーディオラックを銀色の優美なドレープが埋め尽くす。まさに壮観!なのだが、その一方で、シンプルなシステムを望む声も無視できない。
最小構成で頂点をきわめるのもまた洗練の極致だ。もちろんエソテリックはそのことを理解しているので、クオリティを確保しつつサイズを抑えるノウハウを駆使して一体型やステレオ機の開発に取り組み、ディスクプレーヤーのK1やプリメインアンプのF1を完成させた。パワーアンプはステレオ仕様のS1を2015年に導入済みだ。
その流れのなかで唯一プリアンプはC1と後継のC1Xどちらも電源部を独立させた二筐体構成を堅持してきたが、ついに満を持して一体型のC1X soloを完成させ、ステレオパワーアンプの新顔となるS1Xと歩調を合わせて投入した。最上位シリーズならではのクオリティを確保しつつダウンサイジングに挑戦した注目の製品群が出揃ったのだ。
C1X soloとS1XにK1Xを組み合わると三筐体に収まり、ラックの占有スペースはフル構成の半分以下で済む。プリメインアンプのF1はすでに生産が完了しているので、この組み合わせがGrandiosoの最もシンプルなシステムということになる。
C1X soloは、デュアルバランスアンプと完全デュアルモノの回路構成を変更することなく、計5基の電源トランスや電流伝送など、音を左右する基本フィーチャーをC1Xからそのまま受け継いだという。もちろん物理的制約があるので、電源トランスの高さを変更するなど部分的なモディファイは行われているのだが、独自開発のボリューム機構や強靭な出力バッファー回路など、コアとなる装備はすべてカバーしている。
一方、パワーアンプのS1Xは前作のS1とは設計思想を転換し、新たにクラスAアンプを採用することでスペースファクターを一気に向上させる手法を選んだ。Grandiosoの頂点に君臨するM1Xは300W/8Ωの大出力を確保しているが、S1Xの出力は純A級領域でチャンネル当たり50W/8Ω〜100W/4Ωと控えめな数字が並ぶ。前作のS1は150W/8Ωなのでざっと3分の1だが、そこまでの大出力にこだわらず、クラスAアンプならではの緻密で純度の高い音をきわめることにリソースを集中させたのがS1Xなのだ。この方針転換が実際の音にどう影響するのか、興味は尽きない。
抜きん出た立体的空間再現力で、ホール空間の存在を忠実に引き出す
K1Xを組み合わせたGrandiosoのミニマムなシステムで再生音を確認する。最初に聴いた金管アンサンブル(アークブラス)は鳴りっぷりの良さに加えて、ステージが三次元で展開する立体的な空間再現力が抜きん出ている。半円形に弧を描いて並ぶ10名の奏者を一人ひとり把握できる正確な音像描写、ベルの向きまで見えるリアルな実在感、そしてアンサンブル全体を包み込む柔らかく広々としたホール空間の存在まで、忠実に引き出してくるのだ。
バルトーク「管弦楽のための協奏曲」最終楽章もステージ最後部まで楽器の配置を正確に再現。この曲では、急速に駆け上るクレッシェンドの頂点で到達する音圧の大きさが想定を大きく上回り、C1X soloとS1Xを電流伝送でつなぐメリットの大きさを確認することができた。エアボリュームが大きいエソテリックの試聴室でB&W「801 D3」をここまで鳴らせることを考えると、一般的なリスニングルームでは出力の数字が控えめという事実を気にする必要はないと思う。
セリア・ネルゴールのヴォーカルはエフェクトを最小に抑えたダイレクトな肉声感を引き出し、パーカッションやバンジョーの鋭いアタックからは、マイクとアンプを通していることを忘れさせるほどのダイレクトな感触が伝わる。生楽器の立ち上がりのエネルギーの大きさはスタジオやホールでしか体験できないと思いがちだが、忠実度の高い再生システムで聴けば、本来の俊敏なアタックがそのまま蘇ることは何度か体験済みだ。C1X soloとS1Xに核にした再生システムは、臨場感と鮮度の高さを引き出す能力がきわめて高いことを実感した。
ペトラ・マゴーニがリュート伴奏で歌うヴォーカルはエモーショナルな表現力の深さが聴きどころで、声の強弱をなめらかなグラデーションで描き出すダイナミックレンジの豊かさが浮かび上がってきた。ささやくような弱音でか細く音が痩せることがなく、最高音部のフォルテも密度を失わずにマゴーニの強靭な喉を思い知らされる。
リュートの発音は一音一音の粒立ちが鮮明で明るく、繊細な高音部のアルペジオがヴォーカルと重なっても動きが混濁することがない。動的な解像度の高いシステムでなければ、ここまで軽やかで引っ掛かりのない発音を引き出すのは難しいだろう。
Grandioso T1でレコードも体験。ケルテスの卓越した解釈が冴え渡る
Grandioso初のターンテーブルとして昨年導入されたT1をつなぎ、レコードも聴いてみた。ケルテス指揮、ウィーン・フィルによるドヴォルザーク交響曲第9番「新世界より」をリリース直前のテスト盤で再生。エソテリックは14年前にこの録音をレコード化して鮮度の高い音を引き出し、絶賛されたことが記憶に残っているが、マスタリング環境が進化したこともあり、今回はそれを上回る高音質が期待できる。
T1とC1X solo、S1Xの組み合わせで聴いた第1楽章は、ピアニシモでハーモニーを重ねる序奏の弦楽器の柔らかい音色が絶品。主部に入ると一転してホルンや木管の力強い響きと弦の鋭いリズムの対比が際立ち、ケルテスの卓越した解釈が冴え渡る。
第3楽章では低弦が彫りの深い音でリズムを刻み、推進力の強さに耳を奪われた。62年前の録音にここまで緻密な音が入っていたのかと驚愕し、静寂の表現も次元が異なる。T1の底力をもらさず引き出すC1X soloとS1Xのポテンシャルの高さも含め、Grandiosoシリーズの進化を実感することができた。同シリーズにフォノイコライザーはまだ登場していないので、今回はE-02を使用した。
C1Xからの変更点が少ないC1X soloについては少しも不安を抱いていなかったのだが、クラスAアンプに変更したS1Xで果たしてGrandiosoならではの壮大なサウンドを再現できるのか、という点については、正直なところ一抹の不安が頭をよぎった。
ところが、聴き始めてからすぐにその不安が杞憂であることがわかり、そのあとは遠慮なく大音量で再生し、音圧や瞬発力の制約を意識することなく、音楽に没入することができた。それどころか普段聴きなれている音源の真価を再認識させるような表現も飛び出してくる。
パーカッションの鮮やかな立ち上がりやヴォーカルの陰影の深さはその好例で、新鮮な感動に浸ることができた。Grandiosoが目指す特別な音楽体験の共有という理想は、新たに加わったスリムなコンポーネント群にも確実に受け継がれている。
(提供:エソテリック)