旗艦プリ/ステレオ・パワーアンプを聴く
音の向こうにある“音楽”が見える。エソテリック「Grandioso C1/S1」レビュー
エソテリックのフラグシップ「Grandioso」にラインナップされたプリアンプ「C1」と、ステレオ・パワーアンプ「S1」をレビュー。エソテリックの技術の粋を集め、妥協なき物量を投入して実現したサウンドを山之内正氏が検証していく。
■2モデルの特徴とポジショニング
Grandiosoの導入により、ノウハウを生かし続々と製品を開発
「Grandioso」の導入後、エソテリックの旺盛な開発意欲がいっそう加速しているように感じているのは筆者だけではないだろう。特に、2014年秋に「C1」を投入してシステムが完結して以降、ディスクプレーヤー、プリアンプ、パワーアンプの大半をリファインするという展開は予想していなかった。その勢いは目を見張るものがあるが、単に勢いだけで開発を進めているわけでは、もちろんない。超弩級フラッグシップの開発で得たノウハウを生かすことで、既存技術のブラッシュアップを図り、性能をアップグレードすることを狙っているのだと想像できる。
新製品の進化を確認するためにもフラッグシップをじっくり試聴する
最近発売されたどの製品からもその成果を聴き取ることができるが、ラインアップされたモデルの進化を目の当たりにしていたら、オリジナルのGrandiosoを改めて聴いてみたくなった。系譜の源流をたどることでなにが見えてくるのか、興味は尽きない。
今回はGrandiosoの核となるセパレートアンプに焦点を合わせ、コントロールアンプ「C1」とステレオパワーアンプ「S1」の組み合わせを聴くことにした。アンプを入り口にしてGrandiosoの世界を体験する場合、C1とS1の組み合わせは「M1」よりも身近な存在で、より現実味がある。また、C1は2014年9月、S1は今年の3月にそれぞれ発売され、シリーズのなかでは一番新しいという理由もある。どちらの製品もすでに本誌で紹介済みなので詳細は省略し、すぐに試聴を始めることにしよう。
■2モデルを組み合わせ試聴
モノブロック構成の徹底により、微小レベルの情報が正確に再現
Grandiosoに貫かれている設計思想の根幹にモノブロック構成の徹底がある。左右チャンネル間の干渉を電源回路から出力回路まで徹底することによって、究極のセパレーションを確保することを狙うアプローチは、C1とS1も例外ではない。ステレオ再生の可能性を突き詰める上で、セパレーションの確保はどうしても避けて通ることのできないテーマの一つなのだ。
セパレーションの改善がもたらす効用として、各楽器が鮮明に分離し、ディテールが浮かび上がるなどの効果が真っ先に思い浮かぶが、それ以上に重要なのが、余韻など微小レベルの空間情報が正確に再現されるようになることだ。
音源に含まれている微妙な余韻や音色の変化が曖昧になってしまうと、ステージの遠近感を引き出し、ホール空間の広がりを忠実に再現することが難しくなる。もちろんS/Nを高い次元で確保した上での話だが、ステレオ録音に含まれる位相情報を左右のチャンネルから正確に引き出すことはハイファイ再生の基本と言っていい。
マーラーでは低い音域での動きや気配を確実に聴き取ることができる
デヴィッド・ジンマン指揮チューリヒ・トーンハレ管の演奏でマーラーの交響曲第3番を聴く。このチクルスに共通する美点の一つが、演奏されているホール空間の広がりを3次元で正確に捉え、作曲家が意図した音響的なイメージを忠実に再現していることだ。広大なパースペクティブをまずは演奏で精密に再現し、精度の高い録音で極限まで立体感を引き出す。第3番の録音は、その共同作業が理想的な関係で成立している例の一つで、各楽器の間を高密度に埋める空気の存在や、オーケストラと声楽の立体的な関係を、ホールでの体験さながらにリアルに聴き取ることができる。C1とS1に限らず、Grandiosoのシステム全体に共通する特徴として、演奏空間の絶対的な大きさと見通しの良さがあげられるのだが、このジンマンのマーラーを聴けば、そのことがよく分かるはずだ。
マーラーは低音の音圧と深い響きにこだわった作曲家としても知られるが、この第3番でも5弦のコントラバスが演奏する最低音域が重要な役割を果たしている。C1とS1の組み合わせで聴くと、実音と言うより空気の揺らぎと表現した方が適切と思えるような低い音域での動きや気配を確実に聴き取ることができ、この演奏がたたえる凄みがリアルに伝わってくる。
■2モデルの特徴とポジショニング
Grandiosoの導入により、ノウハウを生かし続々と製品を開発
「Grandioso」の導入後、エソテリックの旺盛な開発意欲がいっそう加速しているように感じているのは筆者だけではないだろう。特に、2014年秋に「C1」を投入してシステムが完結して以降、ディスクプレーヤー、プリアンプ、パワーアンプの大半をリファインするという展開は予想していなかった。その勢いは目を見張るものがあるが、単に勢いだけで開発を進めているわけでは、もちろんない。超弩級フラッグシップの開発で得たノウハウを生かすことで、既存技術のブラッシュアップを図り、性能をアップグレードすることを狙っているのだと想像できる。
新製品の進化を確認するためにもフラッグシップをじっくり試聴する
最近発売されたどの製品からもその成果を聴き取ることができるが、ラインアップされたモデルの進化を目の当たりにしていたら、オリジナルのGrandiosoを改めて聴いてみたくなった。系譜の源流をたどることでなにが見えてくるのか、興味は尽きない。
今回はGrandiosoの核となるセパレートアンプに焦点を合わせ、コントロールアンプ「C1」とステレオパワーアンプ「S1」の組み合わせを聴くことにした。アンプを入り口にしてGrandiosoの世界を体験する場合、C1とS1の組み合わせは「M1」よりも身近な存在で、より現実味がある。また、C1は2014年9月、S1は今年の3月にそれぞれ発売され、シリーズのなかでは一番新しいという理由もある。どちらの製品もすでに本誌で紹介済みなので詳細は省略し、すぐに試聴を始めることにしよう。
■2モデルを組み合わせ試聴
モノブロック構成の徹底により、微小レベルの情報が正確に再現
Grandiosoに貫かれている設計思想の根幹にモノブロック構成の徹底がある。左右チャンネル間の干渉を電源回路から出力回路まで徹底することによって、究極のセパレーションを確保することを狙うアプローチは、C1とS1も例外ではない。ステレオ再生の可能性を突き詰める上で、セパレーションの確保はどうしても避けて通ることのできないテーマの一つなのだ。
セパレーションの改善がもたらす効用として、各楽器が鮮明に分離し、ディテールが浮かび上がるなどの効果が真っ先に思い浮かぶが、それ以上に重要なのが、余韻など微小レベルの空間情報が正確に再現されるようになることだ。
音源に含まれている微妙な余韻や音色の変化が曖昧になってしまうと、ステージの遠近感を引き出し、ホール空間の広がりを忠実に再現することが難しくなる。もちろんS/Nを高い次元で確保した上での話だが、ステレオ録音に含まれる位相情報を左右のチャンネルから正確に引き出すことはハイファイ再生の基本と言っていい。
マーラーでは低い音域での動きや気配を確実に聴き取ることができる
デヴィッド・ジンマン指揮チューリヒ・トーンハレ管の演奏でマーラーの交響曲第3番を聴く。このチクルスに共通する美点の一つが、演奏されているホール空間の広がりを3次元で正確に捉え、作曲家が意図した音響的なイメージを忠実に再現していることだ。広大なパースペクティブをまずは演奏で精密に再現し、精度の高い録音で極限まで立体感を引き出す。第3番の録音は、その共同作業が理想的な関係で成立している例の一つで、各楽器の間を高密度に埋める空気の存在や、オーケストラと声楽の立体的な関係を、ホールでの体験さながらにリアルに聴き取ることができる。C1とS1に限らず、Grandiosoのシステム全体に共通する特徴として、演奏空間の絶対的な大きさと見通しの良さがあげられるのだが、このジンマンのマーラーを聴けば、そのことがよく分かるはずだ。
マーラーは低音の音圧と深い響きにこだわった作曲家としても知られるが、この第3番でも5弦のコントラバスが演奏する最低音域が重要な役割を果たしている。C1とS1の組み合わせで聴くと、実音と言うより空気の揺らぎと表現した方が適切と思えるような低い音域での動きや気配を確実に聴き取ることができ、この演奏がたたえる凄みがリアルに伝わってくる。