【特別企画】オーディオ銘機賞2022 特別大賞受賞
デジタル新時代に向けた、プリアンプの新提案。多様な再生スタイルを実現するエソテリック「N-05XD」
エソテリック新時代のピュアオーディオ再生の核となるネットワークDACプリアンプ「N-05XD」が大きな話題を集めている。その実力は本年度の「オーディオ銘機賞」で“特別大賞”を受賞していることからもわかる。ジャンルを超越したオーディオ新時代の司令塔。その魅力を評論家の山之内正氏がレポートする。
■デジタルメディア時代に向けた、プリアンプの新提案
エソテリックの「N-05XD」がオーディオ銘機賞2022で特別大賞を受賞した。「同社のネットワークプレーヤーの最新機種がディスクリート設計のMaster Sound Discrete DACをついに搭載」という話題性も当然ながら重要な理由の一つだが、それにも増して高く評価されたのが的確でタイムリーな製品コンセプトである。どういうことか。
現代の音楽ファンが毎日楽しむ音楽メディアは以前よりも種類が増えている。高音質メディアだけに絞ってもCD、SACD、LPレコードなど複数の物理メディアとダウンロード購入したファイル音源から自由に選べるし、一部のストリーミングサービスではロスレス・ハイレゾ音源が聴けるようになった。今後、多様化と高音質化の動きはさらに加速し、メディア選びと再生スタイルの選択肢はいま以上に増える可能性がある。
スタイルの多様化は以前から指摘されていた。実際に、ネットワークオーディオは完全に市民権を得て、幅広く浸透した。そんななか、一方ではいまだにオーディオ機器の機能や構成が環境の変化に対応しきれていない面も否定できない。デジタルでつなぎたい機器はたくさんあるのに、それを受け入れるコンポーネントはまだ足りないし、接続や設定が複雑すぎて諦めてしまう人も少なくない。
音にこだわる音楽ファンがいま求めているのは、シンプルな使い勝手と最高水準の音質が両立したコンポーネントなのだ。「N-05XD」のカタログには「ネットワークDAC/プリ」とカテゴリー名が控えめに表記されているが、その最後、つまり「プリ」の部分に実は重要な意味がある。ネットワークプレーヤー、DAC、プリアンプという3つの機能を一体化したと読み取るのが普通だが、デジタルメディア時代に向けたプリアンプの新提案ととらえることもできる。デジタル入力付きのプリメインアンプは次第に増えてきたし、海外ブランドはそこにネットオーディオ機能を追加した製品を多数発売している。
今回、国内有数のブランドであるエソテリックがハイエンドクラスでそのコンセプトを具現化したことに重要な意味がある。価格帯は違うが、海外モデルでは2021年春にリンが発売した「KLIMAX DSM」のコンセプトと通じる部分がある。ネットワークプレーヤーをベースに多機能なプリアンプ機能を組み合わせ、自社開発のディスクリートDACを投入したことも共通する。
再生システム全体を視野に入れると、プレーヤーとプリアンプを一体化することで機器の構成に変化が生まれる可能性がある。システムのなかで相対的にパワーアンプの役割が強まり、スピーカーとの組み合わせを考慮した新たな選択肢が浮上するのだ。プレーヤー、プリメインアンプ、スピーカーという従来の機器構成に加えて、ネットワークオーディオを包含したコントロールアンプ、パワーアンプ、スピーカーという新たな組み合わせが今後は徐々に増えていく予感がする。「N-05XD」はその変化を先取りする役割を担っているのだ。
■ストリーミングやファイル再生を高度な使い勝手と音質で実現する
製品の概要についてはすでに何度か紹介されているので詳しく触れる必要はないだろう。本機のコンセプトに最適化した新世代のMaster Sound Discrete DACをコアに高品位なネットワーク再生を実現し、オーディオ用のサーバーや外付けHDDなどのローカル音源、そしてストリーミングに代表されるネット音源を最高水準の音質で再生することがまずは基本だ。
MQA、Roon Readyなど重要なフォーマットとサービスを網羅し、パソコンで音源を再生したい場合はUSB入力でネットワーク再生と同等の幅広いファイル音源に対応する。再生アプリ「ESOTERIC Sound Stream」は一覧性とレスポンスどちらも最強レベルで、特に表示領域の広いタブレットでの使い勝手の良さが際立つ。
ディスクプレーヤーを追加する場合はアナログ入力とデジタル入力の両方に対応するが、前者の場合はAD変換を行わずに「N-05XD」のプリアンプ回路にそのまま信号が入る、4回路を組み合わせたボリューム回路「QVCS」はアナログ領域で動作するので、そのクオリティと操作感は既存の高品位なアナログプリアンプと変わらない。
■鮮明なディテール描写と広大なダイナミックレンジが最大の美点
「N-05XD」の再生音は鮮明なディテール描写と広大なダイナミックレンジが最大の美点で、サーバーに保存したハイレゾ音源はもちろんのこと、ストリーミングのロスレス・ハイレゾ再生でも質感の高さでも別格というべき質感の高さを実感できる。特に本機のプリ出力をハイエンド級のパワーアンプに直結してスピーカーを鳴らしたときの混濁のない広大な空間表現は注目に値する。
ローエンドまで音色の変化を把握できる透明感があり、楽器イメージの立体感や余韻の質感の高さも確実に引き出してくる。オーケストラのトゥッティが飽和せず、強靭な瞬発力を発揮するのは出力バッファー回路「HCLD」の効用だろう。常用のモニターヘッドホンをバランス接続で聴いたときの3次元の音場再現にも明確なアドバンテージを聴き取ることができた。
ネットワークコンポーネントとしてはラインアップのエントリーに相当する製品だが、次世代オーディオを見据えたコンセプトは本機ならではものだ。エソテリックの設計思想を妥協なく投入し、時間をかけて音を追い込むことで、そのコンセプトに説得力を与えている点も見逃すことができない。本機の登場をきっかけにして、ハイエンドクラスでもアンプの構成に新たな変化が生まれることを期待したい。
■デジタルメディア時代に向けた、プリアンプの新提案
エソテリックの「N-05XD」がオーディオ銘機賞2022で特別大賞を受賞した。「同社のネットワークプレーヤーの最新機種がディスクリート設計のMaster Sound Discrete DACをついに搭載」という話題性も当然ながら重要な理由の一つだが、それにも増して高く評価されたのが的確でタイムリーな製品コンセプトである。どういうことか。
現代の音楽ファンが毎日楽しむ音楽メディアは以前よりも種類が増えている。高音質メディアだけに絞ってもCD、SACD、LPレコードなど複数の物理メディアとダウンロード購入したファイル音源から自由に選べるし、一部のストリーミングサービスではロスレス・ハイレゾ音源が聴けるようになった。今後、多様化と高音質化の動きはさらに加速し、メディア選びと再生スタイルの選択肢はいま以上に増える可能性がある。
スタイルの多様化は以前から指摘されていた。実際に、ネットワークオーディオは完全に市民権を得て、幅広く浸透した。そんななか、一方ではいまだにオーディオ機器の機能や構成が環境の変化に対応しきれていない面も否定できない。デジタルでつなぎたい機器はたくさんあるのに、それを受け入れるコンポーネントはまだ足りないし、接続や設定が複雑すぎて諦めてしまう人も少なくない。
音にこだわる音楽ファンがいま求めているのは、シンプルな使い勝手と最高水準の音質が両立したコンポーネントなのだ。「N-05XD」のカタログには「ネットワークDAC/プリ」とカテゴリー名が控えめに表記されているが、その最後、つまり「プリ」の部分に実は重要な意味がある。ネットワークプレーヤー、DAC、プリアンプという3つの機能を一体化したと読み取るのが普通だが、デジタルメディア時代に向けたプリアンプの新提案ととらえることもできる。デジタル入力付きのプリメインアンプは次第に増えてきたし、海外ブランドはそこにネットオーディオ機能を追加した製品を多数発売している。
今回、国内有数のブランドであるエソテリックがハイエンドクラスでそのコンセプトを具現化したことに重要な意味がある。価格帯は違うが、海外モデルでは2021年春にリンが発売した「KLIMAX DSM」のコンセプトと通じる部分がある。ネットワークプレーヤーをベースに多機能なプリアンプ機能を組み合わせ、自社開発のディスクリートDACを投入したことも共通する。
再生システム全体を視野に入れると、プレーヤーとプリアンプを一体化することで機器の構成に変化が生まれる可能性がある。システムのなかで相対的にパワーアンプの役割が強まり、スピーカーとの組み合わせを考慮した新たな選択肢が浮上するのだ。プレーヤー、プリメインアンプ、スピーカーという従来の機器構成に加えて、ネットワークオーディオを包含したコントロールアンプ、パワーアンプ、スピーカーという新たな組み合わせが今後は徐々に増えていく予感がする。「N-05XD」はその変化を先取りする役割を担っているのだ。
■ストリーミングやファイル再生を高度な使い勝手と音質で実現する
製品の概要についてはすでに何度か紹介されているので詳しく触れる必要はないだろう。本機のコンセプトに最適化した新世代のMaster Sound Discrete DACをコアに高品位なネットワーク再生を実現し、オーディオ用のサーバーや外付けHDDなどのローカル音源、そしてストリーミングに代表されるネット音源を最高水準の音質で再生することがまずは基本だ。
MQA、Roon Readyなど重要なフォーマットとサービスを網羅し、パソコンで音源を再生したい場合はUSB入力でネットワーク再生と同等の幅広いファイル音源に対応する。再生アプリ「ESOTERIC Sound Stream」は一覧性とレスポンスどちらも最強レベルで、特に表示領域の広いタブレットでの使い勝手の良さが際立つ。
ディスクプレーヤーを追加する場合はアナログ入力とデジタル入力の両方に対応するが、前者の場合はAD変換を行わずに「N-05XD」のプリアンプ回路にそのまま信号が入る、4回路を組み合わせたボリューム回路「QVCS」はアナログ領域で動作するので、そのクオリティと操作感は既存の高品位なアナログプリアンプと変わらない。
■鮮明なディテール描写と広大なダイナミックレンジが最大の美点
「N-05XD」の再生音は鮮明なディテール描写と広大なダイナミックレンジが最大の美点で、サーバーに保存したハイレゾ音源はもちろんのこと、ストリーミングのロスレス・ハイレゾ再生でも質感の高さでも別格というべき質感の高さを実感できる。特に本機のプリ出力をハイエンド級のパワーアンプに直結してスピーカーを鳴らしたときの混濁のない広大な空間表現は注目に値する。
ローエンドまで音色の変化を把握できる透明感があり、楽器イメージの立体感や余韻の質感の高さも確実に引き出してくる。オーケストラのトゥッティが飽和せず、強靭な瞬発力を発揮するのは出力バッファー回路「HCLD」の効用だろう。常用のモニターヘッドホンをバランス接続で聴いたときの3次元の音場再現にも明確なアドバンテージを聴き取ることができた。
ネットワークコンポーネントとしてはラインアップのエントリーに相当する製品だが、次世代オーディオを見据えたコンセプトは本機ならではものだ。エソテリックの設計思想を妥協なく投入し、時間をかけて音を追い込むことで、そのコンセプトに説得力を与えている点も見逃すことができない。本機の登場をきっかけにして、ハイエンドクラスでもアンプの構成に新たな変化が生まれることを期待したい。
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